シリーズの集大成にして最高傑作
シナリオ:68/70
メモリーズオフシリーズ・最後のタイトルとして開発された本作は、退路を断ち過去作の試行錯誤全てを活用した上でどれを取ってもシリーズ随一と言えるほどのハイクオリティなシナリオが仕上がっている。
ボリュームはシリーズでも最大級である。攻略可能ヒロインが7人用意されている「想い出にかわる君」や、そもそも公式からプレイ時間35時間級のシナリオボリュームが宣伝されていた「ゆびきりの記憶」のボリュームを超え、本作は40時間級のボリュームのシナリオが用意されている。
もちろんシナリオの量だけではない。展開面のテンポ、ミステリー/サスペンス面での伏線などの構成、台詞回しやテキストのセンス、キャラクターの機微の描写の丁寧さに至るまで、シナリオに関わる全ての分野でシリーズトップレベルのクオリティを誇っている。
展開面に関しては過去作のオマージュと思われる展開を多く含んでいる他、そのような場面を先の展開や伏線に関わるミスリードとして用意している・あるいは不評だった展開を改善して盛り込んでいるとおぼしき場面も多く含んでおり、シリーズ作品をやっていればいるほど面白さは増していく。
また伏線構成などサスペンス・ミステリーにかかわる分野の構成も実に見事であった。あるトリックが仕掛けられているのだが、メモオフに限らず往年の旧KID作品に触れていた人であればそのトリックの内容、そしてクオリティにはクリアしてから驚かされること間違いなしである。
結論として。ただでさえポテンシャルの高いシナリオであるだけでなく、メモリーズオフシリーズ過去作を踏まえた上でゲームに臨むことで、このシナリオはギャルゲー史歴代有数の名シナリオに化ける。
グラフィック:19/20
立ち絵・スチルともにシリーズトップレベルのクオリティ。歴代のキャラクターを担当したイラストレーター含む7人にも及ぶキャラデザ担当絵師の構成で歴代キャラ含む非常に多くのキャラクターの立ち絵が用意されたが、全キャラクターを並べてみても違和感は殆どない。
冬ゲーであることを踏まえたスチルの力の入りようも感心する。特に塗りに関してはシリーズではずば抜けた質と評価できる。
UI:9/10
UI周りは時代を考えるとだいぶシンプル寄りな作りではあるが、その真髄は選択肢システムにある。
通常の選択肢分岐に加えて導入されている本作独自の選択肢システム「R.A.I.N.s」は極めて短い制限時間付きで『切り捨てる』方を選ぶという特徴的なシステムである。「選択をして、必ず片方を選び取らなければならない時がある」という、メモオフシリーズでも度々取り上げられてきた主張を象徴するシステムであり、シナリオの緊張感の醸成に何役も買っている。
BGM +2
本作のBGMはシリーズでも指折りの質を誇っている。ヒロインのテーマ曲から過去作BGMのアレンジに至るまで隙がない。劇伴作曲家阿保剛の真髄を見ることができる。
総評
最高傑作。胸を張ってそう言える。
これを見たなら今すぐメモオフを1stから遊んで欲しい。