簡潔に言えば、綺麗且つ丁寧な作品。世界観自体は良く描け、なかなかに味わいのある使い方ができている。※1部及び2部の小枝子√のみの感想です。
フルコンしないで、点数をつけ、感想を書くのはあまり好みでないのですが、しばらくこの作品に触れられなさそうなので。備忘録の意味合いが強いです。
また、前作:はるとま1は未プレイなのでそこはご了承下さい。
まず、世界観が大きな要素を占めているのでそれについてから。
温暖化の為に海面が上昇し、地上が海面にのみ込まれつつある世界。
更に、サトリ病という自分の死期が明確に分かる病により、人口が急速に減少している状況。
この二つのファクターを主軸として「出会い」と「恋」を描く本作。
温暖化、サトリ病以外という要素以外は全く以て普通の作品と言えます。
ということで、本作のウリとなるのが上の二つなのですが、なかなか上手く表現できていると思います。
要は、終末系に近い作品です。
そして、終末系でも、「緩やかな」終末である点が物凄く生きていて、納得できる。
(逆に「急激な」終末の作品としては『そして明日の世界より――』などが挙げられるでしょう。)
「緩やかな」終末の何が良いかというと、死と、他者と向き合う時間が多く与えられている点かと。
確かに自分の死期をサトったら、パニックに陥る、信じようとしない場合が普通でしょう。
しかし、本作で描かれるのはサトリ病で人口の半数が無くなったとも言える世界。
であれば、サトリ病が「普通」のものとして受け入れられてるのにも納得がいく。
だからこそ、緩やかに最期の時を迎えられる。
この世界観はBGM、CG、背景と合わせて満足できるものでした。
OPの雰囲気と本編の雰囲気がほぼ同じなので、OPを見て良さそうなら買っても良いかと。
買うか否かは置いといてもOPはみとせのりこさんの歌と相まって良質なので一見の価値ありです。
ここからは、1部及び2部、小枝子√に関して少し細かく見ていきます。
両者に関わる欠点として、仲良くなるまでの描き方が甘い点が一番気になりました。
特に2部は主人公補正が強すぎるかと。
こるん、小枝子のように以前から付き合いがあるキャラは良いのですが、ね。
(個別やれば千鶴、卯里が主人公に惹かれた理由が分かるかもしれませんが)
ある程度の関係が出来てから以後は丁寧に描いてる分、余計残念に感じました。
また、差分は充分にあっても、言葉とCG・立ち絵が一致していない場面が多々。
う~ん、自分の感性がおかしいのかしら・・・
<1部(星編)>
星を妹と近い存在として、親近感・守りたい気持ちを表現した事に関しては良い。
しかしながら、だからこそ星と亘の関係が進む為には妹とは違う「星」を明確に描かなければならない。
そうでないと、ユーザーとして納得がいかない。
特に亘には小枝子という、半身と呼んでも(それほど)語弊のない存在がいる。
その小枝子を押しぬけ、妹とも違う存在の「星」。
確かに出合い頭から熱烈に惹かれあうことはある。
それでも「妹」という存在を引き合いに出した以上、それで終わらせることは適当でない。
確かに星が妹とは「ありのまま」を示してくれる点で異なっているとは文章にある。
しかし、そこに至るまでの亘の思考が描かれていない。
惹かれあってからの過程は良いのだが、惹かれあうまでを丁寧にすべきであった。
まぁ、ライターの重点が関係をもった上での(小枝子も含め)3人の繋がりにあるとも言えますが、
全体的に丁寧な作りの分、勿体ないとの印象が拭えない。
<2部、小枝子√>
やはり過程が勿体ない。旧校舎での海水浴の前後の場面において。
せっかく「小枝子の本当の気持ち、亘を好きという気持ち」を待つと言ったのに、翌日には小枝子を求めてしまっている。
確かに、亘が瀕死で小枝子が再び亘に気持ちを集中させたことは描かれていた。
しかし、あの場面は基本的に亘の気持ちの再定義であって、小枝子は副次的・二次的に描かれている。
せめて小枝子視点を入れていれば……他の場面ではそこそこ入っていたのに・・・
よって、「小枝子の気持ち」が明示的にならないのに、先日の言動を亘は破ったことになる。
ここは、「二人は特別な存在だから」で終わらせるべきではなかった。
「背中合わせ」の関係、距離感は良かったのだが、ここは言葉を使って欲しかった場面。
良かった点。
モテモテ主人公は個別に入った場合、他の子の存在がネックになる。
その点、この作品は向き合う場を設けてくれたのは嬉しい。
特に昔から関係のあるこるんにはしっかり想いを告げさせている。
千鶴に関しては、亘との関係が希薄・日が浅い。
だから小枝子と千鶴の二人を主として向き合わせたのは納得がいく。
そして、こるんに関しては期間は空いたものの、昔からの仲である。
だからこそ、亘自身と向き合わせた。
こういったところはメーカー・ライターの姿勢として好感が持てる。
卯里に関しては奥手なので弱く扱うのは納得できますし。
小枝子√ラストは落着くとこに落着けたかと。
1部でも(涙線脆いくせに)泣く事はなかったのですが、すっきりした、清々しさがあるのが良いです。
ずば抜けた点には(おそらく)欠けるものの、総合的には満足できる、良作。
綺麗で丁寧で清々しい。海のように澄み渡る。
心が洗われる良い作品だと思います。