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tukkunさんのこころリスタ!の長文感想

ユーザー
tukkun
ゲーム
こころリスタ!
ブランド
Q-X
得点
94
参照数
652

一言コメント

こころナビをプレイしたときに感じた心地よさを更に進化させたゲームでした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

派手さはありませんが、シナリオ・BGM・絵、全体的にとても丁寧に積み重ねられている良作です。

前作を未プレイでも十分楽しめると思います。
ただ、前作プレイ済みなら思わずニヤっとするキーワード・背景・音楽・服装などが
そこらにちりばめられているので、より楽しみたいならプレイしておいたほうが良いでしょう。

主人公の悠斗はコミュニケーションに難があり、こころリスタをきっかけに改善していき成長していくのですが、
主人公だけでなく、周りのヒロイン・サブキャラもそれぞれのコンプレックスに向き合い、戸惑いながら成長していくのがとても良かった。
シナリオライターが違う、さちルート以外はまったく違和感が無く進められました。
また、1シーンのやり取りの長さ長すぎず短すぎず、
昨今のゲームにありがちな延々とドタバタして間延びするようなシーンが無かったのも好印象で、
日常シーンがとても良かったです。

また、エピローグ以外は完全に主人公視点で語られるので、
相手の気持ちが実際のところどうなのか、告白時点でどういう展開になるのか読めず、
先が気になるつくりになっており、途中でやめられなくなりました。

こういった雰囲気が好きな人にはぜひお勧めしたい作品です。
以下、ネタバレ込みの各ルートの感想です。









































プレイ順に各ヒロインの感想を。

・さち
いくつか感想を見ていると、本シナリオのみ劣る、とのことだったので最初にしました。
その感想のとおり、シナリオライターの差なのか、キャラクターもシナリオもぬきんでて出来が低いです。
正義感が暴走し、というテーマが他のキャラクターと比べて現実的なコンプレックスに繋がらず、
兄から悠斗にこころが移る過程の描写もあまりに簡潔すぎます。
個人的には、話の途中から「お兄ちゃん」って呼び出すのも不自然で好きでないのもあります。
妹二人の個別ルートの描写が良いのでなおさら際立ちました・・・

・メルチェ
個別ルートのシナリオ展開は、比較的よくあるプロットですが、
矛盾点や違和感があるわけでもないので特に気にならず、
メルチェ自身のキャラクターが独特な喋りを含めてとても可愛いので楽しかったです。
全般的に声優さんの演技もキャラにぴったりなのですが、その中でも一番良かったと思います。

・真理歩
クールに見えて悠斗と同属、ちょっと痛い人。
お互いにコミュ障という中、相手の気持ちを意識するあまりに
過剰な反応をしたり、キャラ設定が良く活きていると感じました。
その中で少し悠斗側からリードする形でお互いに成長していく、優しい話だったと思います。

・雪音
妹その1。
幼少期から恋心を秘めつつ、社会的にどうなるかという一般常識も十分把握している子。
肌を重ねて恋人関係になった後も、エピローグまで
その点を完全に割り切ることなく、現実的な考えに基づいてお互いの関係を築いているところが
雪音というキャラクターを感じる要素になっていると思います。
星歌ルートでもそうですが、
とりあえずなんとかなるだろう、周りもなんだかんだで祝福してくれました、メデタシメデタシ
というほどお気楽には進めていないのが個人的には好きです。
(そこまでシリアスな展開になるわけでもないですけど)
前作の妹枠である、凛子を意識した演出が多いのもポイントですね。
凛子の着ていた制服でのプレイや、ウェディングドレスなど。
また、最初のほうでミューティがラミューの魂を受け継いでいる、っていう設定は
前作との明示的なつながりを感じて、前作ファンとしてはやっぱり嬉しくなりました。

・星歌
妹その2。
キャラクター的には前作の凛子に近い感じですかね。
主人公に輪をかけてコミュニケーションに難がありますが、
本人の台詞にあるとおり「別に嫌ってるわけではない」という本人の気持ち、
雪音の本心を知っているという立場、兄妹という関係に対する自覚、
といった点から個別ルートで実は葛藤が一番大きいキャラなのでは?と感じます。
それでも本来のキャラを出す星歌がまた可愛い。

・アルファ
こころリスタの作成者。
その正体は、前作のラウンダーのヒロインである
ルファナの心のデータと凛子のプログラムによって生まれた存在。
ルファナがウィルスに感染して突然変異し、こころナビが生まれた経緯をなぞっているようです。
当然といえば当然ですが、前作とのつながりをもっとも持つヒロインで、
各CGも前作のルファナをイメージしたものが多いですね。
(雪のシーンや浮遊しながらキスをして分かれるシーンなど)
前作のルファナルートでは、こころナビの解析を決心した勇太郎の下に突然ルファナが現れる結末でしたが、
本作は悠斗と凛子が2年かけて迎えに行く結末で、ここにも前作とのリンクを感じました。



蛇足と思いますが、個人的な想像では本作は前作の凛子ルートの後日談、と考えています。
・凛子の推測が正しければ、
 ルファナは平行世界の勇太郎と結ばれているため、本編の世界軸では結ばれていない
・こころナビの解析をした凛子ならルファナが生まれた経緯まで辿っていた可能性が高い
・勇太郎と話している際の表情がいつもとは違う、という1シーンがあること
・「こんな形で子供ができるなんて」という台詞が前作で「子供とかは作れない」といっていたり、
 実は子供好き?といった話とリンクする(気がする)

凛子ルートのエピローグ時点で残っていたこころナビがいつ時点で消えた?等は残りますが、
凛子自身も「なんやかんやあって」と言っている中に含まれるのかなー、と。

最後に、本作をプレイできて本当に良かったです。優しい世界観で楽しかった。
製作者の方々には感謝しかありません。