「--捨て台詞は決まったか?」
結論から言えばこの作品は面白かった。一人のヒロインをタイムトラベルを通し、別ヒロインとして愛でることのできる珍しい作品だ。作中の言葉を借りれば先天的には同一人物でも後天的には別人なのだろうが、細かいことは気にしないほうがいいだろう。2章でも博士に諭されたように、大切なのは目の前のヒロインを受け入れるかどうかだと思われる。
タイムトラベル物としての是非や、コンセプト通りの一途な恋物語なのかどうか。感想を見てると様々な意見がある。その辺り専門知識に欠ける自分には厳密な定義など知りようもないし知る気もないのだが、それでも作中の説明はわかりやすかったとは思う。1章からタイムトラベルとパラレルワールドの関連性は示唆されていたし、1章で姉さんが処女だったことと、2章で姉さんの純潔を散らしたことから、現在とタイムリープ後の過去との不連続性は十分に理解できた。タイムトラベル物としての考察は「くるくす」さんの感想、作品としての捉え方は「nezumo」さんの総評が共感しやすくしっくりきた。つまるところ、純愛になるかはプレイヤー次第なのだ。このことはゲーム内においても選択肢という形で表れている。特に1章で美々を拒むシーンは本当に辛かった。美々は主人公に好意を持っていて、かつ主人公の印象ではなく行動を見てくれる良い子である。プレイヤーの意志を試されるこの選択肢は、姉さんへの想いを貫くならば拒むしかない。シーン回収は別として。それでもエロシーンに繋がるであろう選択肢を拒むしかないという状況は、多くのプレイヤーの印象に残ったであろう。そして、そうまでして貫いた想いも報われるとは言い切れない。タイムトラベルで過去に戻った時点でそこは別世界。本当に愛した姉さんは二度と戻ってこないのだ。
しかし、そんな細かいことはどうでもよろしい。後天的には別人?一卵性双生児のようなもの?知ったことではない。ただ目の前の姉さんを愛せればそれでいいのだ。作中では北極星の変遷や夏の大三角形、織姫と彦星の話題がたびたび出てくる。特に3章では主人公が自分と北極星を同一視するような描写もあったような。これは明らかに作中人物と相関関係があると考えても問題ないだろう。現在、こぐま座ポラリスが北極星。約8000年後にはくちょう座デネブ、12000年でこと座ベガ(織姫)が北極星になる。アルタイル(彦星)とデネブとベガで夏の大三角形。つまりデネブがお兄ちゃんでベガが白雲。アルタイルが姉さんで恋の三角関係。つくもは「北極星」という枠組みを通して多次元に偏在するのだ。なかなかロマンチックな話じゃなかろうか。また、「ヌイ」さんの感想を見ると、星の等級も気になってくる。ポラリス白雲はもっとも近くで名月を照らす2等星。しかし思い出の中のデネブ(お兄ちゃん・九十九・1等星)にはかなわない。それでも、全てを乗り越えた先でベガつくもとして名月を照らす1等星になるのだ。そうして織姫と彦星は再会する。うーん大宇宙のロマン。
一方で、不満点がないわけでもない。
・1章終わった時点で現代名月に回想が2枠残っていて、全て終わったらエロシーンが増えるに違いない!という期待は裏切られたわけだが、俺だけ?
・スク水やブルマが眩しいロリ名月が実質エロ1回なのは悲しい。1996年に戻った白雲は黄色バンダナ、赤バンダナと最低2人以上いるわけだし、エピローグにつながらない世界線でロリ名月とH三昧な鬼いちゃんがいてもよくない?
・九厘と白雲の関係性が不明。個人的には九厘母説を推したい。1999年で九厘は学園5年生。中高一貫校と考えて1996年では13~14歳。母親もなくはない。2章で九厘が処女だったならば母説は否定され姉説を支持するしかなかっただろう。しかしそうではなかった。そこで気になるのが1章での美々との会話だ。息子は母に似て、娘は父に似る。このテキストが設定を元にしたものであるなら…という妄想。創作のルール、余計な登場人物を増やさないにも適合する。九厘が姉なら母は?という疑問が生まれてしまうのを回避するにも、九厘は白雲の母であり3章の人物と同一人物とするほうがわかりやすい。
・お兄ちゃんにバイクの扱い忠告されたのに沼淵兄死んだのかよ(エピローグ)
・3章読んだ限りだとエピローグ後に人海戦術チンピラに姉をさらわれボコられるはず。しかしもうデネブお兄ちゃんはいない。博士と九厘が再会した二人をそっとしておこう…と考えてたら。
まあ結論は楽しかったに集約される。不満点はあるけども。それでもロリコンの自分が現代姉に萌えられた時点でキャラゲーとしては成功だと思うし、シナリオも楽しめたので他の人にも楽しんでもらいたい。