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ubic_1さんの捻くれモノの学園青春物語 ~俺と彼女の裏表~の長文感想

ユーザー
ubic_1
ゲーム
捻くれモノの学園青春物語 ~俺と彼女の裏表~
ブランド
りびどーそふと
得点
72
参照数
409

一言コメント

それなりに面白かったんですけどもうちょっと共通ルートとかを長くして欲しかったです……。

長文感想

今作の欠点は主に二点に絞られる。第一点に、部活モノとしての描写が薄い点。今作の共通ルートは、「陰キャ」(瑞沢唯は少し事情が異なるが)が彼ら独自のアジールを築きあげ、彼らにとってはこれ以上なく得難い青春を謳歌するというような、いわゆる「部活モノ」の一類型としてスタートする。しかし、そうした「部活モノ」としての共通ルート自体がごく短いものでしかなく、しかも個別ルートに入るとそれがさらになりを潜めるようになり、むしろ各メンバー間との恋愛関係に「のみ」力点が移行することになる。そのため、今作は共通ルートと個別ルートで全く別の様相を呈すゲームとなり、当然「部活メンバー間の恋のいざこざ」等の部活モノの宿命というべき難題も回避される。

今作の第二の欠点としては、主人公の魅力の薄さが挙げられるだろうか。作中何度も「捻くれてる」と言及される主人公だが、「捻くれている」というだけではとくに欠点にはならない。問題なのは、あまりにもクラスカーストを内面化しすぎている点だろう。それは、自分よりもクラスカースト的に下位層(と主人公が思っている)のクラスメイトにきつく当たったり、逆に上位層(と主人公が思っている)のクラスメイトに見せる過剰な怯え等によく見て取れる。少なくとも主人公本人がそうしたルサンチマンをギャグに転嫁できるような自意識があれば、それ相応の魅力が現れたかもしれないが、そうした態度はうかがえなかった。

以上、この二点が今作のおおまかな欠点だといえるが、それを踏まえてなお、この作品はそこまで悪い作品ではない。たとえば<さやか>ルートのコミュ障同士がおそるおそる歩み寄っていく描写は面白かったし、<観月>ルートの九十九里龍賢と主人公のやり取りはゲラゲラ笑えた(彼もっと出番増やせば良かったのにね)。全体的にはもう少し共通パートの部活モノとしてのパートと、主人公と各ヒロインの恋愛関係に至るまでの描写に不足感がある、割と面白い青春モノ、といったところだろうか。