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violinsさんのRe:birth colony -Lost azurite-の長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
Re:birth colony -Lost azurite-
ブランド
あっぷりけ
得点
80
参照数
854

一言コメント

「狭さ」を感じているが故に「空・外」を目指すという青春らしさが出た前作。花街や貴族界といった雅な空気に身を浸しつつアーコロジー全体に足を伸ばし「外」に対する「内」を探った、少しばかり大人びた(けど素人童貞な)今作。前作以上にヒロインが多面的な顔を持ち、会話空間も重奏的(後述)で目を奪われる。話のスケールの割りには盛り上がりに欠ける部分もあるし技術が発達しすぎている面もあるが、マリオネットにせず個々のキャラを描くという原則は満たしており、体験版で楽しめたのなら相応に楽しめるのではなかろうか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

音声9割8分ほど聞いた時間。「クリック後もボイス継続」あり

4:58/3話、OPまで。体験版範囲
6:20/6話まで
4:27/セルリア
5:42/瑠璃
5:35/ノイエ
6:37/アズライト
0:28/シーン回収
0:57/アズライトの~3分間ハッキングゥ

計:35時間4分

CG数(エロ):アズライト20(7)、セルリア17(6)、瑠璃15(6)、ノイエ16(7)、その他26(9)+SD7
シーン数:アズライト4、セルリア3、瑠璃3、ノイエ4、藍理2、シアン1、海&織絵1
BGM数:30+OP,ED,挿入歌*2


海原エレナがキャラソンとして挿入歌を歌っているわけだが、膨らみある声でばっちしキャラと
はまっており、びっくりした。嬉しい誤算。OPより好きかも。


アズライトにルートロックあり。共通部分のとある展開を淀みなくするには、セルリアを最初に
攻略すると吉。
あと、ノイエルートに瑠璃に関するネタバレが幾分含まれるため、瑠璃→ノイエだとそれを避けられる。


OHPにある宣言通り、前作「フェイクアズール・アーコロジー」はやってなくても基本問題ない。
そんなに出てこないしあってもファンサービスレベルで、一応最低限は用語解説に出てくる。
ただし今作最大の山場=climaxの場面での興奮度は大きく変わるんじゃないかと思う。
前作を知らなくても演出・話の展開で惹きつけられるようにはなっているし、展開は問題なく追える。
しかし想起するか否かってのはばかにできない。



 ※以下、ネタバレはさわりに触れない程度



◯エロ

フェラ+膣内など、8割方は1シーンにつき射精2回。シアン・海&織絵は3回ずつ。
注意点は、アズライト、セルリア、瑠璃、藍理それぞれのエロ1回は夢オチで、
ノイエも1回が夢オチ、他1回がそれに類するもの。
また、アズライトととの本番らしい本番はその夢を除けば1回で、残りは触手(電脳上でのこと)と主人公蒼司による手マン。
コスプレはあまりなく、(注意点に挙げたのを除けば)パイズリ・フェラ・本番とノーマルプレイ。
(旧スク藍理の足コキくらいでアナルはなし。)


好みの話になるけど、浅海朝美のトロ顔はすごく好き。特に眼。表情差分はそこそこある。
前作「フェイクアズール」よりは大人しめになった気がするけど、涙眼+横ライン入れてるのが非常にクル。
唾液が糸引いてるのもエロい。表情いいわー。


声はたどたどしすぎたが、アズライトのポニテ+体操服・ブルマには脱帽した!




◯テキスト、立ち絵

目につくようになったという私側の変化かもしれないが、立ち絵とテキストが重奏的に感じた。

話相手だけでなく、周りにいて話を聞いているキャラの表情変化が多く、後ろめたや「わたし関係ナイヨー」
といった理由でそっぽむいたり、照れてたり、あせあせしてたり、生暖かい眼で見ていたりと、その場の
「空間・空気」がすごくよく表せている。
そして地の文も話題に上がっているテーマや話相手だけじゃなく、その「周りの様子」を拾うことが多い。
ハッカーとして同時並行的情報処理に慣れている主人公の「視野」の広さ、器用さ、状況把握能力などが
発揮されている一面でもあり、キャラにあった演出にもなっている。
またセルリアなんかが典型だが、貴族・学生・友人・共犯者といった顔の多さも「重奏的」だと感じる理由のひとつ。

話し相手同士だけというライン一本ではなく空間としての情報量の多さが出ているのだが、
そのぶん分かりにくい、話を追いにくいとも言える。
それに加えて、精確にしようとして地の文による補助的説明がちょろっと入ることも少なくない。
説明口調ってわけではないが、台詞も長め。


