俺たちに翼はないこともないらしいぞ。信じてやっても俺に害はない。いや、だからですね、入ってくる系の受動的な面白さと、見出す系の能動的な面白さを兼ね備えた傑作でしてね。
150本目。アニメはリアルタイム視聴済みでプレイ。主人公に仕込まれたネタは既知でも十分以上に楽しめた。テキスト良し、キャラ良し、ギャグ良し、声良し、シナリオまあ良し。悪いところはハンコ絵とエロぐらいか。
以下ネタバレ感想
タカシ編
評判が悪くギブアップを量産するらしい1章。たしかにウジウジ主人公と他人を舐め腐ったクラスメイトに苛つくのもわからないではない。
それでも見どころがないわけでもなく、タカシくんのグレタガルド妄想はちょくちょく素に戻るし、登場人物の名前がどんどんテキトウになっていくのは普通に笑えた。オレの好きなレオ、脇汗が凄いガトー、わりと強いウーリ。果ては、あきれた勇士たち「ホーク!ホーク!サー・ホーク!」。声は真面目なのに顔は呆れてるのかと想像すると笑いを堪えられない。さらにタカシの妄想が奈落TVのヨージ最高伝説と全く同じノリなのも面白い。別の人格でも元は同じ人間なのがよくわかる。
また、タカシルートはハリューの名言が多いことも注目ポイント。
「あ?どのキャラっておまえ、こいつらみんな同じような顔じゃねえか」
SHUFFLEに対する台詞である。自虐ネタとも取れるが西又さんは怒らないのだろうか。タカシがフォローを入れはするが、萌え絵に疎くなくとも同じ顔に見えるのはどうしようもない。
「この世界につまんねえモノなんかねえよ。楽しもうと思えば道端の犬のクソだって楽しめる。
でも他にもっと笑えるもんが転がってるから、優先順位が低くなるだけの話」
至言である。
「待て、それなら、現実でも変わらないだろう。大体この世界が虚構現実じゃないと
何故言える?俺もおまえも、どこか知らない場所で作られた、理想の体でしかない可能性もあるわけだろう」
「ここがプレイヤー様の作った世界なら、何も制限なんてないはずだろう。
その違いが分からない限り、仮想世界にも興味が持てないんだがなァ」
一見ただのメタ台詞だが、作品のメッセージ性を考えれば違った捉え方もできる。つまりは仮想世界も現実も大差ないのだから、現実逃避する必要はないということである。
そしてラストはさよならグレタガルド。世界は金色につつまれているのだーED。空想に別れを告げ現実讃歌で締めるわかりやすい終わり方。作品のメッセージ性という点ではタカシ編が一番強くわかりやすい。
しかし良いところばかりでもない。主人公であるタカシが特定感情を切り落とした欠陥人間であるため感情移入がしづらい。タカシの美点は見ようによってはそのまま欠点にもなる。
どうでもいい不満として、小鳩とクリスマスデートの約束をしたまま放置という点も挙げられる。ヨウジ編で回収するとはいえ、タカシがした約束とヨウジがした約束は別物なので、正直納得しづらい。
鷲介編
傷つきたくない夕暮れの鷲の話。道化を演じて諍いを起こさぬよう立ち回る生き様は見習うべき点が多く見受けられる。特にバイトの先輩が店長を非難するシーンで、先輩の意見を否定せず、かつ店長を非難することもしない立ち回りは素直に感心した。
狩男店長の下ネタ、アレックス2との絡み、カケルの毒舌とネタが豊富で笑いどころが多いのもポイント。カケルアンチのBBSに挙げられたカケル名言集と鷲介のツッコミには爆笑した。EDテーマがどう考えてもガラスの10代なのも笑いどころか。最後まで気楽に笑ってプレイできるのがいいところ。
章タイトルの重大な伏線が何かと読み返したら、腐れヌンコというオチにはなんとも言えない気持ちになった。これも伏線と言っていいのかどうか。
不満点としては浪人もとい農民いやさ紀奈子さんの攻略ができないところ。正直たまひよよりも紀奈子さんのほうが好みなので残念な気持ちになった。この作品サブキャラが強すぎてヒロインが霞むのは、作品通しての欠点として挙げられる。それが王雀孫の王イズム?
いやあ、俺つばってほんとうにいいものですね!
隼人編
コーダインが攻略できないのは不具合。いや、タカシか鷲介でフラグを立てると鳴フラグを立てられないわけで、するとコーダインとの絡みが増えるのに攻略できないって、どう考えても不具合としか言いようがない。
そんなわけでフラグ次第で鳴が完全空気になるルート。たしかに鳴の猫私服とか好きだけど、隼人の好みに合わせて香水やネイルを変えたり、約束の1時間前から待ち続ける健気さを見せるコーダインには勝てないわけで。単純に外見の好みで言えばアリスが攻略できないのも痛いところ。
キャラの印象で言えば葉っぱキメてるチケドン、ラップ口調のLR、ウェーイ系のバーニィDと、いかにもオタクと相性悪そうなDQN勢揃いといったところだが、悪い意味でなく印象に残るキャラ達で愛着もわいてくるのがすごいところ。YFBが強すぎるのも鳴空気化の一翼を担っていると言っても過言ではない。
それでも下品な言葉で頭の悪い会話をしているのは否定できないわけで、これを笑い飛ばせずイライラする人種には向いてないルートでもある。端的に言って好みが分かれる。
で、女生徒Aって誰?プレリュード?やってねえよブッ殺すぞコノヤロウ。
ヨウジ編。
ぽんこつ妹な小鳩が可愛い。でも吉川さんのモーニングコールにオチをつけずに投げたことは許されない。
今まで交わらなかったそれぞれの人格と関わる周囲の人間がクロスオーバーする日常は楽しく、結末は儚い。正直物足りない。カルラのトラウマになっていた母からの逆レと思われるシーンは詳細がなかったし、楽しみにしていたクリスマスデートもあっさり流された。
批判の多いエロシーンというかヨウジ人格について。理由付けできるだろうかと考えると中1の小鳩と高3の鷹志という年齢差、そしてヒロインとの恋愛描写がメインの作品ではないという点から、つじつま合わせとして主人公の精神年齢を下げたという考え方もできなくもないと結論づけた。ただロリコンとしては成人男性と幼女のイチャイチャを楽しみたいのも事実なわけで、とことん客に媚びない作品と考えるしかないと無理やり納得せざるをえないのだった。
結末としては弱いのも否定しがたいが、隼人の自称イケメン発言や鷲介のフリファがネタ明かしで繋がるのには驚いた。それどころかたまひよがよっきゅんの話題を流していたことにも意味があったのかと考えると王雀孫のシナリオヤバいとしか言いようがない。普通にホソリューにしか興味ないたまひよが流してるかとミスリードしたが、フリファのファンとして女性問題を起こしたよっきゅんの話題を広げないように流していたのだと後から気付かされた。
でもやっぱり幼児退行状態のエロシーンしかないのは不満。
しかしプレイヤー=主人公=タカシ=ヨウジ(幼児)とか、皮肉が効きすぎてて面白い。主人公を自己同一視しがちなオタク向けのゲームとして、現実逃避からの更生をテーマにして、主人公を某掲示板でも有名なタカシに、読みを変えてヨウジ(幼児)とか天才的すぎて怒る気にもならない。こういう毒のあるゲームは余計なお世話でしかないんだけど、どうにも嫌いになれないどころか大好きなんだよなあ。まあ現実で更生するわけじゃないんだけれども。
現実逃避は一日一時間、おやすみなさい、またあした。