物語としては最高レベル。ゲームとして楽しむには遊び方に工夫が必要。
名作と名高いこの作品をプレイした感想としては、笑えて泣けて熱い物語と言ったところか。2章3章の感動的な家族ドラマ。2章終わりでの敵を認識させる衝撃的なシーン。4章からの敵との対決。なにより主人公と敵役がどちらもカッコいいのがたまらない。法月のセリフはほとんど名言と言っていいし、主人公のセリフも名言が多い。ギャグのセンスは個人差があるだろうが、私は笑えたので良かったように思われる。
また、序盤からの伏線と叙述トリックもよく言われるように見事の一言。ネタバレなしで楽しめて本当によかった。あのひっくり返し方はエロゲーならではと言われるのも納得の一言。
しかし、物語としてはほぼ一本道であり、実質的に各章がヒロインの個別ルートに相当し、どのヒロインを選んでも物語としてはほとんど変わらないという点は好みが分かれそうだ。ヒロインごとの差異としては途中のエロシーンや細かい表現、そしてエピローグぐらいのものだ。1周目が終わって満足したら2周目以降はエロシーンとエピローグを回収するための作業になってしまう。
この作品を最大限楽しむならば、毎年夏に一人ずつクリアするなど、同じ文章を読むことに抵抗を感じなくするための工夫が必要だろう。こういった不自由さを許容できるかも評価に関わってくるかもしれない。
さらに1周目であっても2章から4章の各序盤はけっこう眠くなるシーンもあった。各章終盤の盛り上がりは素晴らしいが、そうでない部分が退屈に感じられたことは否定できない。
またエロシーンも少ないと言わざるをえない。さち、灯花が各2シーン。メインヒロインである夏咲と裏ヒロインとも言える璃々子が各1シーン。璃々子は一応2シーンだが実質1シーンと変わらないと言えるだろう。そしてハーレムルートはエロシーンなし。簡単に言って、この作品にエロを求めるべきではないだろう。
正直エロゲーとしてどうかと思わなくもないし、感動的なシーンも結局のところ泣けなかったわけだが、それでも物語は本当に面白かったので高得点をつけて終わりとしたい。