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tsubame30さんのニュートンと林檎の樹の長文感想

ユーザー
tsubame30
ゲーム
ニュートンと林檎の樹
ブランド
Laplacian
得点
90
参照数
9406

一言コメント

(17/09/20長文に追記)テンポがよいの一言。良くも悪くも。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

キャラ造型めちゃくちゃしっかりしてるなぁと思いました。
全員、人物としてしっかり動いてた。物語のためのコマみたいなことが全く感じられなかった。
ふわふわしてるようで、研究者としてのプライドを感じる春さんだとか。
エキセントリックで気分屋に見えて、その実一途なラビとか。
いや、四五が都合よく解説してくれたりとか、ラビが都合よく道具を準備してくれたりとかはあるけど、
役割をちゃんと振ってるという話で、どこにも無茶が無いというか。
細かいところも含めて、ほんとに無茶が無くバランスよく作ってある。

文章のテンポが本当によい。
掛け合いを楽しく書きつつも、上手に削ってあってダレないようになってる。
ほどほどのタイミングで伏線を撒き、理不尽を感じないように作ってある。
立ち絵や表情も豊富で、終始没頭して楽しむことができた。
ムービーの演出も面白かったですし。

キャラをしっかりつくって、文章のテンポをよくする。
いや言葉にするとほんと陳腐ですけど、なかなかできないですよ。
だからこそ、後半のシーンがぐっとくるというか。
母に素直に感謝の気持ちを伝えるラビ
計測だけが共通理解を得る方法じゃないといった四五
ほんと僕までテンブリッジに飲み込まれてしまったような気がします。

最後のあれは……、なるほどその手があったか、という感じ。
ビターエンドになるのを嫌った結果なのか、それとも本当にただの悪ノリなのか。
まあ物語の流れ的には、アリス編に関しては帰らざるをえないでしょうから、その救済なのでしょうかね。
なかなか面白いです。ただ、ここを救うならラビ編にも救済が欲しかったかも。
次につなげるための足がかりとして仕方ない部分はありますけど、もっと平和解決感あるエンドが欲しかった。
2回目でセリフが変わったりするのは面白いのだけども。


文章にはしてみたが、なんかいまいち書いた自分にもしっくりきていない。
最初から最後までずっと楽しかった。女の子がかわいいと思った。この世界に浸っていたいと思った。
とてもよい時間を過ごすことができました。
これが全てかなぁというところです。


■2017/09/20追記------------------------------
熱が冷めて整理が付いてきたので追記。
いい感じに絶賛してましたけど、悪いところもあったよねという話。
あまりにも絶賛しすぎて恥ずかしくなったけど、まあせっかくなので消さずに残します。
楽しかったことは間違いないし、今でも大好きな作品なので点数もそのまま。

・良くも悪くも寄り道しなさすぎた。
ストーリーとしては、常に「どうやって未来に帰るか」という目的があり、
その目的のための行動がひたすら描写されてます。
そのために、テンポよく話が転がり、先が気になるというモチベーションがあったわけです。
ただ、今になって思うのが、あまりにも「ストーリー上必要なもの以外」以外をはしょりすぎたんじゃないか、ということです。
具体的には、春さんルートに乗る直前まで、主人公(ユーザー)にとっての春が「アリスの親友」でしかないのは問題があるんじゃないかというところとか。
普段の掛け合いの中で、春さんの見所というか、魅力をほのめかすくらいはしておかなければいけなかったのではと。
ニュートンに対する複雑な想いのエピソードで、「春も研究者なんだなー」って思ったのは確かだけど、
本当は別イベントで「春も研究者なんだなー」と思わせることで、だったらニュートン名義にもキレるわ、っていう感情に説得力を持たせるのが理想だったよな、という。
同様に、アリスの「大人の女性になりたい」という願望とか。
動画でのアップルパイのくだりを唐突に感じたってのはあるよね。
あとは四五。四五はかわいいのだが、正直四五ルートの四五に四五らしさが感じられない。
修二が大好きなのはいいのだけども、科学捨ててもいいですって態度は違和感あった。
修二の大好き具合を前提にしすぎてるんだよな。そこにも過去のエピソードという寄り道で補強して欲しかったかな。

逆に言えば、「未来に帰る」という目的をきっちり果たしたのはよかったと思います。
アリスルートをやりながら、最後過去に残ったらどうしてくれようとおもいながらやってました。
話の流れとしてそれは許されないだと、と。
本編きっちり締めてくれたのはとてもよかった。

・寄り道はテンポロスとのトレードオフ?
ただ、寄り道をしなかったために、テンポのよさが維持されたのかなという気もします。
じゃあいざ、寄り道をしたときにダルいなぁて思ったかもしれないんですよね。
ある意味では、テンポのよさを最優先して飽きさせないように作ったともいえるかもしれません。


追記前と追記後を比べて、なんか二重人格のようになっちゃって自分でも怖い。
でも思ったことをそのまま書いてます。
このゲーム大好きなのは間違いないです。

『ニュートンと林檎の樹』は、ながらくエロゲー倦怠期だった自分に「エロゲーってやっぱりおもしれぇな!」と思わせてくれた久しぶりの作品だったので、この好評価は、ただタイミングがよかっただけといえばそうなのかもしれないなと自分でも思います。
でも、好きなのも楽しかったのも、ラビちゃんが可愛かったのも間違いがありません。
その瞬間楽しかった、という事実は大切にしたいなと思います。