気になったのは「居る」を使いすぎ。というか「いる」の方が適切な場面がほとんど。
脱字は見当たらなかったが、誤変換(特に「者・モノ・物」)がちらほら。


基本は主人公の一人称だが、ヒロインの一人称に寄り添った三人称もそれなりに使われる。
(追記:厳格な三人称じゃなく、ヒロインに焦点があたった一人称的三人称やその逆も使われてる)
そして、視点が変更するときにはポップなどといったマークがないので、場面から読み取る以外ない。




◯前作と比べて

体験版の印象通り。OPを見比べるだけでも雰囲気の差は掴める。

男にとってはエグいものもある姦しい(ガールズ)トークと知的なやり取りが前作の良さだったと思う。
メインヒロインの立ち位置にいるイジり・攻め系キャラが、レティ・輝という二人からセルリア一人に
減った影響と、主人公の立ち位置が、夢を追う一学生から、貴族という地位への近さと「青い少女」という
敵を追うところからくる影響で、笑いが少なめでシリアス分が増してる。
テーマ的にも「外(広大さ、未知未来)」を目指すというワクワク感から、アズライトや「青い少女」の
謎を解くという内向きというか目指す先が過去現在に向いているのも一因。


しかし、

 >「……それで、俺がそうだからと君らに何か迷惑をかけたか?」
 >俺が、ここに住んでいる頃に海姉さんを始め何人もの相手と寝た事を藍理にばらされていた。

雅致な高級娼館で育った主人公の過去がヒロイン全員にばらされ白い目やジト目で見られ嫉妬されるという、
前作を思わせる「らしい」展開も引き継いでいたのは嬉しかったし楽しかった。


演出不足の声が高かった(?)前作と比べて、そこはしっかり改善してきてる。
今作は前作の航空機と違ってそんなに動きが求められるわけではないが、全体的にも局所的にもレベルが
上がったのは確か。
BGMもなかなかのもの。


セルリアと同じで、前作はキャラをかわいいと思うよりも一緒にいて楽しいと思う割合が多かったと記憶
しているが、先輩と慕ってくれるいじられキャラであるノイエと、庇護欲をそそるアズライトによって
萌え要素がパワーアップしてるかな。
特にノイエは性的な部分(服装とか異性との距離)に無頓着なところと、いざそれを意識したときの焦りとの
ギャップがすごくいい。




◯シナリオ その1

肩肘張らないライトSFということで、便利すぎる面もあるが、ストレスなく話も広がり楽しめるのは
やはり良い。
藍理さんを筆頭にサブキャラ・サブヒロインもいい味出してる。
また、どのルートに行っても相応の深さ・核心への近づきがあり、本筋から外れたキャラがいないのもGood.
ちゃんと展開も被らないようになっているし。
まあその展開の多様さ故に、「このキャラはどう考えていたのだろうか」「どういう状況にあったのか」を
気にすると整合性の問題も出てくるか。

そんなことより問題は、山場の高さが予想以上に低く、あっさり味が多いこと。
相手が相手だし、肉弾戦よりもデータの飛ばし合い、有利な状況を作れているかがメインだし、ということで
ここぞという場面を盛り上げにくい。
ライトSFの気軽さが悪い意味で「あっけなさ・儚さ」と結びついている。
轢かれりゃ即死みたいにリアリズムといえばそう解してもいいが、エンタメとしてはやや弱さが出たかなと。
ただし、上でも挙げた一番の山場は素晴らしかった。



 ※以下、ネタバレ度高いです










◯シナリオ その2

プレイ中の空気からすると、Bad end並までとはいかなくとも、強めのBitter endくらいなら充分ありうるなーと
思っていた。
大団円的Happy endでは終わらない可能性が半々くらいで、どう転ぶかは読みにくかった。(積極的に読もうと
してなかったけど)
で実際は、カカオ50~70%くらいのビターな味わいがあるHappy endになっていたかな。(*)
犠牲の最も大きい瑠璃ルートでも本来の犠牲から考えれば軽いものになっていたわけで、ご都合主義だと断ずる
ことは容易いし、その面は否定できない。
しかし、涙返せよと思うほどの性急さ・無理やりさは感じず、これはこれでアリだなぁと。

 (*)アービノスなどは除いたとしても、ソアを思うと犠牲がないルートはない


敵役の位置にいるのが「青い少女」で、悪意ある存在ではないが故に物語の引き締まり具合は緩くなるが、
その分やるせなさは強く、感動しやすい空気は出せていたのでは。
「青い少女」は初めから存在理由を明確に示された子どもであり、視野の狭いひたすら役割を全うする純粋さが
人の本性と一致しているために、アービノスもベレンス議長ものみ込まれたのだろうか。
「青い少女」は■■■から時間をかけて吸い取ったからこそ、プログラムと自我とがせめぎ合った存在なのだろうな。


この視野狭窄と一直線の感情増幅という点で言えば、瑠璃ルートで蒼司が「青い少女」に取り込まれるような展開が
あっても面白かったんじゃないかと、今振り返ると思ったりもする。