蓮菜ルートで泣いた
・総評
個人的に(良い意味での)B級ラブコメとして大いに楽しめた作品なので、本作については基本的に肯定派。
その上で気になる部分はキツめの言葉も交えて忌憚のない意見を述べたい。
歴代ASa Project作品と比べると「中の上」。
『恋愛、借りちゃいました』『サンカク恋愛』『アッチむいて恋』『HimeのちHoney』よりは面白かった。
『かりぐらし恋愛』『プラマイウォーズ』『ひとつ飛ばし恋愛』『恋愛0キロメートル』には劣る。
ヒロインの魅力は上々。楽しめないエロゲは大抵「攻略したいヒロインが少ない(もしくは居ない)」けど、
この作品ではそんなことはなく、サブキャラも含めて全員攻略したくなるヒロイン達だった。
ギャグのキレは鈍くなってる気がするけど、他メーカーと比べれば十分で周回プレイに耐えうる面白さ。
実際、クリア後の今も周回プレイ中。「今後もASa Projectを応援したい」と思わせるには十分な出来。
・特徴
ヒロイン同士の舌戦は楽しめたけど、あまりにも自然だったのでプレイ中は特に意識しなかった。
そういうキャッチコピーの作品であることを失念していた。
ヒロインや良徳視点のモノローグが度々入る。
ヒロインの本音や主人公への気持ちが分かりやすいし、視野が広がるので今後も積極的に採用して欲しい。
プレイ画面からすぐ登録出来るボイス登録はとても便利。
反面、ボイス鑑賞画面に行くのが若干面倒。プレイ画面から鑑賞出来る様にして欲しかった。
セーブデータを削除したい時は、「データ削除」にチェックを入れてから該当データを選択。
チェックを入れてない時はセーブデータを消せないので、誤ってデータを削除しにくい親切設計。
どの個別ルートでも終盤までヒロイン達が登場して共通ルートに近い雰囲気が残っているので、
全編通して楽しめた。やっぱりアサプロ作品は良いね。
・気になった所
①主人公と良徳がクラスの女子から相手にされないという設定が解せない。疎まれるほど理不尽なキャラではない。
そもそも具体的なモブ女子との会話は皆無なので、「ちょっと距離を置かれている」くらいで十分だったと思う。
②主人公の本音が分かりにくい。人間味がない。
主人公視点でプレイしているのにヒロインへの好意や本音があまり伝わってこない。
そのくせ、初恋を過剰に引きずっていたのが謎。
③ストーリーを端的に表すと「純愛もどき」「ナイーブ主人公の拗らせ」
「真面目ぶった痴情のもつれ」「独りよがり恋愛」「不毛なメロドラマ」。
(体験版部分で)意味深な台詞を連発したり含みをもたせた割に、その後に大した種明かしは無し。
幼馴染や元カノに関するトラウマ級の事件でもあるかと思いきやそんなことは無かった。
ただ主人公がナイーブで次の恋に踏み込めなかっただけ。
(休業中のメンバーあたりが謎を解く鍵になるかと思ったけど無関係だったし、その辺は全く掘り下げずに終わった)
「(初恋や初カノジョを過剰に引きずった)傷心状態のモテモテ主人公」
に違和感を感じる人もいるだろうし、茶番にしか思えないかもしれない。
「そういう鬱陶しささえもギャグとして許容出来る」という人のみが今作を楽しめるのかも。
・個別ルートの面白さ
1位 蓮菜→作中最大のダークホース。エモい。
2位 由奈→真ヒロインと結ばれた安心感がある。掛け合いも息ピッタリ。
3位 汐音→良い意味で軽い。メイドの蒼との掛け合いが楽しい。
4位 育代→お約束を踏まえた展開。短すぎること以外は文句なし。
5位乃々香→「寂しさに耐えかねて仕方なく妹を選んだ感」が強くて残念。
6位 まり→カタルシスに欠ける。良くも悪くも共通ルート。
・攻略順
蓮菜→由奈→乃々香→委員長→まり→会長
満足度ダントツ1位の蓮菜ルートを最初にやったのは失敗だった。
まさかあんなに充実しているとは……。トゥルールートと呼んでもいいかも。
・登場キャラと個別ルートについて
①主人公
「ポジティブサイコパスとして定評があるが、実はそれを演じている」という設定。
(良くも悪くも)元々考え方がおかしい所があるので、「サイコパス設定が全く嘘」というわけでもない。
サイコパスというよりナイーブな拗らせ系。
新手の難聴系もしくはただのテンプレ難聴系。いずれにしても本質は同じ。
過去の恋愛で傷心。故に軽薄キャラを装っている。
傷心といっても原因は大したことではないし、周りに彼を心配し慕うヒロインがいるので、
