見事に埋もれてます。ハイテクノロジーを持った現人類がほぼ滅んでから数百年後、 過去の遺産を食いつぶすだけの大衆社会(オルテガ『大衆の反逆』なんかを読んでると更に 身に迫って受け取れるかと。)においてレフという超能力を有する選民が台頭し始める。 終末系+SFなんですが、その魅力的な設定・場だけじゃなく、あくまで人間の、人間としての 感情の揺れ動きをメインに据えており、このリアリティが作品全体に血肉をもたせています。 ただ、惜しむらくは余韻の弱さか。しかるべき落とし所に着地してはいるんだが、演出面が 及第点に留まっているのが勿体無い。「なぜ、人は人を殺した時に笑うんだろう。」
音声は9割5分強聞いた時間。「クリック後もボイス継続」なし。
・一週目(7時間18分)(End1)
0:58/1章(友紀・眞の両主人公を合わせた時間。大体半々です。以下同様。)
2:03/2章
1:30/3章
1:42/4章
0:44/5章
0:24/エピローグ
・二週目~五週目(End2~5、攻略ヒント(5個)が出揃うまで)
1:48
・True End
0:43
・おまけシナリオ(3つ。旧世界の話、メタネタ、某キャラの前日談)
0:37
計10:29
エロシーン数:15(陵辱9)
CG数(差分含む):84枚
BGM数(OP,ED含む。歌なし):17曲
<システムその他> ※03年の作品です
主人公は二人。友紀視点→眞視点を順々に
全画面表示
背景は写真加工
立ち絵は顔から胴体までのアップ。変化は少々
男性ボイスなし
パラメータあり(レフへの親和度、つまり凶暴性の程度)。基本は選択肢で増減
既読スキップはあるが、ほぼ一本道+選択肢がそれなりにあるので周回はしにくい
※ほぼ一本道ってのはこんな感じです。イメージ図
ーーーーー ―ーー
| |
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーTrue
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ーーー ーー
<お話> ※ネタバレ小~中
概略は一言に書いたので省略。というかげっちゅ屋見てもらえれば。
何と言っても見どころは感情の機微が丁寧に描かれていること。
確かに一部「エロゲーとして必須のエロ」に縛られていたり、(フェラまでで留めるか
などの)選択肢がある割にその後の文章に変化がなくて齟齬が生じていたりもする。
が、総じて適切なバックボーンとその場の状況、キャラの性格に合わせたリアリティある
感情を表出させるので、非常に納得がいき、且つ作品全体の暴力性というスパイスが
物語へぐいぐい引き込んでいく。
特に1章は圧巻。(友紀は彼女の殻だけを見ていた訳じゃないと信じてますし。)
>学校の日常‥‥‥平和な世界‥‥‥そんなものは力の前ではまやかしに過ぎないんだ。
>いつだって破壊できてしまう、もろい偽りの殻でしかないんだ
平静な日常という「殻」を剥がし、(極限状態とまでは言えなくとも)殻に覆い被された
影に触れさせることで人間の「表面的な感情」を剥がし、動物的本能をむき出しにさせる。
レフ――単なる勘の鋭さや物を動かすことから人を飛ばし弾けさせることまで――という
能力(天性の資質+成長)をもつ自分、もつ他人に直面したとき、人は――。
このレフor人との関係、向きあうのか拒絶するのか受け入れるのか‥‥が本作のメイン
テーマのひとつであり、どこまでも人間の物語なんだなぁと感じ入るんじゃないでしょうか。
また、レフやビジラウムといった世界観・用語についても追々ちゃんと解説されてます。
ご都合主義的と言える部分がないわけではないんですけど。
でもカチッとしすぎてるよりは幅があり、不確定なところは人間性の表れとも捉えうるかと
思います。
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以下、ネタバレ感想です。
まだよく消化しきれてないですけど(汗
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>なぜ、人は人を殺した時に笑うんだろう。
>相澤も‥‥‥、俺も‥‥‥、加賀美も‥‥‥。
>あれは、後悔でも諦めでもない。本当に可笑しかった。
>‥‥‥なにか、ずっと閉じ込めていたものを解放したような清々しい笑いだ。
レフという能力の発現及び成長が「他人の想念に身を晒すこと」ってのは深い。
地球を死滅させる前に(水爆・原爆等で物理的に破壊が可能になる)文明をリセットする
ための因子であるレフ。
技術の進歩を遅らせることはできても止めることができない、というのもあるけれど、
あくまで人間に内在し彼/彼女の選択にかかる装置。
単に引きこもりでもいいけど、よくSFである昏睡・凍結による「個の世界」においても
この装置は発動しえない。
虚無的で錆びたレールに乗ってる(つもりな)だけの感情では足らず、理性を剥がした
もっと本源的な感情に触れること。
それでいて「万人の万人に対する闘争」状態に陥らせたい訳じゃなく、よりポジティブに
人と人が向き合える世界への試練としての一幕。
だからこそTrueに行くには眞のパラメータをかなり上げる必要があるんでしょう。
(友紀は上がらないように選択肢を選んでいっても最終的に80以上になる)
(また、眞のパラメータは0にすることが可能)
レフのメインは暴力性の表出だが、本質は殻を破ること。
そしてほとんどの暴力は他人に向けられる、ひとつのコミュニケーションであること。
その上で、暴力に支配されない、より平和的な道を選ぶこと。
理想に向かう物語って良いじゃないですか。
>「ああ‥‥‥。どいつもこいつも、ひどく刹那的だ。その場の事しか考えられないみたい
にな。自分達で未来を作ろうという気力のない世界だ。向上心もない」
>「それだけじゃありません‥‥‥。因果というものを考えないんですよ。だから、醜い
ものは吹き溜まりになるんです」
>「人を呪ったり憎んだり傷つけたり‥‥‥。そういうものばかり背負いこむ者が出て
くるんです」
レフを持った者って選択者であると同時に、社会の犠牲者でもあるんですよね。
それというのも人間ってものはどこまでいっても社会的存在であることに変わりはないから。
他者への影響力がほとんどない人が足掻いても変革は訪れにくい。
けれど、誰も足掻かなかったら望んだ方向に変わるはずなどない。
一度道を間違えれば、取り返しのつかない過ちを繰り返すだけ。
アダムとイヴとして記憶を与えられた・呼び覚まされた二人は、
レフによる循環・やり直しが必要な世界への防波堤となってくれるんでしょうね。
業を背負っていても。縛られているからこそ。
作られたコマのひとつではなく、人間[社会]の一人として。
最後に。
Trueを終えた後に1章の相澤さんの遺書を読み返したら、嬉しくて泣いてしまったよ。
(他の場面でも泣いてたけど。この泣きは瀬戸口作品とかなり似ています。
ガラクタでも[だからこそ]光るんですよね~。そして人間賛歌。)
希望を乗せた方舟を「実感」しての死を迎えるってのは羨ましくもあります。