『恋チョコ』よりボリュームダウンしてるし、非18禁ということもあり付き合うまでがメインでイチャラブは少ない。「常祭学園」や「盟友」といった設定やサブキャラも使いきれてはいない。しかし青春らしい輝き、成長、仲間、団結はなかなかよく出ていたんじゃないか。シリアスも悪役がいたり完全に反目したりではなく、噛み合わない・伝えられない・踏み出せないといった善意や優しさが感じられる素朴なものなので、前作より心地よさもアップしている。
音声8~9割ほど聞いた時間。「クリック後もボイス継続」あり
2:23/体験版部分(計10分ほどの加筆あり)
6:11/奉莉
5:07/希実花
3:57/真央
6:26/歩夢
計:24時間4分
CG数(差分含まず):70枚。(各ヒロインメインは一人あたり13~19枚ほど。+複数キャラもの)
BGM数:鑑賞では40曲。前作流用とか作中にはもうちょっとある。
歌ありはOP*2、挿入歌*2、ヒロインED*4、グランド*1。
※ネタバレ度は中~高めです。
◯全体の流れ
物語期間は2月末の合格発表から4月末の「桜花祭」終わりまで。(エピローグで多少延びる場合も)
通う高校は通称「常祭学園」として毎月祭りごとがある設定だが、使われるのはひとつのみ。
ただしその「桜花祭」は球技大会・域内クエスト・文化祭的カフェ・舞台演技とよっつの要素
から成り、これに恋愛や個人の掘り下げが並行するのでイベント・起伏の量は程よい。
イベント本番の記述は多くもなく少なくもなく、かな。
このイベント群に入る前に個別ルート入りするのだが、ルート毎にできる範囲でイベントに変化を
つけている。例えば文化祭はメイド/浴衣/他校制服など。
また、カフェや舞台パフォーマンスのネタはそれを得る「きっかけ」を作っているのが良い。
メタ的に見れば予定調和にすぎないが、「良さそう」「あれ使えそう」とイベント同士のつなぎが
(マルチルートでの不整合や計画性の足りなさとか些細な面を除けば)自然になっていたかなと。
これらのイベントを主要メンバーと共にこなすというのがメインで、そこに親の再婚による
家庭事情だったりがはいり、恋愛に関しては付き合うまでが長くイチャラブ要素は薄い。
付き合う前を含めてデートは1,2回といったところ。
付き合ってからは0.5~1hほどでED。
◯立ち絵
2週目以後スキップを使うとよくわかるのだが、9割以上立ち絵がひとりずつ表示されている。
Aの発言ならAだけが出ていて、次にBに振ったらBだけにという風に。
決して複数人でいる場面が少ないわけではなく(むしろそっちの方が多いかな)、みんなで
話をしているけれど一対一で向き合っている感が強い。
手抜きじゃないとしたら、ユーザーにとってのわかりやすさか、主人公のロックオン度合いを
表しているのか。
即席ながらなかなかの結束力を見せるし、みんなでの「空間・空気」自体は良いものをもって
いるのに、それをこの点が減じてしまっているのはマイナス要素。
しかし、大量に出てくる背景モブ子を堪能できるという意味ではプラス。
ヒロイン格になって欲しい子の数が片手で収まらないんだけど。
◯テキスト
非18禁ということもあり総じて読みやすいが、丁寧すぎてちょっと固い。
「人手が足りないとかはない?」
「大丈夫だよ。今の人手で十分足りてるから」
というように、話題を示す言葉を省略しなかったり、何十回も出てくる「チャリティ
フェスタ」を「チャリフェス」などと略しもしない。
「茉莉と帰り道が分かれる交差点」も「いつもの交差点」などと言いかえずに懇切丁寧。
悪く言うと薄い。
あと内心(ヒロインだとボイスあり)での丁寧な説明もやや違和感。
◯個別ルート。粗筋書いてます。
◯奉莉
中学3年間一緒だけあってかなり仲のいい状態からスタート。で、とあるきっかけから恋心が再燃。
しかし茉莉はある理由から陸斗との恋人関係を受け入れられず避けるように、という話。
「盟友」と呼び合う過去はもっと出してよかった。というか無かった。
奉莉と付き合う上での障害は思考がめんどくさくもあるし陸斗の言葉とはいえ彼の選好を
勝手に決めつけて説明なく頑なな態度を取るなど明らかな非もあるが、それでも純粋一途故の、
未来を見るが故の過剰な悩みであることから可愛らしくも思えるのが良かった。
が、ラストで大団円となる過程は(そこまでの過程と比べれば尚更)あっさりとしすぎだった。
不満というか不備としては、この奉莉の悩みという「障害・問題」を継続させる、積み重ねる
ために主人公を鈍感にしないではおけなかったこと。
ここは奉莉の演技力をあげるなり、主人公が気付いても「踏み込めない」という自縛を与える
なりで対処したほうがよかった。
後者は例えば家族ネタのタブー化など。(中学時代に地雷踏んでたとか加えれば「盟友」とも
絡めた話ができそう)
◯希実花
昔の私、さようなら。華やかな高校デビューしたいんです!
