面白い。キャラもかわいい。動作も快適。しかし何か物足りない。驚きが足りない、と思ってしまった。
素材のレベルも、場の空気作りも、なかなかいいバランスに落とし込んだ完成度の高い作品。
客観的にはそうだったのですが、ちょっと主観的には不満が残りました。
いや、面白くなかったわけではないのです。
システムも、豊富なグラフィックも、結構かゆいところに手が届くし、
できるだけ重い感じをなくしてストレスレスにしようとする配慮も窺えて、
しっかり作ってるなぁという印象は受けました。
それはこの作品の美点として僕の中で解釈されています。
だからこれは僕の好みの話なのでしょう。
しかし、なんだかパンチが足りない。そんな感覚が残りました。
まるな編と織衣編は良かったです。
意外とぐいぐいくるまるな、意外とお茶目な織衣。
そういうちょっと「意外な一面」がいいスパイスになり、
あ~かわいいな~♪感がいい感じに回ってくれました。
一方、ソーニャ編と勇編はあんまり回ってくれませんでした。
理由は、「意外な一面」が特になかったことがあるのだと思います。
「下ネタに弱い」ソーニャにはちょっとぐっときましたけど、それも共通の話。
分岐してからは、お仕事に真摯に取り組む姿がメインになります。
その様がいいとは感じるのですが、まあソーニャならそこはきっちり切り替えるよなぁ、と。
多分そういう風に感じてしまったのかなと。
ストレートに言ってしまうと、「驚くことが起こらなかった」。
「もうちょっとなんかないの?」って思ってしまった。
話が逸れますが、ソーニャ編は車折さんとの関係をもっと密に描いて欲しかったです。
普通に海に付いてきて、「お、おう……来るんかい」ってなってしまいました。
ちょっと急ぎすぎたかなと。
閑話休題。
有希編は関しては「驚くことがない」ことは、まあ仕方がないところではあるかなとも思います。
最後にちゃんと泣いたのは評価したいです。
桐谷さんやっぱ上手ですね。
「驚くことがなかった」ということが起きた原因のひとつに、
誰かをクリアしている間に、他のヒロインの性質や行く末がだいたいわかっちゃうことがあるのかな、と。
変な言い方になりますが、「そのルートを選択しないとわからない情報」みたいなのがあると、
(たとえそれがしょーもないものであっても、)新鮮な気持ちで最後まで突っ走れるのかもしれません。
人物をちゃんと描きすぎて、序盤に手札が見えすぎた。
そのことが僕にはマイナスに作用してしまいましたが、
全体としてはユーザーへの配慮が窺える、パワーバランスのよい丁寧な作品でした。
我が家にもまるなとソラリスが欲しいであります。