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violinsさんの恋と選挙とチョコレートの長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
恋と選挙とチョコレート
ブランド
sprite
得点
79
参照数
2813

一言コメント

選挙という軸を中心に起伏を付けながら、王道を押さえた恋愛を取り込む。イチャラブ又はシナリオ特化型の作品を好む人には合わないだろうが、程良く合わさった作品に仕上がっている。また、千里という幼馴染みの、最も身近な存在を他√でも逃げずに描いてくれたことに賛辞を呈したいのだが、逆に言えば彼女の存在が受け入れられない人には厳しい作品となりうる。長文感想では購入の参考になるような情報も書いていますが、ある程度はネタバレ要素を含むので嫌な方は見ないでください。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

基本的には体験版が気にいればその期待を大きく損なうことはないと思いますが、辛い場面もそれなりにあるので"ノリのいい楽しさ"のみを求めてると痛い目みるかも知れません。

<参考プレイ時間>

※体験版部分も飛ばさずに、音声は途中で切らずに9割方聴いた場合(モブキャラだけは途中で切った場合と考えて下さい)。但し、クリックしてもVoice継続は使っています
kazami timerを使って測ったので、同じ条件なら誤差は前後30分以内には収まるかと。

12:30/1週目千里√終了
1:35/プロローグ飛ばし+皐月側の選択肢を選んで本選合宿開始まで *1
4:00/皐月√終了
3:24/美冬√終了
3:40/衣更√終了
3:40/未散√終了
(計28時間49分)
*1 大きく千里・衣更ブロック、皐月・美冬・未散ブロックに別れるので、そこは別途記しました。




<推奨攻略順>

千里→(皐月、衣更、美冬)→未散

最初は千里√固定かもしれません。私は千里から攻略するつもりだったのでそこは確認していませんが。
仮に固定ではなくても最初が推奨な理由は、しっかり選挙の過程を描いていることと、千里という「最も身近な存在」である彼女を理解するため。
他√を楽しむ・理解するための前提としての側面も秘めています。

未散が最後なのはライターの言葉でもあるのですが、素直に従った方がベターかと。
別に先に攻略してもさほど不具合はないでしょうが、作品全体に亘るネタバレ度合いからすると比較的大きな比重を占めています。
但し、内容的に特出してるかと言うとそうでもないので期待は程々に。
個人的には(恋愛・キャラを強く評価して)千里>美冬>>皐月>>未散≧衣更



<本作の特徴>

一言でも書いたように、イチャラブに特化した訳でも、付き合う過程に特化した訳でも、恋愛以外のシナリオに特化している訳でもありません。
(エロシーンに関しては3回ずつ。千里は2回、他は3回ずつ挿入あり。フェラ(パイズリ)は1回ずつ。千里にのみ手コキあり。尺は標準的な長さかと。)

特にイチャラブに関しては千里は良質としても衣更・未散・皐月が良くて凡、美冬に関しては期待してはいけないものとなっています。
その分美冬は"葛藤"が中心に描かれるので、恋愛面が蔑ろにされている訳ではありません。

皐月に関しては敵であるが故に他の√ではほとんど関わりがないです。また、エロシーンでは声が結構変わってしまうので、何と言っていいやら…


発売前に結構危惧されていたシナリオ面に関しては、良くできていると思います。
確かに千里√での子供騙しな展開や、(さほど強くないが)ご都合主義的な展開もあります。
しかし、選挙戦の内容は利点・欠点を対立させ、納得のいく方に票が流れている。戦略としても合理的(例えば予備選前での演説の無用さ・予算減額クラブの取り込みや、本選なら「第三者」としての立場の利用など)であり苦なく読み進められる。
(突っ込みたい部分はあっても)大きな矛盾を感じる事もなく、一応の理由を付けて解決しています。
感情論だけで全てを解決していない。だからこそ自分は不快感に囚われずプレイできました。
ただ、(名演説など)選挙関連で強く感動する作品ではなく、あくまで恋愛中心の作品なので間違いなきよう。
(ま、細かい戦略等に期待して本作に手を出す人は少ないと思いますが)



その恋愛面については、基本王道に沿ったものです。
全体的に"好意"が"好き"に変わる過程が強く描かれている訳ではないものの、"主人公補正"で片づくほど酷くはないです。
どの√にも相応の"痛み"はあるので、それをスパイスと感じられる人向けかな。


売りのひとつ、CGに関しては所々崩れていたかと。身体のバランスであったり、顔の造形であったり。
更に言えば立ち絵の種類も多くない。
ですが塗りも手伝って魅力的なのに変わりはないです。「なんでここにイベントCGないんだよ」という不足感もないですし。
(CG数は千里(21)、皐月(15)、美冬(18)、衣更(16)、未散(15)、その他(4)、被りを排除すると全体86枚)
立ち絵も表情差分は充分あり、入れ替わり立ち替わり多くのキャラが登場するので特に飽きることもない。
少なくとも私には満足いくものでした。







