本編の持ち味を損なわず、その内容を補完し面白さを更に加速させ堂々の完結に至る。ファンディスクというよりむしろアペンドディスクとして第1級の快作
主人公は様々な世界の分岐を夢に見る
ある時は本編では攻略できないサブキャラとの恋愛模様
ある時は本編ヒロインENDのエピローグ
ある時は気のおけない仲間達との他愛ない日常風景
閉じた世界
泡沫の夢
先に見える絶望に足掻き、疲弊する主人公
ラスボスとの対峙
明かされる舞台背景
そして彼はこの世界に終焉を与え、現実へと立ち返って行く
未確定であるが故に最良の可能性を含ませて、未来に希望を持たせる形で話は収束する
…ん?
そういえば5年くらい前に、これとよく似たような構成のFDがあったような…
前作のスマッシュヒットを受けて製作された待望のファンディスク
期待に違わぬ出来に大いに満足した
過去のタイトルへの批判を受けてなのか、今作のテキストはこれまでに無くとても易しくなった
・希望するチャプターへのジャンプが容易
・各ルート読了時に未読チャプター数をわざわざアナウンス
・シナリオセレクト画面でも既読or未読箇所をビジュアル表示
…と、快適なプレイアビリティ構築は毎度のことながら流石である
大筋は本編未攻略キャラの補完から、最終幕で主人公にして最強ヒロイン(?)たる智の成長物語に繋がる形だが
紆余曲折を経て悟った自らの想いを熱く語るシーンはなかなかの好漢ぶり
(伊代ばりの)若干の説教臭さはご愛嬌
また今回ボイスが付加されたことで、彼の瑞々しさには増々拍車が掛かった
だが終盤クライマックスにはメッセージを過多に詰め込みすぎた印象
ライター氏の情熱は理解するが、あそこは論旨を絞って1本筋を通した方が
もっとすっきりして読みやすくなったと思う
現実世界ではどう足掻いても救えない惠、真耶との決着のつけ方はあの形がベストだろうか
姉を守れなかったと、それを忘れないと声に嗚咽を混じらせる下りに思わずもらい泣き
記憶を喪失するとしても、せめて彼女らがあの経緯で救われたと信じたい
ところで蔵内蘭なのだが
真耶のアバターの様に振舞う箇所もあり、独立した一人の人間としても存在しており
かといって出番の少なさを鑑みるに重要度の低い死にキャラの呈もあり
るいとの縁を設定されつつも2者の絡みはほとんど無く
何の為に彼女を配したのか正直制作側の意図が読めない
あるいは、本来はもっと出場枠のあったところが大人の事情で尺を削られ宙ぶらりんになった、というところか?
以下余談
エンドロールに、企画応募者の面々のHNが多数列挙されるのですが
その中に当サイトレビュアー常連さんのお名前が…
ひょっとするとご当人なのかもしれませんね