恋愛アドベンチャーとして限りなく正解に近い傑作
シナリオ:63/70
「パッケージにも描かれたメインヒロインである主人公の恋人から別れを告げられる」という前代未聞の衝撃のシーンから始まる本作は、それにまつわる重い展開が続く。一方「なぜヒロインは突然主人公を振ったのか」という謎を軸に物語を展開するミステリ的な面もあり、上手くプレイヤーを引き込んでいるように感じた。
また、今作ではこれまでのシリーズ作において敢えて避けられてきた萌え要素がキャラ造形にに導入されている。これまでシリーズ3作品を作り試行錯誤を繰り返した中で結構な挑戦であったことは想像に難くないが、その策は全く空回りすることなく、良質なシナリオの完成に大きく寄与している。
例えば攻略可能ヒロインの一人である鷺沢縁はコテコテの妹キャラであるが、彼女のルートではそんな雰囲気に本来似合わない、作中で最もシリアスでサスペンス性の高いシナリオが展開される。演者の名演も相まって、そのギャップによってプレイヤーをゲームに惹きこむこと間違いなしの名シナリオになっている。
ボリューム面でも良質である。攻略可能ヒロインは5人であり数が比較的絞られているが、各ヒロインの魅力やプレイヤーを揺さぶるための展開を描くにあたって十二番の分量が用意されており、重いシナリオであることも相まって読み応えは非常に高い。
総じて、恋愛アドベンチャーとして非常に良質なシナリオであった。特に各ヒロインのシナリオの面白さのアベレージの高さはシリーズの中でも屈指と言える。
グラフィック面:20/20
キャラデザも立ち絵もスチルも荒いところは全くなく良質なものが揃っていると感じだが、特に目を引いたのは立ち絵の口パクに加え寒い場所の場面で息が白くなる演出が含まれることである。冬という季節感や臨場感の演出に大きく寄与していると感じた。冬ゲーはかくあるべきではないか。
UI:10/10
特段言うことはない。いつものKID。シンプルイズベスト。
総評
これまでやってきたメモオフシリーズの中でも一番面白く、一番好きであると胸を張って言える作品である。Steamでの移植版配信も間も無く始まるので、是非触れてみて欲しい。