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violinsさんのましろ色シンフォニー -Love is Pure White-の長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-
ブランド
ぱれっと
得点
60
参照数
2010

一言コメント

ユーザーとしてゲームを、こと萌え・キャラゲーをやるにあたって求められるのは「熱中さ」だと思います。そしてクリエイタ―側はユーザーを物語に取り込んだらその世界から出さないような、熱が冷めないような作品を作って欲しい。プレイ中そういうことを無駄に考えてしまい、果ては「みう√」で「キレ」てしまった、そんな私の感想です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

成程、非常に心地よい雰囲気がほとんどぶれなく表現できている。

耳触りのよいBGM、万人受けしているつばす絵+優しい色使い、例外はあるものの基本穏やかなキャラ達+うるさ過ぎない声優さん方。
個別√に入ってもフェードアウトして2人だけの空間になっていない点、共通:個別=1:2ほどの割合。
まさに「初心者」に安心して勧められる作品だと感じられた。




こと萌え・キャラゲーに関しては「こまけぇことは(ry」と言って萌えられる人は勝ち組だと思っています。
一方、自分が楽しめたかと言うとそれ程でもない。
一言に書いたように、「熱中さ」を持てなかったから。「○○は俺の嫁」と言えるような「恋」が出来なかったから。
なまじ完成度が高いが飛び抜けた部分が少なく、終始「客観的に」(≒冷めた目で)プレイしてしまった。
それでも、作品自体に対しては好印象を抱いてプレイできた。
それなのに娯楽の範疇を越える「不快さ」を感じることになるなんて想像だにしていませんでした。

※娯楽の範囲"内"の不快さ、気持ち悪さはBlack Cyc作品など。ホラー・スプラッタ映画を見る時の気持ちだと思ってもらえれば。




ここから個別の話を。
点数の内訳で言えば、共通80・愛理75・桜乃60・アンジェ55・みう30 これで300/5=60点。


<共通部>80点

何が良いかと言うと作品全体で穏やかな雰囲気で包まれている点。
そしてサブキャラでこそ輝く2人(桜乃、アンジェ)がサブである点。
主人公新吾も単なるヘタレではなく好青年で不快感を感じにくい作りになっている。
だからこそアンジェ・紗凪(・ぱんにゃ、一部愛理)がややうるさすぎた感はある。
まあ、静かすぎると「睡眠導入剤」と言われたりするのだが。





<愛理>75点

総じて言えることだが、非常に丁寧な造り。逆に言えばもどかしい。
個人的に惹かれ合っていく部分が楽しめた一方、付き合ってからは多少冷めてしまった。
しかし胸焼けを起こすほどだから心の底では楽しめたのだろう。
クラスメイトが「お前ら付き合ってるから今になって学園の統合を続けたいんだろ」といった一部の描写に不快さを覚えたものの、シリアス少なめのイチャラブものとしての完成度は高い。

※追記:クラスメイトの件の安易さはみう√でも見られる。
ねこ部のポスターを作った翌日、生徒会が「無断で貼られた物だから焼却炉に」の件、これは「悪」を作りすぎ。普通ならねこ部に届けるか、ねこ部に許可を求めるのが普通。
別にこの場面は「悪」を作らなくても、部員を集めなくても良いというみうの心情を前面に出せばよいだけ。勿体ない。





<桜乃>60点

愛理√において。風呂に入った翌日、二人がドギマギしてる場面で。

>お兄ちゃんが変わっていってる。
>私、は。
>うん、今まで通り、お兄ちゃんの空気でいないと、だね


この一言が余りに素晴らしい。「空気」のような存在、それが桜乃の像であるべきだと感じた。
※もちろん、ここで言う「空気」は本編の文脈に沿った意味です。

それがどうだろう。個別√に入ったらうじうじしちゃう女の子になってしまっている。
高々クラスメイトの言葉に揺れ動かされるような、弱いキャラになってしまっている。
確かに恋をするとそれに翻弄されるのは分かる。しかしそれは程度問題。
うるさ過ぎず、穏やかで愛情・信頼に満ちている。
桜乃はまさに(BGMに表れている世界観に一致した)「ましろ色シンフォニー」を体現しているキャラだと思っていたが、個別√で魅力が減少。
キャラゲーとしてあるべき作品であるのに、シナリオに動かされた感が強かった。
作風にあっていたからこそ、期待はずれを感じざるを得ない。





<アンジェ>55点

ややうるさ過ぎる感が強いが、CVみるというキャスティングは見事。
そう、キャラの魅力は出ているのだが、「ヘッドドレシュ~~」云々の件など非常に子供向け。
こういう場面(=キャラの安易な低年齢化)は「熱中」できてる人には存分に楽しめるのだろうが、自分には駄目でしたね。
冷静さが強い時にこういう場面を見るとまさに興ざめ。
しかし、愛理同様シリアス少なめにした点は評価したい。アンジェに「惚れた」人には気持ち良い話だったのではないだろうか。








