それなりに遊べるが、不満な部分はかなり多い。シナリオの薄さを補填するはずのゲーム性がこれでは厳しく過去リリースしたゲームと比べると退化したと云わざるを得ない。
ゲーム発売当初からネガティブなコメントが充満していて、プレイ前は恐る恐るといった感じで始めたのですが、10周以上周回を重ねたわけですから少なくとも元は取ったと言えないことはありません。ただゲームをプレイしていて面白いと感じる部分があまりに少なく、プレイを作業と感じてしまうといった点でSLGとして成功しているとはとても言えない。そういった部分で評価が低迷している理由はよく分かります。
このゲームの画面を見て一番最初に浮かべた印象はというと、過去リリースされた「王賊」に似ているなというものでした。ぼく的に「王賊」はかなり良い印象を持っているゲームで、アルイエットを筆頭に魅力的なヒロインが揃っていて初回プレイはかなり楽しめました。惜しむらくは周回プレイには適していないゲームであり、また汎用戦闘マップの種類が少なく戦術ゲームとしては物足りなかったり、チートユニットが無尽蔵に雇えたりとプレイヤーが自主的に縛りをかけないと中終盤が作業プレイに陥るなどの欠点が多々ありました。
こういった欠点が今回どれくらい改善されているかがこのゲームでのぼく的な注目点だったわけですが、驚くべきことに何一つ改善されていないのですね。
何といってもこのゲーム。戦闘マップがたった一つしかないのです。その上、ユニットがマップ上をひしめいてしまうくらい狭いという悲しさ。
確かに街防衛をテーマとするゲームですから、領土を攻め取るゲームと違いマップを数多く用意できないということについては理解できます。ただそれでもマップをもう少し広く設定していれば、戦術の多様性が増えてSLGとしての深みがでたと思うのですね。例えば砦の外に伏兵を伏せておいたり、後方の輸送隊を襲ったりという積極的な防衛も出来たのです。またわざと砦の中に敵兵を引き寄せ落とし穴で殲滅といった戦法もアリだったはず。それがこのゲームではマップの狭さから行える戦術が限られてしまっているため、敵の撃退法が作業と化してしまっています。このあたりはマップの狭さが課題の一つとなっていた「王賊」から退化してしまっているといっても過言ではありません。
そしてもう一つの問題がユニットのこと。王賊でもユニットとキャラクターの関連が薄い欠点があったのですが、今回はそれよりもっと酷い。何せ当初修正ファイルが発表される前は部下であるヒロインがどのユニットを率いているか全く不明だったわけですから。
そもそもソフトハウスキャラのゲームはシナリオの内容が薄いという欠点があるわけでそれを補うのがゲームパートだったはず。SLG部分でヒロインのキャラクター性を浮かびださせることで、プレイヤーのヒロインに対する感情を呼び出すのがこうしたタイプのゲームの常道なわけですが、それがヒロインがどの部隊を率いているか分からないようではヒロインのキャラクター性が薄くなって当たり前です。さすがにそれではまずいと思ったのか、それともユーザーから苦情が入ったためか後日ヒロインがユニットを率いれるパッチが発表されたのですがそれも付け焼刃が否めない内容で、ゲームパートでヒロインが絡むイベントが発生しないようでは当然効果は薄い。しかも使用頻度が少ない(と思われる)歩兵隊に2名のヒロインが割り振られたりとその配役も疑問の残るもので、どこまでゲームパート部分を理解していたのかと思わざるを得ませんでした。
確かにこのゲームは何度も周回プレイをすることが前提となっていてプレイヤーを長時間遊ばせることが出来る作りになっています。ただ周回することに対する見返りがユニットのレベルを上げるだけというだけで余りに寂しくそれが作業感の強さとなって現れるのではないかと思うのですね。コツさえ掴めれば1周およそ2~3時間でクリアできるというのに6~7周もすればあらかたイベントが埋まってしまう。しかも肝心のゲームパートに面白みがないとなればプレイヤーの大部分が続ける気が起きなくなっても当然なのです。
(総括)
その気になればある程度の時間遊べるといった点を考えれば一応及第点に達していると言えない事はありません。ただ良いといえる部分が全く無くては辛い。このゲームの一番の問題はプレイヤーに作業ばかり強いて楽しんでもらおうという部分が欠けていることだと思います。周回を重ねたぼくでさえ不満しか浮かばないのですから、数周回で見切ったプレイヤーの評価が厳しくなっても当然といっていいでしょう。