感情で語るべき作品
最初に言わなければいけないこととして、前作であるサクラノ詩の方が圧倒的に面白く感じた。それでも高得点を出しているのはことあるごとに私の感情を動かし、物語にのめり込んでしまったからである。理論薄めで感情の赴くままに感想を述べていくので、高度な感想を求めている方はここでバック。あと、サクラノ詩の記憶は曖昧だから間違っていたらご指摘お願いします。
1章
静流と麗華のお話。サクラノ詩、特に真琴√の補完&静流と麗華の人となりを決定する役割をもつ。
この話は純粋に面白かったです。私は悪役にテキトウにバックボーンつけて美化するのは嫌いなんですが、この程度なら許せます。普通に正確悪いのは良き。麗華がああなってしまったのは極度の不器用さが主だと思いますが、周りが強すぎた(それが見せかけでも)のも原因かな。あと、世間にとっては贋作で間違いないが、自分にとっては本物であるという考え方は非常に分かりやすく、心にすぅと入ってきました。
ちなみに全然触れていませんが、静流さんはとってもいいキャラしています。キャラ的には一番好きかもしれん。
最後に、ここでも草薙健一郎がめちゃ強い。なんやこいつ惚れてまうやろ。
2章
日常がメインのお話。正直あんまり記憶にない。
家に藍がいるのは良いですね。サクラノ詩のあのシーンを見た後なので感慨深いです。あと、この章では直哉がやっと前を向けるようになります。(桜子に圭のことをしゃべるシーンが印象的かな)正真正銘、ここからサクラノ刻、もとい直哉の物語が再スタートします。
3章
サクラノ刻、本編スタート! 個人的に一番ゾクゾクした章。
印象的だったのは恩田放哉。放哉との対峙はBGMも相まって最高だった。わりと話が飛んでいくのでまとめることは私にはできないが、放哉の発言は納得できる部分も多く、聞いてて面白かった。また、美の呪いは物語上出てきた言葉だが、圭関連の事象を表す適格な言葉であり、事実として美に憑りつかれた圭が亡くなった。
もう一つこの章で印象的だったのは、4色型色覚。サクラノ詩では魔術的絵と流された稟の絵を理論的に評価する一つの解釈。…とこの章では思いました。別に明確な解釈はいらないかなと思っていたけど、あるならあるで楽しみにしていたので後に少しがっかり。
心鈴√
まず、脳がとけた感想から。
・寧が敵視していた心鈴に教えを請うことで心鈴すこすこ侍になっているのは面白かった。
・心鈴がばかかわいい!なんだこのデレ方は!絵に関してクソ真面目にしゃべっているときとギャップがスゴイ。cv.夏和子も相まってこっちを完全にとかしにきていました。
それではでは少しまともな感想を。この√のキーワードは刻が動きだすこと。圭が亡くなったことで刻が止まっていた心鈴と直哉。心鈴は直哉と出会うことで、直哉は心鈴と出会うことで、前に進む踏ん切りがついた。正直、この√はこれさえおさえていれば良き。これ以上でもなく、これ以下でもない。
あんまり関係ない所で印象深いのは静流さんがFIRST展の打ち上げでお酒を空けるところ。高い酒は空けるタイミングはわからないから今日みたいな日に空けようというのは、サクラノ詩でも提示された最高の瞬間はわからないに繋がっている。詩の中でも印象深いシーンだったのでおおってなった。
最後にHシーンについて。あんまり書く気がなかったが、地雷を踏んだので書く。私はふた〇りたらペニ〇ンたらがマジで嫌いなので、キツかったです。すかぢさんの性癖はやべぇと知っていたので覚悟はしていたけど、ほんとに入れてくるとは思わなんだ。
真琴√
今も昔も蚊帳の外にいる真琴のお話。テーマがとても好き。
完全に満ちる前の「幾望」である真琴と圭との別れによって輝きが少し欠けた「既望」である直哉だからこそ、惹かれ合い、その関係は美しく感じる。
