家族っていいなぁ。生きるってしんどいなぁ。そんな話です。素晴らしかった。
「人は一人では生きていけない」「人と関わるのは億劫だ」
『家族計画』は、人間関係における永遠の葛藤を感じさせられる作品です。
「人は一人でも生きていけるけど、それだと生きていくことしかできない」
作品中で司もこう言っています。
人は、人の存在を生きがいにしなければ、日々を戦っていくことが難しいです。
寛は生きがいを、真澄は弱さの補填を家族に求めました。
「誰かのために」が無くても、何かを一人で為していける。
そんな強い人は少数だと思います。
しかし、他者と関わることは億劫です。
ちょっとしたことが軋轢を生み、関係を破綻させます。
しかも、そこまで負荷をかけた上で、
本当に信頼できる存在になれるかどうかなんてわかりません。
この作品に感じたことは、人間関係の距離感の絶妙さです。
寛の一見フレンドリーながら掴ませない振る舞い。
真澄の一方的な信頼。
準の契約論。
青葉の徹底した拒否。
春香の恩に報いる姿勢。
茉莉の遠慮がちな態度。
それぞれの背景ゆえに「人間関係の二項対立」に対する折り合いのつけ方が違います。
絶妙な距離感をセリフで表現した文章力には感服です。
この、「距離感」は、家族計画が始まってからも同様でした。
当然です。家族などとのたまっていても結局のところは他人です。
他人との共同生活なんて、ちょっと考えただけでも相当なストレスがあります。
しかし、他者がいてこそと思うことも、ごくわずかながらあったりするわけで……。
無常の喜び、常に隣り合わせの軋轢と悲劇。
そんな割に合わないものだったとしても、
人は人の中に生きるしかない。
そんなやりとりをみて、腹を抱えて笑いました。
そして本当に心揺さぶられました(特にオムライスでは号泣)。
生きるって本当に難しい。だからこそ、信頼できる人物は本当にありがたい。
このゲームは、「人間関係」という万人共通の永遠のテーマを
コミカルかつシビアに描いた、いまだに色褪せない傑作です。