主人公にそこまで同情・感情移入は出来ない。
加えて、本音や欲が見えにくいし、ツッコミのキレも鈍いので、主人公にそぐわないタイプかも。
バカゲーの主人公には「欲」が大事なのだとしみじみ感じた。
(『プラマイウォーズ』の主人公なんて、真面目設定のくせにあんなにムッツリだったのに(笑))
若干フォローすると、
全ての悲劇の始まりは「母親が亡くなったこと」「その後父親がおかしくなったこと」なので
それさえなければ主人公のメンタルはもう少し安定していたのかも。
(でも『恋愛0キロメートル』は主人公もヒロインも片親いないのに皆メンタル普通だったな)
ちなみに、作中でヒロインを殴ることは全くない。ヒロイン達が勝手なイメージを冗談半分で言ってるだけ。
②まり
幼馴染ヒロイン。主人公のトラウマの原因1。とはいえ、これを彼女の責任にするのはおかしい。
幼少時主人公と相思相愛の仲だったが、引っ越しで離れ離れになってしまった。
その直前、主人公に対して彼女が「自分を忘れてもいい」と気遣ったのが裏目に出た。それだけ。
てっきり主人公が初恋を引きずるのは、彼女が何か酷いことをやらかしたせいかと思いきや、そんなことは無かった。
主人公が大人げないだけ。
それは別として、全ヒロインの中で魅力は最下位。
普段の言動がくどくてナチュラルに空気を読まない(読めない)。サイコパスは主人公ではなくこのキャラなのでは?
しかも主人公と同居しているので、共通・個別ルート問わず終盤まで登場する。
また、親友の良徳を毛嫌いしてヘイト発言が多いせいで、より好感度を下げている。
個人的にはギリギリ許容出来るが、このキャラのせいでプレイを断念する人もいるだろう。
個別ルートも満足度が低い。仮にも初恋相手なのに「主人公とくっついて良かった」という感慨が全然湧かない。
初恋が実った充実感が感じられない。台詞やモノローグで好意を示すことはあるけど、はっきり述べると嘘くさい。
共通ルート同様の賑やかさはあるが、それなら攻略ヒロインとしての個別ルートでなくても良い気がする。
個別ルート後も、2人の関係にしこりが残っている点も残念。
主人公は「まだ許してない」とか大人げないことをほざくし、
まりも「悪かったと思うけど、なんでもかんでも私のせいにするのは良くない」と抗弁している。
繰り返しになるが、これに関しては主人公が大人げないだけ。
もしも、「幼少時の別れの際、決定的にすれ違ってしまった原因が判明」
→「当時のお互いの心境を話し合うことで和解」という展開があったらカタルシスが生まれてすっきりしただろう。
・UI
『かりぐらし恋愛』の時みたいに、ロード画面にソート機能(並び替え)が欲しかった。
新機能のボイス鑑賞画面にも同じことが言える。今後は是非実装して欲しい。
・キャスティング
発売前、男キャラの声優を除いてほぼ一新されたキャスティングを見て驚いたし不安にもなったが杞憂だった。
蓋を開けてみればどのキャラの演技も、レギュラー声優不在の喪失感を埋めるのに十分な満足感があった。
特に、真ヒロインである由奈役の小鳥居夕花さんが最高。
『ノラとと』のパトリシアが大好きなので、発売前キャスト一覧でこの名前を目にした時は嬉し過ぎて小躍りした。
華があり且つ愛らしい声質は予想以上に役にハマっていた。
あと、今作で初めて知った声優、委員長役の猫村ゆきさんの声質を気に入った。
叫んだ時に声が少し割れて倍音のあるハスキーな声になる所が好き。今後もチェックしていきたい。
今作に参加しなかったアサプロレギュラー声優(遠野そよぎさん、春河あかりさん、五行なずなさん等)は
次回作以降で再登用して欲しい。毎回でなくてもいいので。
また、前作参加の水野七海さん(泉ちなつ役)を是非登用して欲しい。実は今作に参加するのでは?と目論んでいた。
・その他余談
①特典CDが普通にリッピング出来なかったのでコピー&ペーストした。普段こんなことは無い。
②シナリオライターによると、製作期間1年未満だったらしい。
前前作・前作・前作ファンディスク2枚もこの人のシナリオなのに、よくこんな短期間に新作が出たな……。
https://twitter.com/youka_nanoka/status/1322192955944312833
③日本語として違和感を感じる部分が散在するけれど、上記②が理由だと思われるので大目に見て欲しい。