名演が光る陵辱の殻を被った純愛抜きゲー。あくまで「抜き」が主体であること、グロ方面に期待しないこと。僕はもっと、刺激と悪意と信念が欲しかった。
Ver1.01パッチはセーブデータの互換性がないので注意しましょう。
ボイス相当飛ばしてます。たぶん3割聞いたか否かくらい。エロシーンも重要性低いと
思ったらスキップ。
音声全部聞けば、2倍程度の時間にはなる気がします。
2:52/菜月先生
1:35/梨香
2:02/凛音
2:47/合歓
1:50/叶
0:39/True
0:30/トロフィーEnd
計:12時間5分
※途中までネタバレ度:小~中
後半はネタバレ度:大 です。ご注意を。
最初に。
システムが素晴らしい。欲を言えば「次の選択肢までスキップ」が欲しかったけど。
(あとはバックログからのシーンジャンプか。)
「クリック後もボイス継続」は採用メーカー増えたと思いますが、次にボイスが来るか
否かのマークが表示されるのは、「音声は全部聞きたい」って人にぴったりの機能。
これに加え「オート時は音声再生中、次の音声まで進む」と合わせれば、痒いところに
手が届く親切設計。
他にも本編中のCG拡大機能とか、よーできてます。
他のメーカーの人は体験版でいいから触れて参考にしてみて欲しいほどです。
シナリオに関しては、特に設定部分でちょこちょこパッチワークをしながら、持ち味
(本作で言えば「あひぃぃ」系エロか)で肉付けしていく。
情報も作品も氾濫してる現代では普通のことだと思います。トレースではなくてね。
普通なんだけど、ちょっと手を広げすぎてる感が、つまり広く浅くなってる面がすごく
残念。
「見たことある」って思うのはそんなに厭じゃない。
けど、「あれもこれも」と薄く詰め込んだ作品と、話を広げにくくても・ネタは陳腐でも
「これ」を深く掘り下げた作品のどっちが好きかと言えば、(大抵の場合)自分は後者です。
まあ、結局面白ければいいんだけど、元ネタに触れているほど前者の「ペラペラ感」の方
がガッカリくると思うんですが、どうでしょう?
みさくらなんこつ的テキスト(「あひひいいいいぃいぃいい」とか「イグゥゥゥウウ」とか)
が合わない(と分かっていた)自分としては、始めからソリッドシチュ・グロや、
シナリオ的に楽しみたかったんですが、もう一歩。
「オリジナリティのなさ」以外で言うと、まずグロの薄さ。
顕著なのがトロフィーEnd前のアレ。
半数以上が拍子抜けしたと結構マジメに思うんですけど。もう終わり?って。
せっかくサブリミナル的瞬間表示で盛り上げたのに。そこは良かったのに。
他のシーンも「死んだ瞬間画面が真っ赤」に毛が生えた程度のもの。
グロ的にダメな人より、スカとかエロテキスト的にダメな人の方が多い気がします。
次はソリッドシチュを使い切れていない点。
解錠者・鍵穴が条件満たした後、他の三人から隔離した、完全に「二人だけの空間」が
用意されている(カメラ音声なし、いつその部屋から出てもいいよ)のだが、そこを使え
ていたのはせいぜい凛音だけ。
逆に見れば残り「三人」の方も二人から、何より主人公(=プレイヤーの視点)から隔離
されるのだから、ひとつくらいそこで大きな展開を見せられたはず。
たった二日半しかその空間に囚われていなかったが、二人限定のボーナスゲーム(豪華
な食事、寝床)を使えば嫉妬・憎悪を煽ることもさほど難しくない。
……心理描写がおざなりになりそうな予感がする(笑)
けど最後までやればキャラの関係性・性格が明かされるし、それを隠した序盤~中盤に
強制End(ルート)として持ってくれば、伏線にもなるし行けなくはないんじゃないか。
ここで1Endくらい用意して欲しかった。
(梨香の靡きはあったけど、それも脱出後活きていたかと言うと…。キャラ的にも
ごにょごにょだし。)
エロゲって他媒体より(文・音・ゲーム性・18禁…)表現の幅が広いと言われたりするが、
「18禁美少女ゲーム≒エロゲ」とされているように、エロに縛られてる。
だから(サブはともかく)メインヒロインを序盤から再起不能なほど壊すことはかなり
難しいし、陵辱も、シナリオ運びの障害・その解除もエロ主体。
「シナリオも面白い抜きゲー」として売っている、あくまで主体は「抜き」に寄っている
本作に対してこういう批判を持ち出すのはせこいんだろうが、グロのぬるさと相まって
緊迫感が薄い。
確かに首絞めながら犯したりするのは「死」が近く感じられるが、しょせん「ハードシチュ」
であり、ネクロフィリアまで予定されてないし、安心感がある。
だからこそ、次々とヒロインを助けていくシーンは「おおっ!」と思ったのに…。
叶を助けるために、二つの手段が提示されるシーンがあるのだが、ひとつは「SAW」で
出てきたかなりのグロより、もうひとつは頭脳より。
この対比もそうだが、「叶」という「お前だけは助ける」というキャラに対して、他の
