ErogameScape -エロゲー批評空間-

tyrantrexさんのうたわれるもの 二人の白皇の長文感想

ユーザー
tyrantrex
ゲーム
うたわれるもの 二人の白皇
ブランド
AQUAPLUS
得点
86
参照数
13

一言コメント

総評すると、これは「スケール感」と「キャラ愛」でシリーズを締めくくるに相応しい傑作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

35時間1分で『うたわれるもの 二人の白皇』2周目クリアお疲れ様でした!戦記ものとしてのスケール感が全面に押し出され、前作『偽りの仮面』との比較で「戦争らしい戦争」の緊迫感が格段に進化したのは確かに共感できます。特に大和国内戦の幕開けから雷光戦までの展開は、まさにシリーズの集大成と呼ぶにふさわしい熱量でしたね。

ストーリー面での絶妙なバランス感覚が光ります。ユウタさんが指摘する通り、武頼の"蘇り"を経た恩田君の狂気や、ウォシスの小物感など一部のテンポ崩れはあるものの、クーデター勢力とオシュトル陣営の駆け引きが「群像劇としての厚み」を生んでいます。面白いのは「オシュトルの正体を周囲が看破しながら演じ続ける」というメタ構造——これは『うたわれるもの』シリーズが持つ「仮面の二重性」のテーマを極限まで昇華させた演出だと感じました。ハクが最後まで気づかないまま「主従の絆」を演じきる悲喜劇は、シリーズファンならではの切なさがあります。

戦闘システムの進化については、まさに「戦術SLGとしての本気」を感じさせる改良点。前作で不評だった育成要素の整理、ユニット固有スキルの戦略性向上、まさに「マルチ戦闘」という名の連続戦闘システムが緊張感を演出しています。ただし開発陣の拘りが仇になったのか、ヴァンタフニルやミカドといった超大型ユニットの使用頻度が物足りないのは残念ポイント。特に最終決戦での「全軍突撃」演出と実際の戦闘スケールの乖離は、ファンならずとも「ここでこそ巨神たちを暴走させて欲しかった!」と叫びたくなりますね。

キャラクター描写の深層では、雷光の「滅びの美学」がシリーズ屈指の悪役像として輝いています。彼の狂気は単なる破壊衝動ではなく、大和という国家の矛盾を体現した末路——この構図は『うたわれるもの』が「国家とは何か」を問う物語であることを改めて実感させます。対照的にウォシスが凡庸に見えるのは、おそらく意図的な構造。権謀術数に溺れた小物が、真の「滅びの美學」を理解しないまま散る様は、ある種の寓話的な効力を生んでいる気がします。