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uohageyoutubeさんのROBOTICS;NOTES DaSHの長文感想

ユーザー
uohageyoutube
ゲーム
ROBOTICS;NOTES DaSH
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
83
参照数
69

一言コメント

期待し過ぎるな、されど侮るな

長文感想

シナリオ:57/70 グラフィック・演出等:18/20 UI:9/10

シナリオ:57/70
本作は「ROBOTICS;NOTES」の続編と名乗られているが、実際はファンディスク的な性格を帯びており「続編」という言葉に期待し過ぎると肩透かしを喰らうことがあるかもしれない。しかし個人的には原作における未回収の伏線やそのまま続投したキャラクター達の方に意識が回っていたのでその点はそこまで気にならなかった。
各個別ルートが物語の本筋に組み込まれた上時系列の設定もあり事実上攻略順が固定されているため非難を浴びることもあった原作とは異なり、今回は個別ルートはパラレルの設定となっている。なお、原作同様全ていわゆる恋愛オチではないのでそこは留意を。またヒロイン以外にも男性キャラの日高昴の個別ルートが存在している。
個人的にはこのルートを最も必要としていた上、満足のいく内容でもあった。原作では彼周りの問題を半ばほったらかしにする形で終わってしまうためシナリオの評価を下げる一因となっており、続編が出た場合のフォローの必要性を感じていた。その要望をこのゲームはほぼ完璧な形で実現してくれたので、ことこの点は高く評価したい。
その他の個別ルートも変わり映えのない内容なんてことは全くなく、どのルートもキャラクターの魅力を存分に堪能することができた。最終盤も多くのファンが望んでいるであろう展開を公式がはかっていたかのようなもので、満足度は高い。

ただやはり主人公二人の扱いの差は問題点と言えるだろう。
八汐海翔は前作を経て精神的に大幅に成長しており、その影響か彼の心理描写は物足りないものになってしまっている。そこに他作品のキャラ、それもだいぶ濃厚なヤツ、もとい橋田至(以降ダル)を新しく主人公ポジションとして持ってきてしまうとなると賛否が割れても仕方ないように感じた。
しかしダルも持ち前の濃いキャラクター性がゲームを読み進める楽しさを大いに引き立てていると感じており、また終盤には直接登場はしないもののダルの周辺の人物が物語に大きく関わってくる。Steins;Gateもプレイした人なら思わず嬉しく感じてしまうのではないだろうか。個人的にはここは素直に評価すべきだと感じている。

グラフィック・演出等:18/20
前作からの進歩を垣間見ることができる。正式にハードの世代が移行したためか、本作向けに作り直された3Dモデルは粗さを感じさせない高い出来栄えになっており、モーションの不足も特には認められず、総じて飛び抜けてはないが貶す点はない。スチルの質も前作に引き続き総じて非常に高い。
また背景画が大幅に追加された点も特筆すべきだろう。本作では前作ではあまり取り上げられなかった種子島最大の市街地が存在する西之表市が大きく取り上げられており、その影響でそちらがモデルとなった背景画が大量に追加されている。

UI:9/10
前作とは分岐に使用する選択肢のシステムが異なっており、その点に関するフォローが少々少ないように感じた。しかし分岐システムのわかりやすさは前作と比較して大幅に向上しており、個人的には褒めるべきポイントであると感じている。その他特に低評価する点はない。

総評
続編という属性を期待し過ぎると肩透かしを喰らうことは間違い無いが、消化不良に終わった前作をきちんとフォローして作品の魅力を引き出せている立派な続編兼ファンディスクであると感じた作品だった。「Steins;Gate」も「Robotics;Notes」も両方プレイした欲張りなファンなら、当然遊ぶべき一作である。