プレイヤーが知るこころと悟の話は一応完結している
このクオリティが完結まで続いていれば90点を超えた点数を確実に付けていただろう。
道中は前作、前々作以上に面白い。しかし・・・
このゲームをプレイした誰しもが同じ思いを共有しているであろうが、
あまりに尻切れトンボで解答編を放り投げた未完成品なのが、非常に残念で、失望感を禁じ得ない。
残る謎が多すぎて、期待した分、このもやもや感が永遠に解消されることは無いという事実に不快感すら覚える。
プレイ後はまず、「Remember11 考察」でググってトップに出てくる有志のサイトを読んでおくべきだろう。
妄想を加味せず作中の文章を根拠に推測できる内容を客観的にまとめられている。
恐らく読後最も気になるであろう「犬伏が崖上で赤ん坊を狂気の形相で見つめている」という切迫した状況の心配は(恐らく)不要であることは分かるだけでも、溜飲はいくらか下がる。
一応、この作品のオチを(上記考察など含めて)好意的に評価できるとすれば・・・
・(ラストの不穏な描写を無視すれば)こころと悟、遭難した人々の命が助かったことがはっきりする、一応のグッドエンドが描かれる(つまり、感情移入していた登場人物達の「生死の掛かった物語」は綺麗な形で完結する)
・犬伏は悪人ではないことが推測できる。また、悲惨な境遇だったホトリも、恐らく生存するであろうことが分かる
・どのような原理で本編の転移現象が起きていたのかは(一応)明かされる
また、大筋として下記のような背景が読み取れる
・妹を『超常的存在(プレイヤー?/セルフ?/アイツ?)』に殺させられた元悟が彼(?)を"招き寄せ幽閉する"という手段で復讐するため、ライプニヒ製薬に入社し、何らかの動機を持って協力する榎本と、何らかの理由で人格交換した上で、転移現象を繰り返して引き起こし、"第三視点"を得るために計画を企てていた
つまり、単純に推測すれば、ever17のBWのようなメタ的存在(プレイヤー的な何か)を呼び寄せなんやかんやする、という展開がこの後構想されていたのであろう。
これは、こころ編・悟編の内容と直接的関係に乏しい。(せいぜい犬伏の事件とセルフが間接的に関わってる程度)
あくまでこころと悟(とプレイヤー)にとっては、これらの話はあくまで巻き込まれた事件の背景であって、「遭難からの生還、殺人鬼からの逃避、転移現象の理由」という、それまでのメインの内容とは全く別の話と言って良い。
見方を変えれば、そういった背景の謎が残るだけで、こころと今の悟の物語は良い形で完結している。この後あるとすれば、元悟というプレイヤーの知らない(未だ感情移入していない)謎の人物の物語が新たに始まるだけだ。
また、この壮大な風呂敷をまとめるのに一体どれほどの文章量や考証が必要であろうかと考えると、
確かに、スケジュール的に完成が見通せないのであれば、ここで区切って出してしまうのも次善手という気がしてくる。
しかし、TIPSや年表などでなく、物語のテキストとして、登場人物の息遣いを感じながら、この話が読みたかった。
未完成でも、ある程度具体的な展開や設定は構想していたはずだ。
ゲームで出せないとしても、それは何らかの形で世に出して欲しかった。
というか未完成のまま発売するとしても、ラストの犬伏と黛の不穏な描写は要らなかっただろう。未完成なら結局考察はされるので、表面上だけでも大団円で終わらせたほうがまだ読後感は良かった。
プレイヤーが見てきたこころと悟の物語は綺麗に完結しており、それ単体は素直に楽しむことができたと言える。
しかしこの世界の核心とも言える元悟やセルフにまつわる物語は一切明かされないまま終わる。
そこを書ききればever17にも勝るとも劣らない評価を得ていただろう。
まさしく名作になりそこねた作品。
余談
どうでもいい話だが、もしこの作品が名作として完成していれば、某有名アニメ映画は存在していなかったかもしれない。
SF要素はふっ飛ばしてライト向けにしてはいるが、時間を超えた男女の入れ替わりというギミックや災害から救出するというオチなど根幹部分は明確にこれと被っている。
意図的にパクったかは定かではないが、少なくともR11がもっと世に知れ渡っていれば二番煎じという声も増えてこれほどの名声は得られなかったかもしれないし、そうなることを恐れて内容が変わり大成しなかったかもしれない。
ある意味、これを完成させられなかったから手柄を持っていかれたとも考えられる。
オリジナルはマイナーで未完成な賛否両論場末ゲー、二番煎じは超絶大ヒット歴代収入2位の国民的アニメ映画。
創作に限らずあらゆる分野で起こっていることだろうが、なんとも切ない話だ。