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violinsさんの空の浮動産/再装版の長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
空の浮動産/再装版
ブランド
自転車創業
得点
75
参照数
276

一言コメント

ANOS+記憶管理の「ゲーム性」が表に出ず、コミカルな雰囲気に謎解きがプラスされた印象。自転車創業の中では難易度的にぬるいと思われ、作風が肌に合うかで満足度が大きく変わるかと。

長文感想

コミカルな雰囲気で掴みは良し。
作品の空気なら「LOST COLORS」「あの、素晴らしい をもう一度」より好み。やってて心地良いし笑わされもするし。
何よりキャラ立ちが素晴らしい。
全くもって萌えはしない(女)主人公だけれども(笑

「浮動産」って言葉も上手いですねぇ。本当に浮いちゃってるよ(笑)
軽くでも法学に素養があるならより楽しみ易いかと。
もちろん、法学の知識ないと進めない・表面すら理解できないということは無いのでご安心を。
 
 ※以下、大したネタバレにならない範囲で「LOST COLORS」「あの、素晴らしい をもう一度/再装版」を引き合いに出します。

 ※「記憶」とは記憶管理システムで使うキーワードのこと。
  手に入れたものから自由にひとつだけ保持(RPGで言う装備みたいなこと)でき、特定の場面で噛み合うと別の展開に進める。








自転車創業おなじみの「ゲーム性」に関しては、「ロスカラ・あのすば」と設定部分に大きな開きがあり、それ故にかなり容易なものとなっている。
つまり、「ロスカラ・あのすば」は"ループ性"があった為、自然と「記憶」を使う場所が増える。

「ロスカラ・あのすば」の構造
A ――――――α――B
A’―β―――――――B’

例えば、αで手に入れた「記憶」をβで使い得る。「記憶」を使う余地が物語全体に及んでいる。


それに対して、本作は基本軸が一本でループ性がない。

「空の浮動産」
A――――α―――――――β――――――B

αの位置で手に入れた「記憶」をβの位置などで使う余地はあるが、その逆はありえない。
「記憶」を使う余地がそれ以後に限定されている。


容易さで言えば自転車創業入門用と言えなくもないが、「ゲーム性」を堪能する面ではやはり「LOST COLORS」を強く押します。

補足:容易だからこそ、なぜここでこの「記憶」を使うのかと言う「理由付け」しないと余計つまらないものに…
虱潰しでは大して楽しくないでしょう。





最後に。
本作はあくまで自転車創業のファン向けかと。
「ゲーム性」の難易度が低いということは、シナリオ・キャラに求められる比重も高まる訳で。
自転車創業の作品は往々にして「読むだけ」だとボリュームが少ない。本作では更に拍車が掛かる。
他のADVと比較すればより顕著でしょう。(※自転車創業の作品の定価は3000円前後がほとんどです)

自分ですらもうちょっと描いてくれたらなぁ、と思いますし。
ちゃんと区切りよく終わっているのだが、充分広げようもある。
結局謎のまま終わってしまったものもあるし。(ここら辺は考察サイトあるので解明してるのかも知れないが。)
ともかく、自転車創業が好きでOHPの雰囲気が合えば買っても良いんじゃないでしょうか。