3章まで・・・つまらなさ:面白さ=8:2、それ以降・・・つまらなさ:面白さ=3:7。力作である事は間違いないし、考察の余地が多い点も評価に値する。しかし、無駄ではないのだが、丁寧すぎて必要以上に長く感じ、ダレた作品。
当たり障りのないところから。ネタバレ少なめ。
また、自分は「終ノ空」どころかケロQ、枕作品未プレイの者です。
まず、物凄く力の入った作品であることは確か。名作どうこうは置いておいて、力作です。
上で書いたように、話は長いのだが、無駄な水増しばかりとは感じなかった。
むしろ複数視点であり、且つ、各々のキャラの心情の変化を追う為にの丁寧さと捉えれば、充分納得のいく分量であった。
更に会話が(シナリオ重視の作品にしては殊に)多い。
基本的に会話で使われる言葉は分かり易いものであり(勿論、音無彩名をはじめとした、初見では理解し難い部分も少なくないが)、内容は掴み易くなっていた。
また、伏線の張り方、物語の収束のさせ方も悪くない。
他の方が言っているようにカタルシスを感じるほどではなかったですが。
「車輪の国、向日葵の少女」のように一発ドカンとくるタイプの作品ではないので、そこは好みの違いになりそうです。
BGMもなかなかの良曲揃い。「これは」と言えるものとなると「夜の向日葵」くらいですが。
グラフィックに関してはOHP通り。期待はずれの方は少ないかと思います。
キャラに関しては、感情表現が丁寧に描かれているため、感情移入しやすいかな。少なくとも行動原理は理解しやすいかと。
ストーリー全体としては、哲学的な話が多かったかな。電波よりも。
自分は哲学にも歴史にも文学にも造詣が深くないので、大層な事は言えませんが、噛み砕いて説明してるのでそれ程理解に苦しむ場面はなかったです。
一般教養、TV等で聞いたことあるような内容も多いですし。
演出面で言うと、もうちょっと全画面表示があっても良かったかな。
3~4行で小難しい話がつらつら続くのは読みにくい。
全画面表示での電波っぷりの表現は良かったですが。
声優は各キャラ違和感なし。CV佐山森(間宮卓司)さんは特に名演でした。
マイナス面を述べると、正直なところ会話多すぎでした。
自分は基本的にセリフを全て聴きたいというのがあるため、3章くらいまで耐えていたのですが、めんどくさくなりました。
じっくり取り組みたいという方には良いのでしょうが、自分は比較的意味の薄い日常を楽しめる程には合わなかったです。
まぁ、この点はセリフ飛ばせばほぼ問題ないですが、地の文より易しい・内容の薄い表現が続く点で、マイナスにもなりえます。
ぶっちゃけ、随所に散見された哲学的な内容とまではいかなくとも、より密度の濃い地の文が続いた方が良かったです。
一周終わったばかりで、理解が追い付いていない部分もあるかと思いますが、つらつら書いていきます。
ーーーーーーーーーネタバレやや多め(致命的なものは避けてます)ーーーーーーーーー
一言に「3章まで・・・つまらなさ:面白さ=8:2」と書きましたが、この比重の主要な原因はテンポの悪さ。
希実香、音無彩名が出てくる場面は集中できた。しかし、他がツマラナイ。
1章は由岐視点ー頭のいいキャラ視点ーは読んでて比較的面白いです。
とはいっても、鏡、司絡みで大した事ない日常が長く感じたなど、「つまらない」が強かった。
伏線張ってると分かる場面(ざくろ関連)はまだいいのですが。
2章は卓司視点で電波要素多め。
電波系の話が出てくる部分は興味を惹かれた。しかし、卓司の言葉は軽いですね。
カルト宗教ってこういうこういうものかと(笑
卓司が教室で演説始めた辺りからが特に酷い。
自分だけが到達した「真実」なるものを語り、「真実」足る「証拠」を創り上げ、自身の思考の「ぶれ」に気付かない。
彼が「常識に照らして」という場面がありますが、どんな「常識」なんでしょうね。
いや~、意志は強いんですが、盲信した小物っぷりがなんとも。
そんなこんなで、卓司にのめり込めなかったので、2章はまさに苦痛。
そんな2章において輝いているのが希実香、彩名の存在。
特に希実香は「華」として会話にテンポを、話にノリを与えてくれました。
それはそうと、電波っていうのは面白いですね。
基本的に電波な内容は「理解の外」にあるもので、どこか「認識の外」に似ているのでは、と。
逆に哲学部分は「理解の範疇」にあり、「頭の中」にある。
つまり理解できない個人からすれば電波は「外の世界」に属する。
・・・飛躍した考えですね(汗
けど(間違っていようと)こういう風に考えるのは楽しかったので、素材を与えてくれた点は高く評価してます。
閑話休題。
3章。ざくろ視点。
