箱庭世界の肯定。
ラストのクリスマス以外は特にイベントも無ければ、経営努力といった(店の立ち上げや切り盛り)面もない。
むしろ資金管理は時給500円のかなでが行い、定休日でも頼まれれば10ホールのケーキを作りパーティーサービスを行うほど。
店には常連さんが沢山来て、幼なじみは紅茶を煎れる名人で、
急遽帰国した妹は猫魔法使いのミオとしっちゃかめっちゃか騒いでて、
お向さんの競合店とはお客さんを奪い合ったりもせず、そこで働いている不器用だけど本当は素直なお嬢様とも仲良くやってて、
主人公は夜だけ猫になっちゃうけど「些細なハプニング」よろしく日々を謳歌してて、
厨房ではちょっと抜けてるパティシエールさんは黙々と、けれど楽しくケーキを作ってて。
ハプニングと言えば、ミオがお茶を零したとか迷子の女の子がやって来たとかそのくらい。
特段大きな悩みも苦しみもなく、優しい世界に包まれて起伏のないちょっと風変わりだけど平凡な日常風景がつらつらと描かれる。
11月28日昼、12月9日夜。
いち場面を切り取ってもそれ単独で楽しめる、まるで4コマ漫画を見ているようで。
その各場面毎の小さな起伏が積み重ねっているだけで、より大きな起伏には乏しくて。
そう。それだけ。
それだけなのに。
あまりにも心地良い。
羊水の中、世界そのものが肯定してくれる庇護の中って、きっとこういうもの。
※悪意が強めの話もあります。人並みの悩みもあります。
しかしその何倍も、それを包みこんでしまうほど、温かいんですよ。
人と人との繋がりが。
幸せを当たり前のように信じて掴み、享受するその姿が。