‥‥けどやっぱり私にはダメなの?
でもみんなのためにも、なにより陸斗くんのためにも、頑張る! という話。
おどおどっ娘がクラスを引っ張れるほどに立ち上がる、心地良い成長物語だった。
最初はフォローというか希実花を背後にして守る姿勢を取っていた主人公も、
次第に彼女を励まし叱咤し導き、共に歩むようになる。
シリアスも過去の乗り越え・受け入れという前向きさが前面に出ていて、爽快。
茉莉はスタート位置が高くて(快活、人当たりの良さ…)以降は落ちるばっかり
だったが、希実花は低かった故に上がり部分でののりしろが多くていいもんでした。
◯真央
実家の免許皆伝を授かるためには「男」でいなければならないし今までも
そう生きてきた。だが、学園行事や師範の求めから「女」として過ごすことに。
そして恋人ごっこはほんとうの恋人に。
好きな子も世界もキラキラ輝いて見える「青春的恋愛」については断トツの良さ。
体験版部分では特に惹かれなかったけど、分岐してからはかわいらしさがぎゅっと
詰まってた。
武道っ娘だけどすごくお淑やかだし、心根が女の子女の子してるから照れた姿も、
素直に嬉しさ・幸せを感じている表情もすごくいい。
シリアスが葛藤という泥沼ではなく「その時々を精一杯楽しめ」という爽快な方向で
解決するものが多いから過程も心地よい。
尺は短いものの「恋人ごっこ」があったぶん、他ヒロインよりイチャラブ量も多め。
主な不満は師範と剣での語り合いがなかったこと。
女か剣かと迫られた末の破門。それをとく過程で、師範であるじっちゃんがあっさり譲歩。
決意を形で示させろよ。王道だろー。まったく。
◯歩夢
再婚相手の連れ子。亡くなった母親をとても大切にしている陸斗は新しい「家族」を
受け入れられるのか。そして歩夢の抱えた「他人に頼ることができない」という問題を
解決できるのか。出来合いの義妹ということもあるが、インセスト・タブー的な「兄妹」
と「恋人」での葛藤は特になし。
ほんまいい子やわぁ。茉莉のように変に崩れることもなく、「いい子」故の
甘えベタという話のネタがヒロインの魅力を削がず、むしろなんとかしてあげたい
という保護欲をそそるいい働きをしてる。
この点が家事全般を歩夢に任せ「母親」としての役割を果たせていない「家族」像
の問題にも関わっており、他の問題も乗り越えた先に「仲睦まじい家族」が得られる
というポジティブなストーリー。
気持ちいい。
抜群の包容力をもった母親はホント卑怯だと思う。ニクイ。
「家族問題」はキレイに片付けていたんだが、恋愛面はややお座なり。
まず歩夢側の「好き」の目覚めが唐突であったこと。
そのすぐ後に落ちついたりするのでまだいいが、ラストはいただけない。
問題を一気に解決する、関係を進めるための舞台を演出しようとして無理やり盛り上げている。
以下、ラストシーンのネタバレ。
乗車中の歩夢は事故に巻き込まれ崖下へ。車外に出て助けを求め、陸斗はなんとか
歩夢を探し出す。
道路沿いの崖下を歩けば転落した車のところに戻れる。そこには彼らの先輩がいて、
消防等にも連絡している。
21時過ぎ。山道から十数メートルほど下にある山林、雨が降ってぬかるんでいるなかで
歩夢を背負って崖登り。「手だけで支えた」という記述もあるし相当の角度。
「道路にでて早く救助されたかった。歩夢は風邪をひいているみたいだし。」
それでも、いやアホかと言いたい。
もし背中から落ちたらお前の体重ごと歩夢にダメージがいくことがわからんのか。
最後。タイトルの問題。
再婚した親子がやってきたときに部屋割りが親同士・子同士になり、歩夢は男の振りを
しなければならなかったのはなぜか。
事の次第は一応、陸斗の感情を考えたうえで陸斗たちを慮って「早く仲良くなれるように」
という親心によるもの。
同室を受け入れさせる説得過程の酷さはあるが、まあ結果オーライですかね。
確かに陸斗の感情を考えれば理解できる行為かな。