読了後の喪失感がすごい作品でした。
個人的には最初、体験版のネタバレはしないほうがよかったのではないかと思ってました。
各章が短く、体験版ネタバレ以上のものがそれぞれになかったので、そこら辺がもったいないなあと思ってプレイしていたのですが、とんでもないです。12に入ってからの伏線回収の鮮やかさにを見て、あのネタバレは公開してもよい範囲で、購入意欲を高めた意味で素晴らしい判断だなと考えを改めました。
伏線における緻密さについては驚愕するばかりです。
その上で最初に出てくるものといえばやはり文字に関する回収だと思います。
身の回りの物を音や色などで分けて、極力日常生活に近づけた状態でシュウ、延いては読者をだますその手腕には舌を巻くばかりです。アトリビュートについても前半に何度も強調することで伏線として受け入れやすくなり、素直に驚くことができました。その点でいえば、キリエの爆破衝動についてはその努力に対して成功の大部分が相手の意識に依存するので、もっといい方法がないのかともやもやしました。(実際、12章以外は活用できなかったですし)
ただ、キリエが実際の現場を見たときにその爆破を美しくないと言ったことについて、一度最後までプレイすることでその意味が変わっていくのはなかなか面白いと思います。
そのほかにも、タイムリープ設定もよかったです。2ペアによるそれぞれ真逆の結果を求めるための巻き戻しなどあまりないアプローチが新鮮で、それによる時間差のトリックもなかなか秀逸でした。サクヤの動機についてもその空白期間をうまく使っていて、回想の時にぼろ泣きでした。はたからみると身勝手なサクヤの行動に説得力を持たせる意味合いにおいてこのタイムリープ設定が存分に生かされているのではないかと思います。
ミューズの設定においてはサクヤや教師などが記憶喪失期間を把握している点について若干違和感があったのですが、まあ記憶喪失目当てに制作されたのならどの程度消すのか把握する必要があるのでそれを前提で開発されているんだなあと勝手に納得してます。厳密には記憶を消すというわけではなく思い出させないようにするだけですし。アンチミューズも同様ですね。
ミューズによって生まれた店長の伏線もなかなかドキッとしてよかったです。
今回、明確な敵がいないのも好印象です。
しいて言うなら、ワタラセにはなるというのですが、すでに没していて、唆す程度の介入だったので悪役として数えるにしても微妙なんですよね。ギドウ先輩にしても全編において芸術に並々ならぬ思いがあったため、動機部分においてもすんなり入った感じがします。(キリエやコトハ先輩とのお話・説得も時間がかなり割かれているのも好印象です)
個人的にギドウ先輩は好きだったので、変に自殺されても後味が悪かったためやはりあの結末がよかったからこそサクヤ・ユネアフターが楽しめたといっても過言ではありません。
シュウについても最後のユネのところで強引にハッピーエンドにもっていく力強さが読んでで良かったです。
個人的にはそこも好き。
個人的には今年のみならず、ほかの年と比べてみても遜色ない名作だと思っているので、この作品についてはより世間のひとに知られたいと思っているのが心情です。その点でこの作品、ひいてはこの作品のスタッフがさらに発展することを願って今後もメーカー様の動向を追いつつプレイしていきたいです。
サクヤに射精管理されたい。