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tomQさんのフレラバ ~Friend to Lover~の長文感想

ユーザー
tomQ
ゲーム
フレラバ ~Friend to Lover~
ブランド
SMEE
得点
75
参照数
1022

一言コメント

打ち出したコンセプトに沿った前半は消化不良であるが、カップル成立後の個別はらぶでれ、ラブラブルと遜色ないバカップルぶり

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

厳しめに集約して言えば
「企画倒れに終わったコンセプトを持ち前のバカップル描写力で補いきった作品」
全体的に満足行く出来なのに、のっけからネガティブな意見を言いたくなるくらい前半戦は微妙な出来。
会話のキャッボールで好感度(内部処理)を上げていき、一定を超えると関係進展のイベントを挿入。
知り合い、友人(気になる異性)、恋への目覚めと発展していくのだが、一部を除いて会話の反応はどの段階でも同じ。
加えて会話自体はその時点で完結してしまうので独自派生へのイベントなど攻略性皆無の作業プレイという状態。
メーカー側も「好きな会話を選んで反応を楽しんじゃえYO!アプローチさえしてれば猿でも個別にいけるZE!」というスタンスのようだが(ツィッターより)
今オレはこの娘を夢中にさせているんだ!という満足感がないので残念な出来と言うしか無い。

対して告白後の後半戦はこのブランドの持ち味である「甘々で身悶えるくらいのラブラブバカップル描写」が遺憾なく発揮される。
ヒロイン勢は例外なくデレデレ状態であり、キスをねだるのは日常茶飯事。それこそ周りを気にしないくらいのバカップルぶりを見せてくれる。
過去作をプレイした人にはいつものSMEEだ、安心して突撃しなさいと太鼓判を自信満々に押せる。

ただあえてケチを付けるとすればデレデレ後のヒロインのアプローチがちょっとテンプレになってないか?という不満もある。
その辺も踏まえて以下ヒロイン別の感想(攻略順)

陽茉莉
れぶでれーしょんの千歳に悶え、ラブラブルでは涙した祝・幼馴染再登場!なヒロイン。
とは言え従来の開幕好感度MAXな幼馴染ではなく知り合いからスタートな状態に一抹の不安があったが、
そのあたりを逆手に取ったラストの献身的な覚悟は良い意味で予想外。
物心ついた頃からの付き合い故かヒロイン勢では一番対等に、遠慮無くぶつかって来るヒロイン。
主人公のヒロイン弄りも多く一番笑いが散りばめられたルートだった。

理奈
陽茉莉が「お互い遠慮無く付き合えるヒロイン」なら理奈は「よく知っているのに気づかなかった一面にドキドキするヒロイン」
この辺りの対比は明瞭に描かれているが、反面隠し属性である愛情に飢えた甘えん坊が前面に出てくるのは悪友(友人)属性持ちとして勿体無いと思う。
実は一人暮らしなこともあり主婦系スキル完備のハイスペックな良妻予備軍。
これが他の作品なら立派なオンリー要素になるのだが、残念ながら他の二人も料理スキルは完備。恨むならお手製弁当に思い入れがあるであろうスタッフを恨め。
散髪イベントは他のゲームじゃ中々お目にかかれないレアイベントでとても新鮮だった。
もっとこの手のイベントを盛り込んで主人公を格好良く仕上げるヒロインとかだと、より明確な差別化が出来たと思う、というか見てみたかった。
そして本来なら一つの山場になるはずの、両親との確執をエピローグ中数クリックで済ますという「ネガティブイベントなんて必要ないだろう?」な姿勢はまさにバカップルゲーブランドの鑑。


前半の共通部分で一番ワリを食らっているヒロイン。
出会うタイミングがズレているのは仕方がないとしてその後のイベント数&CG数も少なめ。
キャラとしてはらぶでれの心の祭り上げられっぷりとラブラブルのさつきの小動物系不思議っ娘を併せ持つお姉さん。
どちらかというと世間知らずな不思議っ娘の成分が強く、先輩らしい雰囲気が少ないのが多少残念。
世間の視線と実生活のギャップが売りの一つだが、もう少し本人も主人公を振り回す勢いが欲しかったかな。
八百屋という気合の入る職業ながら、彼氏である主人公にやたらと腰が低い父ちゃんの登場シーンは個人的に大爆笑イベント。
こういう勢いとギャップの合わせ技で強引に笑わせてくれる芸風がこのブランドの好きな部分の一つ。

ゆずゆ
メーカーHPのキャラ紹介からヒシヒシと感じる「恋で化ける女の子」に期待して最後に回したのがいけなかったのか・・・。
ずばりゆずゆの裏コンセプト(であろう)の料理スキル抜群もこう見えて惚れたら超一途な尽くし系キャラも他のヒロインと被っているという現実。
そして個人的に残念なのは、実は弟の世話も焼く隠れお姉ちゃん属性持ちなのだが、それが発揮されるのがいちHイベントの導入部だけということ。
イチャラブゲーにおいて気になったヒロインは早めに攻略しなさいというありがたくもない教訓を改めて思い知らされた。
というかもっとキチンとデレ後のキャラ方向性を差別化してくれ!と贅沢な叫びを上げたくなる状況だった。


濃密なイチャラブ好きなユーザーからは御用達になった貫禄も見えてきたが、荒削りな部分の詰めの甘さも相変わらず。
単なる紙芝居型ADVに埋もれてなるものか!という気概は感じるが数々のエロゲーに触れてきた層を唸らせるにはまだほど遠い。
とは言え初心を忘れずに前のめりに挑戦する姿勢は天晴れであり、その初心を忘れない限り応援します。
という訳で!ぜひともヒロインのコンセプトの差別化をより明確にするために!Hシーン満載なFDをまた作ってください!