―――――――――――――ちゃーらっちゃらー。ここからはふっつーの感想を書くのですよ―――――――――――――――――――――



周りから"夫婦"と認識されていてもおかしくないほど距離の近い裕樹と千里。
それ程近い位置にいるキャラには他√でも「想いを告げて欲しい」、そう思う。

もしその幼馴染みが大人し目のキャラだったら自分の心の内に留め苦しむのもまだ判る。
しかし、千里のような気軽に接し思ったことをずばずば言うキャラにはそこに留まって欲しくない。
そう思っている自分に本作は非常に満足の行く展開が多かった。

>ちっさい男が背負えない分は、素直にこぼせばいいのよ!
>大丈夫! 裕樹がこぼした分は、わたしが拾ってあげるから

この件にも表れているよな、信頼・理解。
幼馴染みとしての距離感も然ることながら、全√でその想いを告げている。
…千里のことを思えば苦しいです。振られる上に選挙を投げださない為に逃げる事もできいんですからね。
それでもヤキモチを焼き、時にはキレ、身体を使ってでも引きとめようとする。
千里が好きな自分には申し分ない出来。
美冬√のあのシーンも名演でどっしり惹き込まれたし。




危惧してた選挙に関しては問題なし。
突飛な政策も出さず、無理しないレベルで無難に抑えている。
それでいて予備選挙・合宿・記者会見・討論会と、要所要所にイベントを入れることで起伏に富んでいて飽きない。
BGMも粒揃いで世界に浸れるし、黒幕云々以外は総じて楽しめた。
堕落生活送っていたショッケンメンバーが一心に打ち込んでいるのは見ていて気持ちいい。
それ故に衣更√は辛かったりもしたが。。。




疲れたので箇条書きで(汗
<良かった点>
・主要キャラ全員好きになれたこと。そもそも普段途中で音声切るのがデフォなのに、ほぼ全部聞くくらいだし
・千里贔屓(笑)。強制オートを使うほどの力の入れよう。個人的には自分の好みとスタッフの作ったものが一致したので大満足。たとえ合わなくても、複回数はあるが一回の尺は短いのでイライラはしにくいかと
・絵。特に立ち絵のかわいさはかなりのもの。結構動いて楽しい
・BGM。オールクリアしても曲名判らないのが淋しいとこだが
・取ってつけたエロばかりでなかった点。流れに沿っていたのは選挙同様。
・千里、美冬、皐月√の満足度が高め。次点で衣更、未散。前三つはかなりにやにやもしたもんだが、後者二つはその点弱かった。
・グランドエンド。ムービーだけだが、良曲。タイトル画面で使われているのを聴いた時から好きだったし。
・やる時はやる男、大島裕樹。鈍い(ぶってる)場面も少なくないのだが、千里が自分に見ているものを理解していたりと結構好きなキャラ。ダメ主人公スレで人気らしいが、そんなに盛り上がるほど?


<どっちつかず>
・テキスト。読み易く、判りやすいのだが、(主人公の思考で)説明過多な部分も。体験版プレイ時には「演出で表せるところをテキストで書いて2重説明になってる」と思った部分もあったが、本編ではそれを感じず。改善されたのか、単に慣れたor気にならなかったのか…
補足:例えば「コンコン」というSEを入れた場面。
(そんな風に東雲候補のマニフェストに衝撃を受けていたとき、部室のドアがノックされた。)
「ん、誰だろ?」「私が出るわね」
修飾の度合いにもよりますが、括弧部分は別にいらなくね?ってことです。


<悪かった点>
・ディスクレス不可
・システム。Ctrlスキップや、Alt+Enterで画面サイズ調整ができない。全キャラクリアしないとExtraが解放されない(BGMの中身見れば少し納得したけれども)
・イベントCGの崩れ。特に正面顔に違和感を覚えることが多かった。魅力的な絵も多かったが(一夜明けた皐月のあの小悪魔顔や、みいちゃんの雨のシーンなどなど)
・イチャラブがやや少なすぎたか。千里好きな私にはさほど問題なかったけれども
・エロシーンの演技。◯山さんは置いといて、皐月の声が馴染めなかったのが…。日常部分では結構好きだったから尚更に
・ガレージと辰巳茂平治の謎は?まあ、こんなのどうでもいいんですけどねw
・「チョコレート」の理由は弱いですね。批判するほどではないけれど。ま、恋の味ということで。