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tomQさんのBALDR HEARTの長文感想

ユーザー
tomQ
ゲーム
BALDR HEART
ブランド
戯画
得点
80
参照数
4367

一言コメント

最終ルートはきっちり盛り上げたが、そこに至るまでの各ルートが小粒の出来。ヒロインの掘り下げもそうだが、作を重ねるごとにシナリオの黒さが薄くなっているのも残念。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

全体としては冗長になりそうな要素をカットして、如何にしてこのシリーズに求められている「最終ルートでのひっくり返しとそれ以降の盛り上がり」をきっちりやり遂げるかという部分に注力された印象。

学生が精鋭の軍事部隊と島の未来を掛けて戦う。
そうならばもっと悲壮感とかあってもいいのに、級友が死んでも章を跨げば案外ケロッとしてる部分など、どうにもおままごと臭い雰囲気が残念。
そもそも学生たちは殺人(かどうかは明確に描写されていないが)を行う事に全く葛藤がないのもどうなんだろうか?
これは学園を舞台に傭兵たる主人公を放り込むというそもそもの筋書きが原因だろう。
どうしても話の視点が主人公に寄ってしまう分、シナリオの核に組み込まないかぎり周りの葛藤なんて描いても次に繋がらない訳だし。
skyですから学園は過去、命のやり取りは大人になってからときちんと分けていたというのに。
その癖、学園行事めいたものは何もないとなればそもそも学園や学生を出す意味さえ疑問に思える。

ヒロインも過去作と比べれば幾分薄味風味。
月詠は恩義から恋愛感情に変化する描写が少ない(あるいは住み着いた時点で信頼度120%、好感度80%な状態)
茉緒は吊り橋効果なんじゃね?と思うくらいにコロッと落ちるし
ユーリは「転」担当だから仕方がない上にそもそも好感度MAX状態だが、本人の裏切りは自分で挫折してあっさり元鞘になる。
凪もヒロインっぽい部分を魅せようとしたら途端におじゃま虫で中断される上に、そもそも後半は伏線回収のお時間でイチャラブなんてあっち行けな状態。

それでも、というべきか故にと言うべきか
最終ルートはそれぞれの思惑が錯綜して盛り上がる。
フレイヤ、将軍、直翔も含め救うべき者達をそれぞれの形で救済して、最後は文句なしのハッピーエンド。
このすっきりさだけは過去最高だったと思う。

欲を言えばくっころする月詠とか、亡霊に色々される茉緒とか、捕縛時に発情モードに入って陵辱された上で最後には皆殺しして心身ぶっ壊れるユーリとか、電脳世界的触手生物にハッキング的なナニカをされる凪とかそういう黒いBADENDもあってよかったと思うが、まあ時代がねえ・・・。

個人的には30年前の戦争を舞台にして何度も絶望に叩き込んだ上で、最後は主人公補正のAI贔屓でちゃぶ台返し的にハッピーエンドの方が全体的に盛り上がったんじゃないかとは思う。


そろそろ次は有機AI世界は一旦休止して、卑影氏のシナリオでバルドル世界のシナリオが見たい。