テキスト自体は凡庸だが易しく読みやすくはある。シーンのインパクトを重視し、先の展開が気になる様に仕向けて読者を牽引するタイプ。この手合いは扱いを間違うと変に安っぽくなるのだが…
…体験版プレイ時に感じた懸案通り、結局その安さが払拭されることはなかった。
しかし拙いながらも終盤はかなり筆に魂が込められていて、読者のハートにズンと響くものがある。
陶也役の役者の好演も光る。
演出面については…まぁこんなものだろう。
ギャグは総じて昭和臭い。
私ではネタの分からないものも沢山。
サブヒロインそれぞれに人生があり、葛藤があり、後悔がある。
彼女達に寄り添うことでそのケーススタディを得た主人公は
記憶をリセットされながらも、僅かに残った想いの残滓から徐々に成長を果たし
やがてこの世界の人倫的過ちに気づいてそれを正そうとする。
この点において本作はイベントの積み重ね、情報の蓄積にちゃんと『意味』があった。
(いや、これが出来てないエロゲは案外多いのですよ。ここは褒めるところ)
一方で、管理者であるはずの主人公が1プレイヤーに貶められた経緯の描写不足や
主人公程の経験を得なかったはずの入莉が何故か目覚しい成長を果たしている点等
作りの粗雑さも随分と際立つ。
少し考察しておくと、最終ルートの入莉の情緒安定化は
成長故というより、カサンドラとの邂逅に因るところが大きく思われる。
つまり彼女の人格形成に本当に必要だったのは、陶也が故意に排した"母性"だったのではないかと。
織塚はイベント、立ち位置共に優遇されすぎw
あそこまでやるなら、もういっそルートヒロインに昇格させてしまえば良かったのに…。