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tomatomato-sanさんのランス10の長文感想

ユーザー
tomatomato-san
ゲーム
ランス10
ブランド
ALICESOFT
得点
80
参照数
1557

一言コメント

力作ではあるが、名作ではない

長文感想

ランスシリーズを長らく遊んできた人向けのゲームです。
一生懸命作りました感は伝わってきますし、そこは大きな評価ポイントです。
ですが、プレイヤー側の思い出補正で面白く感じさせられる部分が大きく、
冷静かつ客観的にみるならば、アリスソフトやエロゲーの終焉を印象付ける出来にすぎません。

テキストは冗長で、周回前提の作りと合いません。
シナリオは一見自由度があるようにみえますが、クリアするためには、
ほぼ決まった順番で進んでいく必要があり、実質ただの一本道です。
戦闘は魔人等が強すぎるため、こちらのとれる戦略が限られ、結果として単調になってしまいます。

難易度がもっと低ければ、シナリオや戦闘に遊びの部分ができて楽しかったと思うのですが、
非常にタイトなゲームバランスのため、プレイヤーの選択が限られてしまい、
息苦しく、つまらない出来です。
そして、冗長なテキストが、息苦しさに拍車をかけます。

このゲームでは、プレイヤーは最適解をみつけるために周回を繰り返し続けるわけですが、
これは、0から1を生み出すクリエイティブな試みではなく、
1を、2や3あるいは10へとブラッシュアップしていく作業です。

ゲームに何を求めるかは人それぞれですが、
戦国ランスなんかは創造性のある作りが受けたはずです。

対して、ブラッシュアップしていく作業を楽しみ、過去に登場したキャラクターを懐かしむという姿勢は、どこか薄っぺらく、
たとえばワンピース100巻みたいな引き延ばしと同じで、
創造性の欠如を他の何かで補う苦肉の策と映ります。

結果として、ランス10は、この国のサブカルチャーの終焉を物語る、記念碑的な作品の一つとなったと感じます。
そして、多くのプレイヤーが、ワンピース100巻と同じくランス10を高く評価している点は、
もはや皮肉であるとすら感じるわけです。

本ゲームの評価点は、作り手の一生懸命さが伝わってくる点、
それと、永遠に続くワンピースみたいなことにならずに(おそらく)完結させた点、
その2点になるかと思います。

2部の結末については、
要するに、人間として、あがきもがきしながら、前に進んでいくことの楽しさ、
それを創造神に味あわせることで、人として生きることの素晴らしさを伝えたのだと解釈しています。

これは人間にとっての普遍的なテーマであり、特に違和感は感じません。
ただ、このテーマは深く、根源的なものですので、描写するには、
今のランス像よりも、昔のランス像(戦国以前)のほうが、適しているのですよね。
今のランスは薄っぺらいので。

そのへんおそらく、作り手の中でも年齢がある程度いってる方たちは、
わかってるんだろうなと思いながらプレイしてると、面白くはあります。