ここから愚痴り入ります。思いっきり感情的になります。嫌な人は戻ってください。

また、プレイ途中で投げたくなった部分で書きなぐったものを使っているので、「夢オチ」だと分かっていない状態で書いた部分があります。後にフォローを入れるので悪しからず。


<みう>30点

みう√と冠した、紗凪の為の物語。
紗凪が恋をし失恋して、そして道具として使われる、そんな成長と悲劇。


紗凪が好きだからというのもひとつの理由だが、紗凪を好きになった"理由"は、話が"紗凪中心"で進んだ面が大きい。
新吾がみうに恋をする場面が描かれていたか? 否。少なくとも紗凪の心情描写の方が多く尺を割かれている。
更に言えば新吾がみうを好きだというのは"(紗凪という)第3者の口を通して"語られる。
それほど紗凪に比重が置かれて物語は進んでいく。

みうとの告白場面まではかなり良かった。紗凪の苦しさが。紗凪の恋に翻弄される姿が。
それがどうだ。
(告白が唐突に過ぎるのは置いておくとしても)みうと付き合い始めて初Hしてからテストが終わるまで完全フェードアウト状態。
テスト明けに何とか愛理のフォローが入るものの、新吾は相変わらずみうにべったり。


確かに「溺れる」という面を強調したかったのだろうが、何でここまでエロに傾倒したのか。
それまで「恋」という側面を紗凪に任せて、みう・新吾の両者は「信頼・憧れ」を強く押し出し、(告白直前まで)明確な「恋心」というものを出してこなかった
そしてそこまでの流れは(浮いてる変態発言「妹のビラビラetc...」を除き)シリアス方向が強かった。
だからこそキャラに萌えるというより(紗凪の恋の)ストーリーを追う面が他の個別より強かった。


それにも拘らず、エロ連続で、「みうは独占欲がかなり強い」という側面を見せるために紗凪が信吾と関わる形で再登場。
で、紗凪の想いは完全に(黒)みうへの踏み台。道具。
新吾と向き合う場さえ与えられず、ただただみうの一面を引き立てるだけの存在。 *1
まさかこういう形で紗凪の不憫さに泣くとは思わなかった。
というか「キレ」た。もうアホかと。
感情移入されるだけさせといて叩き落とす。そんなの萌えゲーに求めてる訳ないだろ。
なまじ紗凪に感情移入していたため、こんなぞんざいな扱いをさせるとは思っていなかった。理不尽にしか思えなかった。
エロゲをやってここまで悪い意味の「不快さ」を感じたのは「そして明日の世界より――」以来。Give upしようと思ったほど。
(ま、某所でフルコンして感想投下しなきゃいけないので最後までやりましたが。)


*1 誇張気味で申し訳ない。
作中ではしっかり心の中で結論付けて前に進む姿勢が見られるので良しと言えば良し。
しかし、個人的な願望ではあるのだが、告白シーンが欲しかった。
思いの丈を新吾にぶつけて欲しかった。それでないならみうと向き合って欲しかった。
もっと心を曝け出して、玉砕して、その上で前に向かって欲しかった。
まあ、そんなこと(=みう・新吾を困らせる、多少なりともギクシャクさせること)をしなくても想いに区切りをつけた。
そんな紗凪も大好きです。




ここまでガーって書いてたんですが、結局夢オチでしたね。はぁ…
早合点したといえば早合点したこっちの問題。更に言えばこの後、紗凪が新吾に向き合う場もささやかながら用意されている。
桜乃との生活がなくなっていることに関してもわずかにフォローが入っている。但し、改善しようとはしていないが。



確かに早合点したこっち側の問題とも言える。言えるのだが。
こういう風に「不快さ」を感じたユーザーが少なくとも1人はいる。そこは知ってもらいたかった。


みうというキャラ自体は桜乃同様「ましろ色シンフォニー」という作風に非常に合っていると思っています。
ヒロインであることも妥当。
しかし、なぜ紗凪を全面に出してから一転してみうと付き合うのかが納得いかない。
紗凪√も欲しい? 違うだろ。なんであれが紗凪√じゃないのか、だろ。そんな風に思ってしまうんです。
「○○なんで攻略できないんだよ」と言った風にサブキャラに魅力あるのは別に良い。ただそのサブキャラ中心に話を進めるのはおかしいだろ。

冷静に見れれば良い出来ですが、感情がそれを許さないので30点です。最後にこんな思いをするとは思わなかったよ…