それなりに面白い作品。ただし粗は探せば幾らでも沸いてくる。ゲーム性のみの評論です。
シナリオ・キャラなどに関する情報は載せません。主にゲーム性、UIなどについて言及します。
辛口に書きますが基本的に高いレベルで出来ているので、重箱の隅をつついた感じになります。バージョンは1.01bです。
戦闘システム
ロックマンエグゼそのものといって差し支えない。違いは相手と自分が同じフィールドに居ないことぐらいか。MP・TP使用攻撃は範囲が様々で相手の配置に応じて使い分ける必要がある。回復・補助に関しても範囲で決まるのでよくよく考えて配置したい。ただし本家と違い特定のマスを配置不可にするアクションなどは一切無いので一旦配置構想が固まれば後は放置でもOKといった感じ。
ターゲット選択範囲の上限というものが存在していないため最後列にいるキャラが相手の最後列にいるキャラを攻撃可能ということや、攻撃範囲が一直線なスキルでも一切の制約なく好きな行を選択できるので本家と比較すると戦略性は劣る。とりわけ戦闘中にマスを移動できるが行動順が少し遅れるためそんなことをするメリットは皆無で完全に死に行動と化している。
攻撃手段について
この作品はRPGツクールよろしくTPとMPが設定されている。実際の仕様もRPGツクールと殆ど変わらないので割愛させていただく。が、このゲームは基本MPはいらない子だ。TPがあればどうにでもなるというバランスである。
まず魔法習得(MP消費スキル獲得)のためにはダンジョンの敵が確立でドロップするクリスタルが必要でその効果内容によって必要個数が違う。最少数は1個最大は25個だ。当然必要数が多いほど効果も大きいという仕様だ。
ここで問題にしたいのはその商店の場所と不親切さだ。販売している商店はダンジョン各階層中盤辺りに1箇所だけ。途中から安全地帯でも購入できるがシナリオは既に中盤である。これだけならまだ可愛いが購入する際に必要な情報があまりにも開示されていないのだ。開示されている情報は「必要個数」「数値情報なしの大まかな効果」だけだ。買ってみないと必要MPが分からず、使ってみないとその効果範囲が分からないのだ。買ってみて使用感が違えば払い戻せばいいじゃないか。と思うかもしれないが売却してクリスタルを払い戻すことは出来ないのだ。
このため誤爆が頻発しTPとアイテムでやりくりしていくようになった結果MPの使用頻度が極限まで下がることになったのだ。更に言えばTPは全員に有効なパッシブの自動回復スキルがあり、TP回復アイテムも充実しているためTPがあればどうにかなってしまうのだ。
装備系統に関して
このゲームの装備欄は基本武器・防具・装飾1・装飾2だけである。これに加えて魔法装備欄の「スロット」特定2キャラは「カード」がある。後半部分は完全に棚上げさせていただく。
このゲームの装備は某フリーローグライクゲーよろしく「根性の~」「魔防の~」といった前置詞がつくものがあり、更に無印・Nレア・Hレア・Sレア・SSレア・Uレア・Zレア・ZZレアという等級が存在する。レア度や前置詞によって効果に色々な差が生まれるため、インベントリでは同一のアイテムとして扱われることは無い。そう。インベントリが非常にごっちゃになるのだ。挙句ソート機能が無く取得順で並んでいくため非常に煩雑だ。何が、どれくらいあるのかといったことが非常に分かりにくい。整理しようとして間違って売ってしまったりすることが頻発するのだ。
アクション要素
正直何がしたいのか当初は理解できなかった。アクションゲーム風に分かれ道やリフト、一方通行の道や意味の無い段差、袋小路などが完備されているが、エンカウントは ランダムエンカウント である。更に 攻撃 のアクションコマンドが存在する。だがそれは敵に振るわれることは無く、ゲーム内で10回程度しか使わない重しを動かすときのみ使われるものだ。ペーパーマリオRPGがシステムそのままにランダムエンカになったと考えれば分かりやすい。
恐らく、ロックマンエグゼの戦闘システムに(ペーパー)マリオRPGよろしく先制攻撃などのアクション要素を付けたかったのだろうが何らかの理由で頓挫・棄却された結果であろうと推測する。実際に特殊な敵はシンボルエンカウントを採用している所から伺える。これなら初代ゼルダの伝説風にしておいたほうがよかったのではないかと疑問を呈するレベルだ。
難易度
プレイ難易度はノーマルだが非常にサクサク進む。レベリングはしっかりしたほうだがそれでもサクサク進む。通り過ぎるだけで全快できるポイントが所々(各ダンジョン3~4個)あるので戦闘→回復がやりやすい。途中からはエンカ抑制、増進する消費アイテムも破格で手に入るので問題ない。
最序盤は金策に少しだけ苦労するがそれ以降は金策にあえぐことも無い。終盤あたりでは武器防具の装備購入もしなくなるため余計に金が余る。消費アイテムの保持上限も30個となっているので基本的にあまるものだと思う。
UI
親元で同人の玉藻スタジオのころから妙に抜けている部分があるが本作も健在であった。
まずアイテム使用に関しては余計な手間が1つある。通常アイテム使用の手順としては アイテムを選択→使用アイテムを選択→対象に使用 の3ステップが殆どだ。しかし今作は アイテム選択→使用アイテムジャンルを選択→使用アイテムを選択→対象者に使用 の4ステップなのだ。取り分けよく使う消費アイテムが最初に表示されているので誤解を生じやすいのが難点。
またインベントリはページ制なので数が増えればページも増える。それを上下のボタンで移動するのだが1ページ目で上を押しても最終ページに飛ばないのだ。難癖と思うかも知れないが、装備関係の記述で察してくれた方もいるだろうがこのゲームは非常にアイテムが細分化している。「同じ装備」が殆ど無くスタックされないので少しでも整理を怠るとページ数が2桁突入もザラなのだ。そしてソートが無いため順序は取得順となる。煩雑なことこの上ないのを察していただけると有難い。
バグ
現在のバージョンで確認できているのは1つだけ。
消費アイテム使用時に、対象の消費アイテムが使い切られると自動的に下段にあるアイテムがスライドしてきて使用可能状態となる。だがその「スライドしてきたアイテム」の効果が消費しきったアイテムの効果と同じなのだ。消費アイテムは効果順に自動でソートされているため使い切ったら一度選択状態を解除しないと前のアイテムの効果で消費してしまうのだ。幸い金策が楽なので致命的とは言いがたいがストレスポイントであるのは間違いない。
総評
最初に記述したとおりゲーム自体は基本的な部分をしっかり押さえ致命的なバグもなく、軽量化もされたため普通に遊べるゲームだし、同人のノウハウを生かした親切な所も非常に多い。
ただし先述の通り粗は探せば幾らでも沸いて出る状態であり「詰めが甘い」のは否めない。
同人では見過ごされてきた点もフルプライスでは俎上に上がることもあるので、今後はどうやって粗を減らしていくかということにも注力したほうがいいと感じた。