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vicinityofobscenityさんの永遠の終わりにの長文感想

ユーザー
vicinityofobscenity
ゲーム
永遠の終わりに
ブランド
たまソフト
得点
89
参照数
849

一言コメント

父性愛を描いた話。ハードボイルド。ロマンティック。基本的に涼ルートだけやればいいかな。余裕があったらちびっ子ルートのスタッフロール前もいい感じ。永遠とは結局なんだったのか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作者曰くここでの永遠とはずっと続いてほしいもの、大切にしたいもの。
大切にするとは、色々あるけどこの主人公の頭の中ではそれが自分から切り離されても思いを変えないこと。
自分の利害よりも優先順位を高くすること。我欲を捨てること。見返りを求めないこと。
すなわち父性愛、ハードボイルド、ロマンチストの夢、偽善。
話はこれを使った最小単位の構成で、
(1)なにかを大切に思う
(2)それと自分の存在とが相容れない感じになる
(3)自己犠牲(自己満足)
永遠はあくまで個人が個人的に愛しているもののたとえですが、その
永遠の終わりに(することがあるとしたら自己犠牲でしょう)
というタイトルです。
犠牲の結果どうなるか、というとこが共通ルートです。
そんなわけで、構図は単純なので日常のやりとりに注目してほしいです。そこが売りなので。涼ルートの。プロっぽいうまい文章です。
ちびっ子ルートも結構いいシーンがあります。エピローグ、篠村桃「ゆーやけこやけでひがくれてー、やーまのおてらのかねがなるー」からの流れがいい感じです。やりたいことが伝わってきます。熱意も伝わってきます。欠点はただ眠いということです。
メガネ姉ルートは富士山が爆発したりしてなにもやること無いときにすれば楽しめるんじゃないかと思います。
共通ルートが一番眠いというのがハードルをあげてますが涼ルートまで耐えてみることをおすすめします。
もう少し永遠について引っ張ってみると、これは憧憬の三分類(感情移入して自己と同一化、自己と比較して相対偉人化、自己と切り離して神格視)における三番目、神格化です。
作者曰く、ものごとを本当に大切にしたかったら我欲から完全に切り離さなければいけないらしいです。ストイックですね。
自分が存在しない視点で見つめるべきだそうです。言い換えると、存在しない誰かの視点として自分がいます。
こいつが、冒頭から偽主人公が出てくる理由です。
それ故に怨霊と言って言えないこともないのが哀れなところ。みんなにも忘れられてしまうし。
頑張れ敬三。じゃなかった。えーとケイなんとか。