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trumpさんのセミラミスの天秤の長文感想

ユーザー
trump
ゲーム
セミラミスの天秤
ブランド
キャラメルBOX
得点
75
参照数
1951

一言コメント

愛生80映瑠75直緒70芙美香80塔子70。並びは攻略順。しかしそれとは別にロウルート最終章とそのBADENDに90を付けたい。善悪の天秤が誘導になる愛生映瑠に対して他3人のルート突入が難しく、シナリオで山場の無いキャラが後になってしまうのが難。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

個人的な主観を大いに含むが声優のチョイスが絶妙。

愛生役の桐谷華の安定した低めのボイスはゾクゾクくるし
映瑠は色々とおとボク2の主人公を意識させるキャラでシリアスもデレもご褒美です
直緒は近年の青山ゆかりキャラの中でもトップクラスに「かわいい」キャラだと思う。だがイチャイチャが短い
芙美香はあざといが良いロリ。Hシーンになると饒舌になるのが興奮する。
塔子はふわふわしてる普段の声も良いが、ふにゃふにゃしてる時の声がかわいい。他ヒロインルートで玲児を取られた時の反応がかわいい

Sofmap限定版のにゅーにゃー言ってるドラマCDがオススメ
公式限定版のドラマCDは青山ゆかりが男前過ぎるので素人にはオススメしない



・Hシーンと絵に関して
のり太絵でここまでやっちゃうかーという感じ。でもアヘ顔というか舌や涎を強調した表情は微妙です。
愛生はまともなフェラがないのが残念。シナリオにも不満を付けるなら性的に堕ちる堕とされるENDも欲しかったくらいか
芙美香のボディは細すぎて犯罪的。入らんだろ。回想2回でお漏らし3回は流石にひいた。
直緒と塔子はどれもバランス取れてて綺麗。
映瑠はこの設定だから回想少ないと言われれば納得せざるを得ないのだが、だからこそ頑張って欲しかったという想いもある。
(私は女装主人公モノは好きだが性的興奮は覚えませんので、あくまで映瑠の設定ならという話)
陵辱シーンCGは良く見ると一番槍がオタクぽい眼鏡なんだがいいのか?
サンドイッチしてても後ろに男いないとか、そもそも構図的に無理あるとか。アラはあるがテキストに救われている。
のり太絵恒例の顔アップCGは若干変化させてきた模様。悪くない。
今回絵師にとっても不慣れなCGが多かった為か、枚数自体は少ない。ヒロイン以外のCGも多いので殊更そう感じる。
次作では女の子がかわいいCGがたくさん見たいですね。




・本編全体の構造と幻聴の正体の考察
この作品はプレイヤーが本編から得られる情報で推測を続けても、真相に辿り着く事はできないようになっていると思います。
矛盾なく論理立てる為にはどこかしらを嘘と判断するしかなく、その為の根拠は本編中には無いか、非常に弱いです。

私はこの作品のOPED挿入歌の作詞もシナリオライターが手がけている事からここにヒントがあるのではないかと考えました。
OPの「遠く殺され続けた亡国の果てに笑う、夢を語る嘘に真実を求めて未来へ綴る王女」=この物語の書き手と読む事ができます。
このフレーズを本編に当てはめると殺され続けたのは人ではなく、選ばれなかった可能性、葬られたB達です。

それを踏まえ、私はこのセミラミスの天秤という作品は、
玲児(プレイヤー)から選ばれなかった無数のBの死体達の物語、だと思うのです。
幻聴の正体は死者の声、その場にある可能性もあったが殺されてしまった可能性達の声です。
これだと単なる超常現象で終わってしまうので本編での扱いについてもう少し書きます

映瑠ルートに順哉に襲われ、水城の声で幻聴が聴こえるシーンがあります。
これは幻聴の内容から玲児ではなく順哉に向けられた声と考えるのが妥当です。
階段から落ち頭を打ったことで順哉も幻聴を受け取れるようになったと推測する事ができます。
これが「死者の声」というファンタジーでないとすれば、やはり精神疾患の一種として書かれているのではないでしょうか。
第三者からの声ではなく、本人の経験から来る後悔の念が声として聞こえているという事になります。



・最終エピローグの女性の正体
彼女は「セミラミスの天秤の作者」兼「幻聴の主」であるかのように描かれています。
先に結論から書くと彼女は雪井燈花です。その上で2つの解釈を私はしました。


・1つ目の解釈は雪井燈花=誰でもないというもの。

注目すべきは最後の台詞。
「あなたは、誰にこのペンネームが付いてたら良かったのかしらね? ふふふっ……」
あなた=玲児(プレイヤー)、ペンネーム=雪井燈花、です。
プレイヤーにとって良かった=玲児が一緒になったヒロインがプレイヤーの望んだヒロインである、ということです。

