「インガノック」同様リズムの良いテキストが光る桜井作品。前作よりも一歩劣る感じが拭えないものの、ラストの流れはまさに心を洗い流してくれる名場面。そしてwebノベルで「――右手を、伸ばす。」と、インガノックとの共通性を高めたのも好印象。
青空が恋しくなる、そんな物語。
前作「赫炎のインガノック」より、キャラの魅力・BGM・エロシーン・(中毒性のある)名台詞などは一歩後退したのに対して、今作はOP,ED・ゲームパートは向上したと感じた。
また、ヒロインが主人公ということやロンドンが舞台ということもあって、ひどく少女マンガ風な作風になっている。
キャラの魅力に関してはさほど差はないとも言えるが、前作は複数視点がかなり活かされていたのに対して今作はそれが減少してるために感情移入しきれなかった。
確かにメアリに特化する点では良いのだが、他のメインキャラの魅力を発揮しきれなかったのではないか。
シャーリーは床に伏している以上大きく関われないのはいいが、ア―シェは蚊帳の外に置かれたままであったことと、”人間と機械の狭間にある”モランのその特性があと半歩足りなかった。
ア―シェは蚊帳の外だからこそ意味のある存在ではあるが、「守られる存在」に終始してしまっていた。彼女の性格を考えれば尾行のみならず更に行動できたはずだし、多少巻き込まれる場面があっても良かったのではないだろうか。
次にモラン。彼女にも深く関わるのだが、前作と比して今作で最も減少した面がエロシーン。
当然ながら実用性で言っているわけではなく、物語としての必要性・キャラ性を際立たせる手段としてのエロシーンがかなり弱くなっている。
「インガノック」に対してPOV「塗れば必要なし」が多く登録されているが、私は全く意見を異にしており、それは「インガノック」の方の感想を見てもらえれば判るかと思います。
モランはルアハと設定的にかなり類似性がありますね。
そしてともに「人間性」を認められている。
この「人間性」を描く上で感情の機微を、その発露であるエロシーンを如何に上手く見せるか。
その点はインガノックが素晴らしかったので期待していたのですが、期待には届かなかった。
問題はモランの人間か否かに対しての苦悩が少ない点(ここは設定なのでさほど重要視してないのだが)と、感情移入させる前にシーンを持ってきた点。
体験版に含まれるような序盤に描かれている時点で早すぎたと感じた。
とはいえ、メアリに嫉妬したりと随所で人間性を見せてくれたのは前作同様評価しています。
ゲームパートに関しては4~6回くらいでも良かったが、物語上しょうがないか。
「逃げること」「声を聞くこと」を組み込んだものであったし、遊べた感も良し。
確かに物語を読み進めることを阻害してる面はあるのだが。
良き青空を。