狂気と“エロゲーの枠内でのリアリズム”にとことんこだわった革新的秀作
バグが多すぎ、主人公がプレイヤーの意に反して突然とんでもない方向へいっちゃうこと、
システムが不親切、ストーリーが分岐しすぎて時々矛盾点があるなど不満点は否めない。
が、エロゲーという低予算でここまで作りこんだ作品があったことにひたすら驚かされる。
欝な展開が嫌な人以外は、ぜひ一度は予備知識をリセットしてプレイして欲しい。
《詳細レビュー=ネタバレ注意》
バグは呆れるほど多い(発売延ばしてもいいから完全版を出すべきだった)。
フリーズ・画像の組み込みのミスから始まり、効果音の差し間違えや流しっぱなし。
時々台詞と口パクがあってないところはもったいない限り。デバックをやらずに出したとしか思えない。
ストーリーの無数の分岐は見事。
単純に選択肢の言葉だけでは好感度変化や展開を予想できず、時間切れシステムとも相まってリアリティーが快感をも呼ぶ。
アニメについては、止まってる絵が多いだけに『アニメの手法を取り入れた紙芝居エロゲー』と割り切った方が楽しめた。
でも動いてる時の質は高かったし、プレステ時代のイベントムービー的な期待感がまた虜にさせてくれた。
エッチシーンの生々しさは、息をのむ迫力。繰り返しはあれど、一つ一つの動作がとても細かい。
動画枚数、劇場版1.5~2本分は伊達じゃない。
アニメーション絵コンテは相当レベルが高いと思う。
チープな素材の使いまわしでここまで臨場感を出せたのは、カット割やカメラワークといった巧みな技の成果だと思う。
テレビアニメの方がしょぼく見えてしまうほど唸らせるシーンがいくつもあった。
30分のOVAとかできちんと予算を掛けてやってくれたらと想像すると、出来上がるクオリティーにぞっとする。
ドラマ・ゲームとしての全体像は『エロゲーの枠内でのリアリズム』に圧倒され続けた。
極端で癖のあるキャラばかりで決して現実とは相容れないドラマではあるけど、
エロゲーとして分かっていればその中でとことんリアルを追求した作品であると実感できる。
思い通りに行かない展開・人死にまであるダークな展開・人間の醜い部分をこれでもかと見せる。
アニメという手法を取り入れたことにより、キャラみんなが不思議な存在感でぐいぐい物語りに引き込ませる。
18禁だからこそ、ここまで面白く際限のない展開に持っていけた。
エロがある意義があるゲーム。エロイからこそ面白いストーリー。 必然的なエロ。
スクールデイズはその度合いがとても高く、物語に大きく影響を与えている。
キャラクターははっきり言ってあまり萌えません。
刹那は確かにドラマとして一番心地よいですが、他のキャラがどろどろ黒々過ぎて。
あまりエロゲー的キャラが好きになれない自分としては、これだけ好き勝手にキャラが動いてくれた方が好感は持てるのですが。
七海と彼氏の具体的なすったもんだをもっと友人の視点でもいいから入れれば、
きついシナリオに一時のコーヒーブレイクとなっただろうに惜しい。
主人公はだいぶ諸説があるけど、声優さんが実力のある方なのでまぁ、ギリ許容範囲です。
へたれすぎて、優柔不断で誘惑に弱すぎて、尻軽すぎて……意味不明な行動とったり。
そんな一見没個性でありながら、相当キャラ立ちしてる誠君を見事に演じきっている平井さんはすごい。
(個人的に誠役の平井さんにとことんやられました。他の女性陣など色あせるほど上手い彼に大拍手)
今後、このようなゲームが出る事は無理があるというか、なかなか出せないだろう。予算的に。
紙芝居ゲームと別世界のような圧倒的な臨場感とどきどきを味あわせてくれたスクールデイズ。
事前報道の期待を裏切るような狂気のシナリオを取り入れることによって、名作になったと思う。
今後、このゲームをきっかけに新たな流れが業界に起きる事を期待したい。