主人公の内省と言動・行動がもっと一致した上で同じ物語が展開したのなら…。そこが勿体無い。
内省を重ねるなら重ねたで、それが表に現れないならば"人間"として評価は難しい。
これがお伽話(≒神話、寓話)だというのならば、切那以外の登場人物たち同様、主人公にも「適切な役割と動き」を与えるべきだったのではないか。
プレイ中に思い浮かんだのは全然別のゲームの話で、RPGの「ヴァルキリープロファイル」のレナスの輪廻の話や、暁ワークスの「コミュ」の主人公とヒロインの関係(道化と魔女)の話だ。
彼らは終始「与えられた役割」に徹していた。ゆえに受け手側としても「与えられた物語」を徹底的に享受出来た。
けれど、本作の主人公は、与えられた役割がとても中途半端だったように思えてならない。
内省を重ねるなら重ねたで、それを表に出して少しずつ成長するもよし。
内省を上手く表に出せずに、混乱するならするで迷い続けるもよし。
そこに「どうしてそうなるのか、そうならないためにはどうするべきか」という内省と、「未来や過去と向き合うために、現在とまず向き合おう」という葛藤が描かれるなら、まっとうなヒューマンドラマが見れるに違いない。
その辺りが少し雑だったというか、描かれなかったというか。
そんなに内省してんのに、なぜその出力?という感じで、結局主人公の「行動原理」がよく分からなかった。
今までに記憶喪失モノのテキストは沢山読んできたけれど、こういうのは初めてだったかもしれない。
そういった胸のつっかえさえ無ければ、85点は余裕でオーバーしたと思うのだけど。