ErogameScape -エロゲー批評空間-

violinsさんのLOVELY×CATIONの長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
LOVELY×CATION
ブランド
hibiki works(暁WORKS響SIDE)
得点
72
参照数
782

一言コメント

ほとんど「成長」しないから余計に主人公のダメさがネックになっているが、能力値上げ・アイテム集めという昔ながら(という話)のシステムは中々楽しいし、たすく絵は総じていい出来だった。エロは質より量を地で行っているが、アペンドを含めれば各ヒロイン13シーンあるし(奇抜さはあまりないからノーマルプレイが好きなら。逆に言えばヴァリエーションは少ない)いくつかは当たるだろう。不満もあるけどいろんな意味での「手軽さ」は良い方向にも作用してくれた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

音声7~8割ほど聞いた時間。「クリック後もボイス継続」あり

3:31/綾
2:57/由仁 
2:59/優希
2:21/三朝
2:26/瀬良 

計:14時間14分

Append 7~8分*(5人*6回)=3~4時間くらい

CG数(内エロ数)差分・アペンド含まず
由仁19(11)、優希20(10)、綾19(10)、三朝19(11)、瀬良18(10)
※アペンドは1シーン一枚で6枚ずつ

BGM数:25曲+OP



◯全体感想

欠点は多々見られるが、行動選択によってヒロインとの会話をフィードバックできるのは双方向性が
出て予想以上に楽しかった。
まあその分「借りる」という相互行為、直接的な共有がほとんどできなくなるという寂しさもある。
また、能力値上げは「主人公の成長」という観点からみたら微々たるもので、(「WLO」のような)
女の子のために頑張る「成長物語」とは言い難く、「運」って超大事だねってやるせなさが募る。
主人公、お前の「好き」「添い遂げる」「覚悟」といった言葉は軽い。



知らない者同士の「ゼロからのスタート」と期間の短さとの食い合せの悪さがモロに出てる。

過去を背負っているように感じない(=薄い。例えば人当たりのよい優希が友達とまともに出かけても
いないという過去)「俗物的」ヒロインたちで、すごく都合のいい存在だが、それゆえに安心できるのも確か。
行きずりほどではなく、サクッとそれなりにつながれる。
キャラに比重を置いているとはいえ抜きゲだしね。

また、恋は盲目と言うけれど、ヒロインが持つ「主人公像」の美化具合がすごい。
もちろんユーザーはヒロインの知らない・見ていない主人公の内面・行動を知っているが、
それを考慮してもやはり相手に理想像を見ているあたり――どこか「未来にキスを」を思い出す――歪みを感じる。

まあ次々と消化されていく資本主義のセカイらしいじゃないですか。
付き合うまで2週間でSexまで3週間ほどという期間の短さでキャラを好きになるには一定以上の
親しみやすさ・軽さは必要であり、手軽さは大事。母性天使由仁ちゃんに飼われたい。



ほとんどのルートで出てくる「家族観」で、叔父さん(と叔母さん)が主人公に「家族」と認識されていないのが泣ける。
「働きたくないから彼女つくるでござる」から始まる帰宅部ぼっちな「引きこもり」主人公は本作の欠点の
多くを引き受けているけれど、気取った地の文(=主人公の内面)が更に拍車を駆ける。
会話に表れる言葉選択との落差が大きすぎたかな。特にメールとかもうちっと変化球を混ぜても良かった。

このライターは精液よりも「精子/オタマジャクシ一匹」とか好きだね。新鮮だった。



上で述べてない欠点羅列(続編2の情報を見ていると今作の欠点が透けて見える。改善してくれるのでしょう)
良い点はPOVで。

・エロシーンの尺が短い。挿れてからも前戯も。そしてプレイ時間が短め=エロシーンが連続する
・卑語はなぜかヴァギナとペニス。P音つき
・アナルくらい欲しかった
・名前呼び=ラブリーコールシステムはバリエーションが少ない。特にエロシーンで浮いてる
 射精の瞬間に被せてくるから余計笑ってしまうこともしばしば
・シーンのぶつ切り感。イチャで言えばピロートークとかなし
・発射直前に「中/外」の選択肢
・アイテム集め・能力値上げの作業感(後半は)
・イチャの少なさ。エロシーン7回ずつはいいけど、その分精神的満足・甘ったるさが少ない
・青姦など「見られるかも」といった恐れ・羞恥がほとんどない。内面どう思ってヤルかって大事だし、
 まともに声を抑えるのも確か1シーンしかなかった
・倫理観・危機感の薄さ
・主人公-ヒロインという一対一の閉鎖性。比較が一般的な分、綾のちっぱいとコンプレックスとかが際立たない
・ボイス(エロシーンがちとツライ人も…)



 ※以下、ネタバレ度は高いです。

◯個別感想

・綾
単純接触と趣味被り(特にゲーセンマニア)、ぼっち的類友性と血のつながりの薄さという家庭問題の類似と
逃避先としての主人公宅。年齢差と人嫌いという接点の薄さを破るに充分な共通性がある。
他ルートで少しばかりは社交的に「変われた」価値を見せるなら、このルートは「変わらない」価値を見せる爛れた、
「超人(ニーチェ)」的な肯定性が善き哉。
しかし、綾の他人に背中を見せられない=バック不可を信頼で破れなかったのはつながりの薄さも感じる。
「期間の短さ」をうまく乗り越え一番キレイに収まったルート。


・由仁
恋人ごっこからの役柄・仮面と舞台外・着飾らなさの対立だが、ごっこ:舞台と外面的なつながりしか感じられていない
ことによる主人公のウジウジが終盤まで続くため「イチャ」が精神的な意味で非常に弱い。
由仁の母性や天使性も、話のやりたいこともわかるんだけど、「楽しさ」で言うとやはりマイナス面が強い。
ごっこ解消を後半まで引っ張りすぎたというシナリオに邪魔された不憫ルート。


・優希
自称「引きこもり」を脱出したとはいえその先は一対一の恋人関係主体という閉鎖性が強いゲームだが、
優希の快活さが「2年C組」という広さを幾分見せているのが健全的。
しかしヒロインによる主人公を美化する脳内補正の強さは特出してる。優希の「俗物性」の高さと性格との
齟齬が大きすぎるのが一因か。
政略結婚というシリアスも抑えめでイチャコラしやすい健康的なお尻ヒロインルート。


・三朝
瀬良に守られてきた女学院時代+学生気分の抜け切らない新任教師ってのがうまくエロゲ的に作用してる。
つまりちょろい。後半のシリアスがなくイチャラブに徹している。唯一朝チュンCGがある。
瀬良もだが倫理観とか背徳感はほぼゼロのくせにそういう話(例えば性教育の授業)を中途半端に入れたり
してるから、ネタを使う(苦悩)のでも「それがなにか?」と振り切る(至高のエロゲー空間)のでもなく、
「安全日だし生中出しのが気持ちいいし」と頭のゆるいキャラに。
まあ三朝は積極的に子どもを欲しがるぶん、「家族観」的にはプラスに働いている。
イチャラブ安牌ルート。


・瀬良
三十路ヒロインにありがちな性経験豊富なのをうそぶく姿と、バレた時や内面での恥ずかしがりは王道の良さ
があるんだが、ヒロイン視点がないぶん「内面」を主人公から見た時の「外面」で表現すべきなのにそれが
あまりできていないのが勿体無い。素直にヒロイン視点をいれても良かったんじゃないかと。
プリンはじめ甘いもの好きとかいう設定も活かせてなかったし、「かっこよさ」と「かわいらしさ」のギャップが
物足りない。
素材の良さが出し切れていない荒いルート。