この章はイジメ描写が厚く、成程と感じる点も多くて良かったです。
happyの方は希実香がはっちゃけ、イジメッ子に逆襲するという心踊る展開であり本作全体を通して一番楽しかった話です。
爽快感が良かったです。
で、Badの方は、軽い鬱。のめり込めなかったっていうのが大きいですが、心苦しいことに違いはなく・・・
気になった点はざくろの叫び声ですね。力強い声は苦手なのか仕様なのか。
一番盛り上がるシーンで盛り上がりに欠けたのは・・・
あと、あの他校の娘たちはなんだったのでしょうね。
「終ノ空Ⅱ」の解釈ならば予定調和に収まると思いますが、如何せん店での会話内容が。
只の集団自殺者探しにしては整合性取りにくい話の展開だった。
はい、こんな感じで前半部終了。
目を見張る部分もありましたが、そこも良作の域を出ない。
故にマイナス面が引っ張って凡作以下とも言える。
2010年5月1日現在、データ数269に対しgive up数8。意外です。
投げておかしくない作品。後半が面白いと評判だからでしょうか。
では後半部分。
とはいっても、4章、皆守視点で大筋の話の流れが明らかとなり、淡々と進んだ感じなのでまとめて書きます。
伏線回収を小分けにしたのは好き嫌いの問題でしょうね。
自分は家族構成ネタで「成程」とは思えたのですが、「成程」レベルなんですよね。
期待値高すぎたんだろうなぁ。
そもそもミステリーが中心ではないので自分が悪いのでしょう。
羽咲は可愛いですし、収束に向かいテンポも出てきていたと思います。
しかし、のめり込めない。
視点変更で各々の感情が見れたり、「あのシーンはこういう伏線だったのか」と分かったりするのは良いのですが、
強く惹きつけるものに欠けるというか。
総じてレベルは高いが、特出した点に欠ける感覚でしょうか。
では、ラストに関して。
「向日葵の坂道」→「素晴らしき日々」→「終ノ空Ⅱ」の順で攻略したのですが、
「向日葵の坂道」には閉口しかけました。
嫌な感じのご都合主義になったな、と。納得できなくもないですが。
由岐の「幸福に生きよ!」のシーンは見どころあって良かったのですが。
(どうでもいいですが、SWAN SONGを思い出しました。安易に比較すべきではないですが、「幸福」に向かう姿としてはSWAN SONGが圧倒的な印象に残っていた点も、本作に没頭できなかった原因かもしれません。)
「素晴らしき日々」
こっちはより綺麗な形に収まったかと。
我々の持つ「常識的思考」の帰結として納得いく形なんじゃないでしょうか。
ーーーーーーーーーーーーーー以下、ネタバレ成分多めですーーーーーーーーーーーー
※グダグダしょうもない事書いてるので、無視するか温かい目で見てやって下さい。
そして問題の「終ノ空Ⅱ」(うろ覚え含むので適当なこといってるかもしれません。)
音無彩名の存在に解答が得られる。
確かに輪廻転生する上で、魂は一つ乃至は少数である方が合理的であるという考えも首肯できるものがある。
ざくろ達がスパイラルマタイを行おうとするあの場面、りルルに見立てて卓司がそのシーンを回想(?)する。
こうした描写からすると魂は一つ・少数という方がしっくりきます。
そう考えると、今ある世界は自分の世界と一致する。
一は全であり、全は一である。
随所に散りばめられたメッセ―ジとも一致するし、説明は楽になりそうです。
しかし、こういう風な世界認識もできるよ、くらいなものかと。
ぶっちゃけ、夢と同じだと。
夢の中では、夢見る主体が世界の創造者であり、「神」なる存在ですものね。
夢と現実の区別は(たしか)証明できないし、現実に影響されると考えても夢を見続けている可能性だってある。
その場合に「現実」などない。
こういう話は面白いもんですね。
で、「幸福に生きよ!」。命令系。+輪廻転生。
単純に一つの意識に支配されてるとかではないんでしょう。きっと。
しかし自分にはそれくらいしか浮かばない(汗
「幸福に生きよ!」がユーザー、引いてはあらゆる生命へのメッセージとしか受け取れない自分は読解不足なのでしょうね。
本作に出てきた哲学書から銀河鉄道の夜、本作に語られない名著を読めばまた違った考えが生まれてきそうな気もします。
・・・ってな感じにごちゃごちゃ考えず、素直に「幸福に生きよ!」で良いのかもしれませんね。
すべてを奪う死を目の前にして、シラノの最後の言葉はカッコイイよね
特にMon panache!って三音節を、空中に放り投げるように言って死ぬなんて……しびれるね
こういう心意気に……何も感じない人、こういう行動をイタイって片づけてしまう様な人……
そういうのがイタくない人って言うんなら、ボクはイタイ人間でいた方がマシだと思う