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violinsさんの腐り姫 ~euthanasia~の長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
腐り姫 ~euthanasia~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
81
参照数
684

一言コメント

淫靡で退廃的。人の心は「歪」んでいたとしても、願いに、強き想いに変わりはなく。この幻想的な囚われの世界を切り開くのは「盲点」か。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

なるほど、「淫モラルホラー」という言葉が見事に表す圧倒的な世界観。
BGM、背景、塗り、キャラの造形、CV、テキスト。非常に高いレベルで噛み合わさって生ませる世界観は、登場人物を、そしてプレイヤーをその世界に縛り付ける。
それほど完成したものだからこそ、「盲点」がそれを悉く破壊する様が逆に心地良い。



昭和+田舎+幻想世界の雰囲気からしてラストのSF要素は素直に受け容れ難い。
しかし、人の理を外れた存在、囚われの世界をそういう要素で説明を付けるのもアリかと思う。
一定のフィクションを入れざるを得ない以上、説明を施すか濁して終わるか、そのどちらかになる。
濁してしまった方が世界観の維持はできただろうが、「リフレーン」、あそこへの布石としては許容範囲内だったのではないか。
とはいえ、由来云々となると、自分には納得のいく説明をするだけの力がないのだが。



人の強い想い、それを失っては誰々であって誰々ではない、空っぽの人形。想いが本質的な部分を形どっている。
それに対して記憶を失った五樹。記憶が消えてしまえば想いも消える?
否。
青磁から、夏生から五樹「らしい」と言われる描写は少なくない。
記憶という表面的なものを失ったとしても、たったひとりの、血を分けた妹を追い求める彼。彼の想いは生きづいている。
届かぬと分かっていても、ただひたすらに追い求める。まるで「ニンジン」*1 を追うかのように。

*1 「CARNIVAL」参照。希望の象徴。



しかし、幸せに届くこともあるのかもしれない。楔から解き放たれて再び進めるのかもしれない。蔵女にとって「リフレーン」が「盲点」であったように、手を取り合えば。諦めなければ。

~euthanasia~
「ありがとう」。世界に対してその言葉を告げられる二人はまた、かくも美しいのではあるのだが。