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violinsさんのこの大空に、翼をひろげての長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
この大空に、翼をひろげて
ブランド
PULLTOP
得点
72
参照数
652

一言コメント

soarっていい言葉です。空高く舞い上がる、希望や想いが膨れ上がる。モノ作り+空は鉄板ですな。「ロケットの夏(これはSFが強いけど)」のような涙を誘うモノクロの懐古的青春モノもいいけれど、青々としたさわやか系青春モノもまた良いもんです。ただ、恋愛要素はあって良いんだけど、カップル化が必然であるエロゲという媒体ではなく、一本道で各々のトラウマなり抱えているものを乗り越える話だったらもっと楽しかったんだろうなぁ 気持よかったんだろうなぁと思わずにはいられない。まあしょうもないこと言ってる自覚はあるんだけど、個別での悪い部分がいい部分を結構食っちゃってるのがもったいなくて。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

音声2~3割聞いた時間。「クリック後もボイス継続」あり。いつもより時間の測り方がてきとーです
4:42/セカンドOPまで
5:32/小鳥
3:05/亜紗
1:37/依瑠(双子ルート)
3:23/天音
3:19/あげは

計:21時間38分


飛岡先生には、「押し付けた善意は悪意と何ら変わらない」というルルーシュ(「コード
ギアスR2」)の言葉を送りたいですね。
いい年して、不器用で、勇気がなくて。
ある意味かわいい人です。けど言葉をもっと大事にしよーよ。使おーよ。


で、この飛岡先生への敵視(空振り気味だけど)が異常に高まったあげはルートですが、
「空を目指す」「障害になんか負けず空だけを見続ける」という、他ルートで強いきらきら
した前向きな(誇るべき)視点が、「障害」の存在を大きくしすぎてガキ臭い至近的な
視点になっちゃってるのがすごく残念。
(前者は飛岡を(より)天災のように扱い、後者は飛岡を人災・悪役として扱ってた感じ
でしょうか。)
これは専らあげはの独断と思い込みと恐怖が原因だが、たとえ選択肢を活用してあげはに
トラウマトリガーを引かせて作品全体の整合性をとっていたとしても、そのことによって
「コレジャナイ感」は拭えなかっただろう。
キャラが明らかに崩れている(特に主人公と依瑠)のも加え、爽やかさが後退している。
「モーニング・グローリー」という大枠が同じなか、細かい展開を変えようとすることの
大変さはよくわかる。頑張ってるのもわかる。
よくわかるけど、楽しくないものはやっぱり楽しくない。
そしてあげはだからこそ製作過程に力点を置いて欲しかった(本作全体に言えることでも
ある)けど、最薄でした。残念。


さわやか系青春物語で、「みんなで打ち込んでいるのがすげー楽しい」とか「空に恋して
るの」とかいうセリフ・感覚を、お互いに共有しているからこそ「くっせーーww」と笑い
濁しながら楽しんでいる。そういう空気が一番の魅力となっていたと思うんですよ。
ここが前面に出てきてる小鳥ルートは良かったです。そしてピーク。

双子は知りあってからの期間の短さと「夢」の共有が弱い分、恋愛・内面の割合を大きくしてた
けど、そこらの萌えキャラゲーより入れ込む尺がなく、テーマもサブ的という不遇な位置。

先輩は盛り上げ不足か。あの集合写真のように「憂い」をもった感情が実際飛ぶことで
氷解する、「美しい」と思える「ふつうの人間」だと確信する。
それは良いんだけど、小鳥ルートほど山場が少ないし、結局同じ展開の繰返しだし、飽きてたのか。
これは共通や他ルートにも言えることだが、「落下」の恐怖が足りない。せめてこういう時
くらいBGMをもっと主張させればいいのに。
確かに演出面で目を引く部分もあるけど、エロゲはただでさえ動きが出しにくいんだから、
戦闘が題材の「群青の空を越えて」レベルと言わないまでも、もうちょっと。