ヒロインを助ける時より主人公が傷つかない。
一番盛り上げて然るべきなのに、軽く感じたのは残念。
血だらけになりながら、腕一本でも折られながら救って欲しかった。
エロについて。
上で書いたように、絶叫系エロです。
「声優さんすげー!」って感歎するけど、自分は抜けなかったです。
スカは一人当たり一シーンくらい。
鍵穴・解錠者の行為は他キャラに見られてる設定だけど、あってないようなもの。
問題は「現実性」を重視している点と、複数がほとんどなく、乱交はゼロな点。
「現実性」ってのは、触手や透明化といった空想的な要素がないこと。
(にも拘らず、CG上だけだが、胸の肥大化はあり。その状態でのエロはなし。)
コンクリ詰めだったり、フィストファックだったり、「現実の枠」は出ていない。
故にシチュの限定が多少なりとも見られたが、シナリオを考えれば妥当か。
結構落胆したのが乱交なんですが、モブ乱交がテキスト30クリックほどで終わるくらい。
(CGあり。射精なし)
メインヒロイン達を複数人同時ってのもほとんどない。
脱糞・食糞の永久機関?を二人でやる、ダブルフェラ、3Pが一回ずつくらい。(凛音・梨香のみ)
モブ乱交まじもったいない。可愛い子いたのに。
あと、純愛エロなのに愛撫が少ないってのは問題のひとつ。
特にTrueルートのエロはちょっとなぁ。
卑語言いまくりや絶叫なのに、一応理由はつけられるとはいえ、そこは抑えてギャップ
出したほうが良かったんじゃないですかね。
BGMは悪くなかったけど、盛り上がり切らなかった…。
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※以下、ネタバレ満載です。
というか端折って書くので既プレイ者にしかわからないと思います。
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勘のいい人は、叶の嘲笑的な立ち絵からある程度予想してたんじゃないかな。
自分は一番最初に感じた違和がこれだったんですが、まあこれぐらいなら大したことはないか。
エロゲ慣れしすぎかなぁ…(笑)
では本題。
ぶっちゃけ「SAW」を、スプラッタ・トリックも然る事ながらジグソウの「思想」に貫かれて
いることから来る深い満足感を与えるような作品を期待していたんですが、その大事な軸が弱い。
陵辱中の純愛で魅せても、結局金持ちの道楽という黒幕に、一気にチンケさが漂う。
架空現実で解消しきれない、「現実」の掛け替えなさもありきたり。
まあありきたりなのはいいんだが、その「架空」が余計に前半のソリッドシチュの
価値を落とし、尚更もっと酷い絶望を味わわせておけよ、と思わせる。
それでも、「蟲愛でる少女」ほどではなかったけど、陵辱の中の純愛いいですねー。
花言葉「歓喜」「胸のときめき」「創造力」を与えられた可愛らしい合歓だけでなく、
親に捨てられ愛に飢えていた、母親にばかり注がれる愛に恨み羨んでいた研究者叶も、
バカなくらい好きだと「幼馴染叶」に好意を寄せる恵輔に惹かれ、合歓に嫉妬し、
それでも偽りの「楽園」だと分かりながらを噛み締め、忘れられなかった。
「幼馴染」をオリジナルにすればするほど、誰でもない「叶」自身の投影にも繋がり、
擬似であろうと「経験」を積んでいく。
「恵ちゃんに対する叶」ができあがっていく。
学園生として、恵輔・合歓と過ごす「叶」ができあがっていく。
何より、星が見たかったんじゃないかな。星の暗号をもとに、また三人で。
だから合歓も必要だし、そもそも使われる・翻弄される境遇という点で似通った面もある
彼女を、恵輔が愛する彼女を、捨て置くことはできなかったんだろうなぁと、希望的
観測をしてしまう。
仰々しく「楽園」を創造しなくたって、幸せの「青い鳥」は始めからそこに居たんだよ、と。
「好きだ」の選択肢*5回後のシーン。
>「こんな簡単にコントロールされるくせに。コマのクセに。逃げ出すくせに。」
>「適当に初期化されてボロボロの脳味噌で、いつまでも愛することばかり選んで。
すがりついて! 壊したいくせに、犯したいくせに!」
>「愛する相手すら間違っているくせに……!!!」
世界の仕組みを説明し、別れるシーン。
>「……俺があまりおまえのこと嫌いになれないのはさ」
>「お前が俺の記憶を操作したからかな」
>「さあね。そんなの教えるわけないでしょ」
>「そうか、そうだよな」
>「でも、もうわたしのこと、愛してないでしょう?」
>「…………」
>「もういいわね、さ、行きなさい」
……中略……
>「ありがとうな」
>叶は一瞬虚をつかれたような顔をして…
>それから、憎々しげにつぶやいた。
>「本当に……」
>「馬鹿よ…あなた」
三点リーダーに、苦悩と幸せを見出しても、いいんじゃないでしょうか?