他人の悪意とか不慮の事故で……っていう流れではなく、ちょっとした生きづらさから逃れようと、目を逸らそうとしたせいで逆に追い込まれていっちゃう感じがリアル。結局全部自己責任でしかないんだろうけど、でも現実で自分たちが感じている不幸なんて実際そんなものだとも思うし。だからまあこんなあっさり解決しちゃっていいのか? って結末も、それはそれでリアル。気の持ちようで世界は変わるのだ。現実じゃそう簡単にはいかないってのも事実だろうけどね。
ねこねこソフトの過去作は一つもプレイしたことがなかったけど、机に突っ伏して寝たふりしてるCGに惹かれて購入。
なんで15周年のほうはノータッチ。
買った理由がそんなんだから、すみれシナリオに期待してたんだけど、明シナリオが思ったより重要で、というかどっちかっていうと明のほうがメインヒロインじゃんって感じだった。
てか一本道なのよね、そこにまず驚いた。
だからどうしても最初にやることになるすみれシナリオには前座感がある。
内容的には単体で見てもめちゃくちゃいいと思うんですけどね。
ぼっち描写が秀逸なんすよ。
いじめられっこじゃなくてぼっち。
こっちのほうがくるものがあるんですよね。個人的には。
打ち解けてからのすみれちゃんは、普通にヒロインとしてめちゃくちゃ可愛いし。水着買いにいくシーンとかたまらん。
すみれちゃんと表面的に付き合おうとしたり、肝心なときに何も言えなかったりする主人公には、人によっちゃは不快かもしれないけど、でもまあこういうほうがリアル。エロゲなんてやってる人間からしたら特に。
そんな不器用な二人が、ネット・リアルを通して打ち解けていく前半はニヤニヤしながら見れたし、終盤も何が起きるわけでもなく、開き直って関係性が戻るっていうのも、要は気の持ちようなんだぜ? って感じですごくいい。
劇的な事なんて無くても、見方一つで世界は変わるんだと。
その後普通にクラスメイトと打ち解けてたのはさすがにびっくりしたけども。
「意外と面白い人だったんだね~うふふ」って感じなんだろうか。
雛姫のシナリオに関しては、主人公が別人過ぎて論外。
「気を使って話しかけられるよりも無視してくれたほうが気が楽、人と関わりを持っても別れが辛くなるだけ」ってのはわかるけども。
そのわりにあのうざったい主人公になびくのは謎だった。
相変わらずすみれちゃんはとんでもなく可愛かったけども。
でまあ明ですよ。
同じ寝たふりでも、こっちは学校行かなくなったどころか、父親が自殺までしちゃってる。
看護婦たちの性格の悪さなんかは、一見オーバーに見えなくもないけど。
こう思われてるかも……って被害妄想気味になっちゃうのはわかる。
それを明視点っていうフィルターを通して描いてる。
実は幼い頃に主人公と~って展開は、ヘタレにヒロインを救わせる場合の常套手段。
ひねくれ者にも純粋な子供時代はあるはずだから。
で、ラストは健ちゃん自ら締めくくると。
だから何? って感じというか、そんなすごい大きな変化があったわけではないと思うし。
彼女の生活が劇的に変わるってこともないだろうけど。もう十分踏み外しちゃってるから。
でも世界の見え方は変わる。
少しだけかもしれないけど、確実に変わる。
いいなぁこういうの。
選択肢含めて、終盤の展開ほんと好き。
エピローグでのプリクラ再登場とか、タイトル回収も見事。
読み始めた時は、予算の都合で立ち絵使いまわしてると思ってたのは内緒。
だって誤字脱字とかもやたら多いし、よっぽどかつかつな制作環境なのかな? とか思っちゃったのよ。
その辺含めて問題点こそあれど、刺さる人には刺ささる、刺さりまくる感じのシナリオは、エロゲらしくてとってもいいんじゃないかなと。
後ろ向きな考え方のキャラたちとか、ポジティブ思考な人からしたら理解不能かもしれないけど。
でも辛い現実から目を逸らそうとしてしまうような、(自分含めた)弱い人間にとっては、そっと背中を押してくれるような優しい作品に仕上がってますわ。