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tomosibee3104さんのキラ☆キラの長文感想

ユーザー
tomosibee3104
ゲーム
キラ☆キラ
ブランド
OVERDRIVE
得点
85
参照数
640

一言コメント

「本当にクソッタレなゲームでした。ごちそうさまです。ファック」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

中盤まではテキストギャグが面白く、バンド青春物語として楽しめた。しかし終盤の家庭板案件はイライラ要素もあり、自分の中にパンクの精神が芽吹くのを感じた。ヒロインの両親(特に父親)が碌でもない人間ばかりなのは読んでてストレスだった。

1周目、紗理奈ルート
とりあえず紗理奈の父親はクズ。自分が生きてると娘に悪影響を与えるから自殺って、両親の死は自分に責任があると子供に思わせること自体が悪影響でしかない。
「本当にクソッタレなお茶でした。ごちそうさまです。ファック」はゲーム中1番笑った。キャラと台詞のギャップ、紅茶のカップが落ちる演出、、どちらも最高。
バンド衣装Hも良かった。他ヒロインにはないシチュだし、潜在Mってのもポイント高い。
ただラストはスッキリしない。主人公の内面問題が解決してない感じだし、バンドの今後も投げっぱ。1周目で良かった。

2周目、千絵ルート
千絵は父親がクズなのは当然、母親もいまいち。どちらも子供より自分優先て感じで千絵が可哀想。
岡山ヤクザの娘翠ちゃん。主人公の好みの外見らしいが攻略できないのが残念。
翠も相当に精神ねじ曲がってるし一緒にバンドやったら仲良くなれそうだなあと思ったり。
笑顔で当たり障りないような話をしながら盛大に泥棒猫を皮肉ってくところがすごかった。
紗理奈ルートでは親友としての立ち位置もクソもなかったきらりだけど、千絵ルートではキャラをいかんなく発揮してる気がした。非ルートヒロインの活躍が求められるのも納得。
主人公と義父の和解(?)があるのも千絵ルートのいいところ。
読後感は全ルート中1番すっきり。

3周目、きらりBAD
あまりの展開に混乱しながらプレイした。事実を認めたくない主人公の気持ちに共感して、屋上の扉を開けたらバンドメンバーが待ってるんじゃないかと本気で期待したりした。きらりが主人公の家族関係を知ってることに違和感を覚えていたのにも関わらず。
千絵姉ルートで不倫おじさんは親を放棄したと考えていたのに、不倫をそれくらいの息抜きと捉えるようになってしまった鹿くんは見てて辛かった。
紗理奈が元気に生きてて良かった。

4周目、きらりTRUE?
きらりの両親がどうしようもなくてイライラ。娘を風俗で働かせることでプライドに傷はつかないのかと。きらり母も守るべきものを間違えてないか。子供たちは親が絶対の庇護者である。いっぽうきらり父は病気とは言え一応大人。自分の面倒を見るのは当然とまで言わなくとも、他に頼る相手すらいないのかと。そもそも自身のプライドのために家族に苦労を強いる夫を養い続ける意味もわからない。
主人公が親にすら頼ろうとしないことにもイライラ。直接解決できるわけでなくても、伊達に長生きしてるわけじゃないのだからその知恵を頼るべきではないか。
そしてTRUEとは思えない展開。ヒロインの信頼を裏切って、本当に幸せになれるのかと疑念を持ったまま読み進めた。そしてきらりは自分の憧れよりもやるべきことを優先しなくてはいけなくなった。
なんとも後味のよくないシナリオである。
「やっと僕は、自分の力で生きられる。」も紗理奈の父親を思い出して印象がよろしくない。とかく胸糞展開が続くTRUEはミュージシャンがパンクに目覚めるためのシナリオかと本気で考えた。

それでもテキストは読みやすく、名言も多かった。以下名言備忘録

「本当はね、全ての人間は本来何もしなくてもパンクなんだよ。
 生まれたときから、死ぬまで、誰だってパンクなんだ。
 なかなか気がつきにくいことだけど、そのことに、気がついてほしいんだ」

「みんなが毎日、こんなに平和で楽しかったら、ロックなんか世の中に必要ないんだろうね。
世界中のロックンローラーは、みんなの明るい笑い声と共に滅亡するんだ」

「ま、後悔しないようにいろいろ考えるんだな。そして悩み苦しめ。
 幸福になるための苦しみを放棄したら、人間は豚だ」

「どんなに頑張ったってものごとは変わるものだし、
 変わったら変わったで、別の楽しいこともあるよ」

「だけど、とても悲しいことだけど、他人に依存した幸せは凄く儚いものなんだ。」

「幸せはなるもんやない、感じるもんや。
 それを忘れてかたちだけ追い求めとったら、何したって何になったって、
 何を手に入れたって、一生不幸やで!」