エリスがかわいいことは否定できない。序章のエリスは神がかってる。一章のエリスはただのサブキャラ。三章のエリスには名残が見える。四章のエリスは距離を感じさせる。五章のエリスは見てると絶望する。ドラマCDに関しては言いたいことがたくさんある。このゲーム、依存ヒロイン好きには諸刃の剣。
・エリスについて
依存ヒロイン好きにとって脱依存は絶望であり、概念の死であり、タチの悪い寝取られです。そこには結婚する娘を眺める父親の心境に似たようなものがあります。いつの間にこんなに立派に育って、と感慨深く思うより先に「お父さんのお嫁さんになる!」って言ってくれていたあの頃を思い出し刺すような淋しさに襲われます。
ルートに入らない場合エリスは更生し、一人立ちしていきます。
すなわち三章四章終章と愛娘の寝取られていく様を延々見せ付けられることになります。特に五章。すっかり逞しくなったエリス、負傷者の海のなか国境無き医師団ばりに奮闘するエリス、顔は汗と泥で汚れ話しかけても素っ気なく、多忙そうで、途中で患者に呼ばれ行ってしまうエリス、周囲から尊敬を集め自分の役割を見つけ、どこに行っても引っ張りだこのエリス、優先順位が変わったエリス、別れを惜しむような素振りも見せず、自分から話を切り上げ、忙しいからと去っていくエリス、家にカイムが来ていようと自分の睡眠時間を優先し、口を開けば負傷者の多い現況を憂いて、医者であるかのような言動を繰り返すエリス、これまでの人生を過去と呼び、大人びて、その過去を自分の中で整理し終わっているらしいエリス、最後には自分を買い戻しに来るエリス。
人格者カイムさんはそれを見てよかった、誇らしい、安心したなどとのたまい喜んでいらっしゃいます。ところがエリスを性的な視点で眺めている僕のような人間からするとそこには絶望しかないわけで、辛いわけで、話の展開とか頭に入ってこなくなるわけで、ルキウスが兄?ああ、そう、それでエリスまだ……?となるわけで、何がどうなったか思い出せませんが五章の出来は素晴らしいわけです。エリスの魅力を引き立ててます。五章のエリスに愛情表現されたら僕は興奮のあまり脚のヒザから下がちぎれて死にます。感想おしまい。以下、A社について。
・真夏、歯ブラシ、帰るべき場所
オーガストが持っていて、他のゲームブランドが持っていないものはただ一点心地よい空間作りだと思われます。夜明け前より瑠璃色なはどんなに文章が眠かろうとあの自宅の雰囲気はいいものでした。Fortune Arterialはどんなに会長が鬱陶しかろうとこの寮にはしばらく居たいなと思えました。大図書館の羊飼いもやや肩透かし感を覚えつつも部室の背景が映ると心安らぎました。穢翼のユースティアの場合は特別被災地区。しかし特別被災地区だけは途中で全部壊してしまいます。戦争させてみたり、崩落させてみたり、メルトを殺してみたり。心地よい空間作りという強みを逆手にとったアプローチで個人的には刺さります。キャラゲーという旗は間違いなくストーリーより高く揚がっていて、しかし時々キャラを殺すという、エリスを自立させるという、アイリスのフェラチオが無いという、A社だからこそこれ、という企画勝ちの印象があります。
また企画だけでなく読み物としても執拗に繰り返される自問自答、主人公の成長物語はプレイヤの人生に示唆を与えてくれるようなすばらしい内容でした。APPENDIX、サンダルを脱ぎ捨て始まるアイリスの素足コキに際して「衛生的にどうなの……?」とまず思ってしまった僕は暴走したエゴの愚かしさ、自身の至らなさを痛感させられました。それは遠い記憶、オーガストファンBOXにてほなみんの朝フェラに歓喜しながらも心の遠いところで「歯は磨いたのか……?」と思ってしまったあの頃とまるで変わってないじゃないかなにをやっていたんだと自分を見つめなおすきっかけを与えてくれたA社に感謝の思いで一杯です。
PS:エリスのss書いた『仔羊のショートロイン網脂包み焼き』
http://d.hatena.ne.jp/VICINITYOFOBSCENITY/20131105/aiyoku