サクラノ詩で描かれる直哉は間違いなくヒーローであり、人間として正常ではなかった。自分はサクラノ詩最後の選択肢でこれまでを間違いだったと認める方が健全であると思っている人なので、ヒーローからは完全に引退し、お互いが補い合うこの√は結構好きでした。(圭が亡くなった時点である程度はその方向に向かっていたけど)
サクラノ詩、刻どちらも真琴√の中心は真琴にあらずで不遇だなと思っていた時期もあったけど、「幾望」である真琴が中心ではなく、「満月」である静流さんが話の中心になることは当然で、非常にきれいな構図だと思った。
4章
圭の過去編。
サクラノ詩では概要しかなかった圭。過去編で圭という存在に膨大な情報が追加された。直哉に追いつくために過ごし、最終的には欠けてしまった直哉を引っ張り上げるために奔り続けた圭は、過程で多くのものを捨てていき、不慮の事故で幕を閉じる。それでも、彼にとってひたすらに奔り続けた人生は幸福で満たされていたことに違いはないでしょう。
正直この章は言うことない。サクラノ詩プレイした全員が待ち望んだものだったと思う。
5章
直哉が芸術ともう一度向き合うお話。
まず、即興ペイント勝負に関して。正直に言うといきなり俗な話の構成になったなと。直哉を引っ張るために劇薬が必要なことは重々承知しているが、これじゃない感がすごい。直哉にはブランクがあり、稟、里奈、心鈴に負けるのは必然であるため、奇跡が必要であったわけだが(実際は伝奇から)、うーんとならざるをえない。一応、弓張釉薬を使う予定だったとかあるけどそれも本質的には奇跡と同義なので、これは物語構成の敗北かな。全員が納得するのは難しいけど、ここまでの大作なので頑張ってほしかった。あと、前作でヒロインだった稟と里奈の勝負における扱いが結構雑でなんとも言えない感じ。里奈の方は川内野含めて色々あったから良しとして、稟は出番薄かったね。5章は完全に直哉の話だから、各々が直哉を引っ張り上げようとしていた事実だけでいいか(テキトウ)。
見どころと言えば、長山香奈になるのかな。サクラノ詩でやったことは普通にゴミで、人間として嫌いだけど、強い信念を持って突き通すことはわかりやすくかっこ良かった。
次に藍に関して。藍は主要キャラで唯一芸術に直接関わらないキャラで芸術家としてではなく、普遍的な幸福を与えてくれるキャラです。直哉の欠けてしまったものを普遍的なもので埋めてくれるため、個人的には直哉の隣にいるのは藍であるべきと考えています。しかし、付き合う云々の話とはまた違う。元々家族だったからね。ここら辺はあまりにも直哉と藍の関係が尊すぎて情事に関してあまり知りたくないからだと思います。藍にしては珍しく呪詛のようなエゴも告白していたし、くっつくのは当然と言えば、当然だけど。
最後に5章全体の感想。即興ペイント勝負前までは結構好きだったけど、それ以降は微妙。せめて普通の絵画勝負だった稟とはもうちょっとイベントが欲しかった。その場合、マジで蛇足となるから入れなかったのだろうけど、、、サクラノ詩は良い意味で直哉の物語だったが、この5章は悪い意味で直哉の物語だった気がする。
6章
エピローグ
言うことなし!草薙直哉の物語が終わったと噛みしめられる終わりでした。
最後に
感想読んでいて、一番重要な5章が微妙なのにこんなに高得点つけているのか?と。冒頭にも書きましたが、純粋に面白かったからです。後半の物語構成が微妙だし、多くの引用や難解な哲学、芸術観、それらを聞いたふりをして通ぶりたいだけかもしれない。しかし、登場人物たちの強い想い、幾度どなく繰り広げられる芸術観の殴り合いetcが私の魂を震わせてくれました。これは一種の娯楽ですので、私を楽しませてくれたのが最大の評価点です。
文体がコロコロ変わって、ただ書きなぐっているだけの感想を見てくれている方、本当にありがとうございます。もし、解釈が違うだろとかありましたら、ご連絡ください。感想をぶつけ合うことは作品を完走したものが享受できる最高の時間だと思いますので。