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tsubame30さんの終のステラの長文感想

ユーザー
tsubame30
ゲーム
終のステラ
ブランド
Key
得点
90
参照数
252

一言コメント

グラフィックもシナリオも質が高く、よい時間を過ごすことができた。ロミオにしてはひねらず王道で素直に感動した。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

直球のフィリアの成長物語にしてジュードの救済の物語で、追いかけやすかった。
”父娘”になっていく描写がテンポよくも充実していてとてもよかったと思う。
爺さんが変に嘘つきだったり悪い奴じゃなかったのも、人類をとるかフィリアをとるかの選択の純度を上げていてよかったように思う。
世界設定とその情報の開示のしかたは技術とキャリアを感じる。ロミオはやっぱり天才だった。
背景、イラスト、音楽のクオリティもさることながら、かみ合わせがよかった。
はっきりかわいくもギャルゲぽくない塗りと世界感にマッチし、静謐なBGMがふたりきりの旅にマッチしていた。


ロゴの下部にある英文
"Even if humanity dies, the machine we have created will inherit our love and create the future"
(人類が死に絶えても、人類が残した機械が、愛を継承し未来をつくるだろう)
まさしく、この通りの話だったように思う。

行商人兼機械エンジニアを指して、”運び屋”という言葉を選んでいることが、かっこいいというか深いというか意味を考えてしまって面白いなと思う。
それらは集落と集落を結ぶ者、人と機械を結ぶ者である。
その仕事の中で、ジュードはフィリアに生きる術と愛を残す。
終盤に、”なにか大切なものを運んで……それを……託した” とあるように、次の世代に「継承する」ことを”運ぶ”と称している。ジュードはDNAこそ継げなかったが、娘になにかを継承することができたのだ。

フィリア自体は人類とAIを結ぶ者としての役割を与えられてつくられたが、その道は選ばなかった(正確に言えば選択したのはジュードであるが)。父と同じように、いや、”救いたい相手を自由に救う力を身につけた”運び屋として仕事をする。その中で、次の世代に生きる術と愛を残す。(エピローグもそうだが、特典冊子にはもっとはっきりと描かれている)

結ぶことと継承することを、運ぶと称しているのが好きで、このゲームにおいて象徴的だなと感じる。