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ubuさんのひまわり -Pebble in the Sky-の長文感想

ユーザー
ubu
ゲーム
ひまわり -Pebble in the Sky-
ブランド
FrontWing
得点
75
参照数
407

一言コメント

サイドストーリーがいかにも同人ゲームな雰囲気で良い。本編のほうはキャラが合わず……ってのもあるけど、中盤あたりは引っ掻き回し過ぎて物語としては相当微妙に思える。いろいろ落ち着いた終盤は好きだけど、このゲームが評価されてるのはそこじゃないっていう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

”記憶が定義する個人に拘る人間 vs 記憶をつなげて種としての存続を目指すルナウイルス(の中の記憶)”
設定的にはかなり好み……なはずなんだけど。
なんか本編だけだとあんまりシリアス感が無い。
合わなかったと言えばそれまでなんだけど、それにしたってキャラが。というよりアクアがね。
ちょっと悲劇のヒロイン気取りすぎじゃないの?って。
一度そう思っちゃうとなんかもう全部が茶番っぽく、ご都合主義っぽく見えてしまった。

やたらと上げて落とすのを繰り返す展開がそれに拍車をかける。
アリエスの赤目&「許さないですよ」とか、大吾がアクアを「明香里」って呼んだりとか。
なんかいい感じに終わりそうだな~ってところで、一言で状況をひっくり返す。
得意なんだろうし実際すごいなと感じる場面もあったんだけど、ちょっと多用しすぎじゃないかって気もする。
何度もやられるとさすがに陳腐に思えてくるし。
本編を冗長に感じたのも、日常シーンの退屈さよりこっちに原因があるのかもしれない。

ただ「こもれび」&「かげろう」では雰囲気ががらっと変わって、終始シリアスな感じに。
こうなるといかにもなSF設定が活きてくる。
アリス症候群とか神の入れ物とか、コテコテ過ぎるけど、でもたまんない。
本編では感じられなった宗一朗のヤバさとか、仄めかす程度だったルナウイルス(の中の記憶?)の覚醒なんかも。
SFとしては間違いなくこっちのが面白い。

そして最後に解放されるキーワードの縦読み。
 しぬ た巣けて西にはて気が やっの名は
これ、結構怖かった。わざとらしく改行して、嫌でも気づかせようとしてくるあたりが性格悪い。

ここまでくるともうエロゲっぽさ(?)みたいなものは全然なくなっちゃうんだけど。
まあでも面白いしこれはこれでいいじゃないですかと。
そう感じさせるだけの雰囲気はあった。
初見時はサービス程度にしか思えなかったラストの秋桜のセリフなんかも、これらを読んだ後だとかなり面白く思えてくる。
用語集が誰目線なのかとか、他にもいろいろ気になる部分もあって、散々退屈だと感じておきながらもう一度本編もやってみるかって気分になっちゃうあたり、我ながらちょろいなとも思うけども。
まあでもそのくらい面白かったです。おまけシナリオは。

本編の中では、明香シナリオが一番好み。
ちょっと退廃的というか、ポジティブ過ぎない感じが心地よい。
ミサイルで家ぶっ壊して全部無かったことにしちゃうのはアレだけど。

まあでも内容的には確かに消化試合みたいなところはある。
過去編で明香と陽一の年齢がずれてたのとか、普通にミスかと思ってたし。

普通に考えて、ここまででヘイトが溜まりまくっているであろう明をフォローするためのシナリオなんだろうけども。
薄っぺらい悪役だって言われないための。
でもこれはこれで逆に記号的なような気もする。”不良は実は義理に厚い”的な。