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uziteru3104さんのid [イド] -Rebirth Session-の長文感想

ユーザー
uziteru3104
ゲーム
id [イド] -Rebirth Session-
ブランド
エンターグラム
得点
55
参照数
683

一言コメント

つまらない。。。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

短いし、推理物ではないような感想を抱く作品。
個人的な直観的にしたがえば、シークレットゲームに近い作品かと思われる。それでもなおシークレットゲームには遠く及ばないであろう。
よって、本作品は探偵物というより自然状態を描いているのだと主張されればまだ理解はできる。推理要素を推しすぎたためのミスリード(があったとは思わないが)そのために読者の誤読もありえる。いくつかのレビューの中には、「『SWAN SONG』に近い思われる」という鋭い指摘をした批評家が既にいることは予め述べておく。

では仮に本作品の重要なことがミステリーではなく自然状態といった哲学的描写にあるとするならば、賢明な読者がなぜ誤読をしたのだろうか?つまり、ミステリー物であるという先入観に固執し続けた理由は何か、ということである。その理由として、既にあげられた推理要素を推しすぎた面も確かにあると考えられる。

ここではそういった外部要因に求めるのではなく、ゲームそのものに理由を求めたいと思う。
まず、哲学的描写に努めるならば狂人の数が少ない、あるいは理性的な人間が多すぎるという点。ルート毎に狂気の沙汰になる人間が変わらないこと、別の言い方をするならばどのルートを辿っても死ぬ人間があまり変わらないこと。ゆえに私たちは結論(あるいは真理)が1つであると思い込み、推理物であるという先入観を外すことが困難になったものであると考えられる。

ところで、この作品には指摘したミスリード上の問題以外にも伏線が回収されていない、結末がおかしい、といった点が既に批評家から挙げられている。たとえば、冒頭の猫の世話を誰に依頼したのか、など消化不良がある。またvita版のみで語られる裏の話など、綻びを無理矢理に紡ごうとしている感じがして、クリエイターの未熟さを所々に感じさせるものがある。修正すべき箇所を列挙すれば枚挙に暇がないが、気になる点は(とりわけvita版追加ルートに多いが)「さいご」がなぜ平仮名表記なのであるかということである。深い意味を推測してしまう。

まとめると、推理物なのか哲学的なのかどちらなのかいまいちはっきりしない、中途半端な印象を抱かざるをえない作品であった。