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tomQさんのウィッチズガーデンの長文感想

ユーザー
tomQ
ゲーム
ウィッチズガーデン
ブランド
ういんどみるOasis
得点
75
参照数
964

一言コメント

ビジュアル的には目新しく、キャラは魅力的、けど設定やテキスト的には無難というどみる黄金比炸裂な作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このブランドで初めてプレイした「はぴねす!」でキャラの表情がコロコロ変わるさまに「おお~」と感嘆の念が漏れたのが懐かしく思えた。会話中の微妙な機微に動きを加えることでよりキャラクターが魅力的に仕上げられている。がそのキャラに対し土台となるべきシナリオは「日常とは違う魔女と魔法のファンタジー」という題材としてはもはや鉄板かつ無難なチョイスのレベルであった点が少々惜しい。
「登場人物は根っこは良い人ばかり」などみるゲーじゃ盛り上がりに欠けるし、学園要素も冒頭とトゥルー以外は皆無。かと言ってナイトパレードに代表されるファンタジー要素も、主人公がどちらかというと部外者側に近いのでイマイチ。というか本物のバケモノが跋扈してるのにその事実を知るのが極少数って部分に色々無理がある。いやあ管理人達の手腕は凄いですねー(棒読み)
という感じでシナリオはわりと冷めた目で見ていたがキャラに関してはハズレなし。
こ~ちゃ系作品ならFDも期待できそうだしもっとイチャラブ全開な話を見たい。

以下キャラ別感想
莉々子
ちっぱいくせにしっかり者で弟大好きなお姉ちゃん、しかも口調は古風とかピンポイントで狙っているとしか思えない。
こんな3連コンボ決められたら速攻狙うしか無いと初週はこのヒロイン。
お姉ちゃん系シナリオは姉弟関係からの卒業というのがテンプレなのだがこのお姉ちゃんは格が違った。
姉として恥ずかしくない自分であり続けたい、弟を大事にしてやりたいという感情と
恋人として精一杯に愛したい、傍に居たいという気持ちが見事に両立している。この辺りは生来の器に広さと姉弟という結びつきの強さ故か。
ただこのシナリオの終着点が最強の剣士である団長の打倒である為に、訓練風景の描写に多くの尺が割かれているのが残念な所。

水澄
作中でも言われている通りのまさしく天使。ツンデレやへそ曲がりや短絡脳筋が多いエロゲ界の天使はこの人を見習うべきというくらい慈愛の結晶。
「わたしに、あなたを愛させてほしい」
愛して欲しいと求めるのでもなければ、愛してると宣言するわけでも無い。
自分の愛情を注ぎ相手を満たす事に喜びを感じる彼女らしい台詞だなと思った。
このルートはそんな溢れる愛情を受け取り続ける話でラブ感は十分なのだが、えくれあの補強に関しては全く役にたたない点が残念。
本人的には主人公を癒すことで気分転換になるとのことだが、対外的には全くの手持ち無沙汰である。

えくれあ
話の土台を水澄と共有しているので話自体に特筆することはない。
ダウナー系の暴走から恋仲へという特異に内容でその暴走の過程と気持ちの変化にニヤニヤする話。
ただオートマタという人外とすんなり恋仲へと発展した部分はあれ?と思った。
この辺りの過程はもう少しドラマチックに盛り上げれば水澄とはいい意味で差別化できたのになあ。

涼乃
どみる作品では高確率で登場する「大人しく(クールに)見えつつも愛情表現は献身的かつドストレート」なヒロイン。
個人的にどみる作品でこの枠はハズレなしなのだが今回もやはり当たりだった。
恋仲になるのは作中でも後半なのだが、それ以降はデレの嵐。
ただその後半もウィッチと風城の関係という本編の核が絡むのですこ~し物足りなかった。
もう少し日常でのデレイベントが欲しかった所。

あやり
初見で抱いた印象が「人懐っこい猫」
すぐに擦り寄ってくるのだが、抱き上げようとしたりすると嫌がる元来の気まぐれ気質も残る、そんな感じ。
他ルートで散々「家族」と言い表すように他のヒロインとは違い少ないとは言え、積み重ねた時間とその絆の大切さを描いたルートである。
流石にメインに据えることもあり、主人公の環境に対する葛藤とそれに戸惑いつつも共に歩もうとするあやりの姿がきちんと描かれている。
環境は劇的に変化するのに対し日常の延長線上に描かれる恋愛模様の対比が印象的だった。
「家族愛」と「絆」の演出としては悪くないのだが対する環境側、つまりは異世界化の描写がどこかメルヘンチックなのが残念。
というか仮にラストバトルで悠子が勝ったらどういう算段にするのかが不透明なくらいに唐突過ぎる。

このどみる作品のメルヘンな部分を「優しさ」と取るか「ヌルさ」と取るかで評価は違ってくると思う。
加えてキャラ描写は悪くないのだがト書きの面白さ、テキストのセンスはカンパネラと同様ではぴねす!よりワンランク落ちる。
ギャグに走る結果がでにけりじゃ困るけど・・・。

あらためてE-moteについて
前述のはぴねす!の演出さえまだ追いついていない作品が多い萌えゲ界でこの演出とは。
どみるのこういう一歩先を進む姿勢には驚かされる。
「0と1の間には無限の可能性がある」なんていうのは古臭い物言いだが、「普通の表情から微笑む表情からの立ち絵の変化には無限の萌え」があるなんて書いててキモいことを改めて思い知らせれた。
作業量的にもこれがスタンダードになる日なんてまだまだ先の話だろうがこ~ちゃ氏を筆頭にしたどみるの皆さんにはぜひ頑張って欲しい。
とりあえずは使い回しも出来るであろうイチャラブ(それとH)満載のFD制作から始めて見てはどうでしょうか?