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tomQさんの天ツ風 ~傀儡陣風帖~の長文感想

ユーザー
tomQ
ゲーム
天ツ風 ~傀儡陣風帖~
ブランド
ninetail
得点
80
参照数
695

一言コメント

運要素が強いカードゲームがシンドイが、王道であることを前提に練りこまれたシナリオは間違いなく大作級。エロに偏りがあるのは少し残念だが・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

SLG好きな自分としては運要素に大きく左右されるカードゲームと中途半端なシステムの国政SLG部分がプレイ中しんどかったが、前者はスキップ可能だし、後者はあくまでカードゲームの育成部分の補助的な意味合いが強いので仕方がないかと。

シナリオは「故郷を滅ぼされた忍者達が危機に瀕する国主を支え、平和を掴み取る話」で私的に言わせれば「東洋的テイストを入れた初代ファイヤーエムブレム忍者風味」といったところか。うむ暴論な気もするが気にしない。

カードゲームを抜きにしてもシナリオ上でキャラクター達が画面一杯に立ち回りする様は分かりやすく、敵の背景、味方の感情の機微もきちんと描かれている上に、盛り上げ所をしっかり押さえる良質な燃えゲーシナリオとなっている。
個人的にはラスボスが下手な電波思想やシナリオ的死角を狙うだけに終始するサプライズ・ボスなどではなく、威風堂々としたザ・ラスボスなタイプだったのが良かった。

ただHシーンの多くが差分を使いまわす房中術に配分されているのが残念(およそ半分)
これだけの遊べるゲームにこれだけのHシーンを入れる力量は褒めたいが、正直もっとイベント絡みでのHシーンにして欲しかった、というのは贅沢な悩みだろうか?

システム的には煮詰め方の甘さを感じるが、エロゲでこれだけの代物を出せるのは両手で足りるくらいしかないのもまた事実。
後は周回プレイが苦にならないバランスを組み込めればこのスタッフ達は大化けするだろう。今後の動向に注目したい。

因みに後半のボス戦の音楽担当はDTMロックの先駆者・埼玉最終兵器氏。
スリリングなギターリフと疾走感あるメロディラインは流石だが、どうにも音源が古臭く感じてしまう。

以下、ヒロイン別に簡単な感想

那爪
表ヒロイン。勝気で情の深い幼馴染のくノ一。
こういう「傍らで共に戦ってくれる幼馴染」というのはかなりツボ。
『忍者』という視点でみると一番すんなりと落ち着くシナリオだが、他のヒロインの惨状でワリを食っているのが残念。
風音さんは大人しめなヒロイン(ハルカなど)よりもこういうタイプの方が映える。
流石に「S音様」の渾名は伊達ではないという所か(笑)

夕凪
序盤から中盤のNTR的展開で拒絶反応出す人が多そう。私は気にしない派だけど
包容力のあるお姉さんでありながら主人公を主と仰ぐ様に色々ヤられた。
設定では「里の上忍きっての実力者」となっているが、若手の台頭、那爪シナリオと同様のヒロインの惨状など色々と不遇な印象が強い。
特にシナリオ展開の関係上、後半のシナリオHがないというのは残念で仕方が無い。
陣馬よ、お前はもっと鬼畜になっても良いハズだ(汗)

朱火
トゥルールートの姫様と対になっているだけあって、シナリオ展開や燃え要素的にもくノ一チームで一番優遇されている。戦いを通しての人間的な成長という点で今作で一番輝いていた。着物姿が正に「馬子にも衣装」だったのがポイント。

紗代
トゥルーエンドでおそらくは「マシーナサーガ」の正史シナリオ。
ただ個人的には「忍者から国主への鞍替え」というのがしっくりこなかった、というのが本音。まあ忍者組の頭領も兼ねているのだが・・・。
まともなHシーンの殆どは陵辱という「高貴な者は簡単に手を出せない」を地で行く配分が残念。まあ芹園さんにNTRは混ぜると危険な化学反応なのでその手の展開が好きな人には堪らないかも知れないが(苦笑)

余談
いざ蓋を開けてみれば「勝気で共に戦い、支えてくれる幼馴染」と「物腰穏やかだがエロもイける優しいお姉さん」という私的ツボヒロインがシナリオ的に不遇に扱われる展開に涙目でした。
腰を据えてしっかりとした燃えゲをやりたい人には十分お勧めできる力作です。
運が悪いと、カードゲームでストレスが溜まるかも知れませんが・・・(苦笑)