プレイヤーが一番気に入ったヒロインのENDが正史となるように
名前が入れ替え可能である、という事を示唆しています。
だからこのエピローグは塔子以外のEND後でも発生します。
一度見た後でも全ENDを見なおせば再発生します。

雪井燈花はどのヒロインでもあると同時にどのヒロインでもないので
選ばれた幸福なAであると同時に、選ばれず殺されたBでもあります。
だから彼女は選ばれなかったB達の呪詛を行使する事ができるのです。
あとメタ視点で物を言うと「正史のヒロインを決めない」というユーザー配慮は嵩夜あや氏が過去作でもやっている事ですね



・もう一つの解釈は見たまんま雪井燈花=塔子。

こちらで考えた場合、塔子が本編塔子ルートを経験するだけで
クラスメートが陵辱されたり、玲児を飛び降りさせたりするシナリオを書くようになるか? という問題があります。
塔子ルート中で書かれた小説版セミラミスの天秤はあくまでも少女小説の範疇に収まるものであり、
これはゲームではありませんので当然一本道です。
(ダイジェスティブプレイでの塔子ルートで起こる事件は盗撮教師と愛生の叔父が逮捕されるのみ)
それに対しゲーム版セミラミスの天秤はその後の未来の世界で同タイトルを冠して作られたものと思われます。
つまりその未来に至る過程で、本編中にて仄めかされた塔子が覚醒して化け物になる過程があったのだと思われます。

この作品が選ばれなかったB達の呪詛で出来ているという部分に沿うなら
彼女が玲児と一緒になるまでの過程には大きな波乱があったのではないでしょうか。
玲児が全ヒロインと関係を持った後に壮絶な修羅場が発生し、最終的に塔子(燈花)が勝利した。という展開を私は想像しました。
この作品自体が浮気症な玲児(プレイヤー)に対する当て付けなのかもしれません。



・まとめ
各所に挑戦が見られる非常に意欲的な作品でした。
特に善ルートにて不幸が起こってしまった後の物語を
手抜き無しで複数ルート描いたというのは喝采を送りたいです。
善BADENDは最高でした。スプラッタ映画見て喜んでるような感想で申し訳ないのですが
この手のシナリオは抜きゲの領分みたいな風潮があって、非抜きゲでは中々お目にかかれません
かといって抜きゲ側で陵辱後のシナリオが良いものを探すのは発売日購入主体の自分には正直厳しい。
信用できるクリエイターさんがジャンルで冒険する分には喜んで買いますので、これからもこういう挑戦は増えてほしいです。
((……信用できるクリエイターなら冒険してなくても買うくせに))












ENDタイトルメモ
ENDBAD悪  幻惑の果て End of Daze.
END愛生  いつか明日があるならば Just think of tomorrow.
END直緒  私と[あなた]の物語 Stories of my life,but Others.
END塔子  おかえりなさい Welcome back,home.
END芙美香 機械は蝶の夢を見るか Do robots dream of butterfly?
END映瑠  氷解 Thaw my heart.
ENDBAD善  倫理の鉄槌 Malleus Maleficarum.

以下最終エピローグ全文

「っと……よし、これで全部終わり……! かな?」

「あ、開いてますよ。入ってー」

「んー、良い匂いがするー。良いタイミング、いま丁度書き上がったところ」
塔子
「あはっ、ありがとう……あなたもお疲れさまでした。大変だったでしょう?」
塔子
「私も、あの当時の記憶を思い出しながら書いてみて……ちょっと楽しかったような、
 ちょっと切なかったような。ま、肝心なところはフィクションだけど。なかなか現実
 はドラマティックとは行かないもんね」
塔子
「え、自分にとって都合の良くないところは忘れたままで良かったのにって? ふふふ
 っ、それじゃ面白みが半減しちゃうでしょ……やっぱりこういうのは赤裸々なとこ
 ろがないとね」
塔子
「んー、美味しい……それにしても、ペンネームとは云え、自分と同じ名前の子がお
 話の中で動きまわるって云うのは、なんとも奇妙な感じだった」
塔子?
「えっ、じゃあ雪井燈花は誰になるんだって? ふふっ、そうだよね……ペンネームに
 ペンネームを付けてあげるって、ちょっと不思議な感じがして面白かったけど。分身
 の術みたいで」
??
「どうしたの? 何だか狐につままれたみたいな顔して……さ、そろそろご飯にしまし
 ょうか」
??
「あなたは、誰にこのペンネームが付いてたら良かったのかしらね? ふふふっ……」