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tomQさんのForestの長文感想

ユーザー
tomQ
ゲーム
Forest
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
90
参照数
731

一言コメント

児童文学という名のピース、今なお前衛的とも言える演出。こちらにペースをあわせようともしない物語。裏とか意図とかそういう勘繰りをすると途端に突き放される。易しいとはとても言えないが、読み手の中で噛み砕く事で完結するという点では正しい物語の在り方だと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

児童文学という名のピース。
セリフ一つ取っても沢山の元ネタがある。
シナリオ一つ一つが児童文学を舞台としている。
そこにBGVとしてセリフとはかけ離れた言葉が飛び交う。
そして大した説明もなしに登場人物たちは話を進めていく。
こちらはそれに追いすがるのに精一杯だ。
混沌としてる。自分の理解力のなさが不甲斐ない。
それでも物語中にヒントは隠されている。
雨森と灰流の会話。物語の創造。
どこまでが物語なのか?
彼らは戸惑う。そこで私はようやく追いついた。
聞き手と語り手。灰流が零す皮肉。
二人の少女の結末。ここが一つの境界線。
登場人物が枠から飛び出す瞬間でもある。
そうして迎えたエピローグ。
蓋を開ければそれは一人の少女の成長の物語。
閉ざし、開かれ、導かれ、振り切って、戸惑い、絶望して、救いの手をさし伸ばされ、
掴んだ先にある未来。そこにあるのは誰もが思い浮かべる日常の風景。
本当のアリスは果たして誰だったのか?

ふと私は「不思議の国のアリス」の作者ルイス・キャロルが後にアリスのモデルとなった少女アリス・リデルと数十年後に再会するエピソードを思い出した。
その時にルイスの胸に去来した感情はどのような物だったのだろうか?
きっと遠い未来、雨森と灰流が再会した時の感情に通じるに違いない。


解説とかは他の方々に譲ります。
正直偉そうに語れるほど自分は全てを理解しきれていません。
ただ一つ言いたい事は、物語とは結末が一つであるからこそ物語であり、
それを自分なりの形に出来る物が本当の物語だと思います。
そういう物語と出会えたことに乾杯。